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運命

桜の季節にパンチが居ない。
ふと気付けば、パンチの居ない春なんて、19年振りのことだった。

私の人生には、いつもパンチがいた。
そりゃそうだ。19年も一緒に居たんだから。
パンチとの日々は、青春そのものだ。
色々あったけど、キラキラしてたな。

パンチと出逢ったのは、多分、6月の第2土曜日。
スケジュール帳を、うっかり捨ててしまったので、正確な日付は覚えて無い。けど、曜日の並びだけは、記憶で覚えてる。

その日は、いつもの週末で、よく晴れた日だったと思う。
ダラダラ昼まで寝て、暇だなぁと思って、先輩にメールして、夕方からダーツの予定だった。

駅で待ち合わせて、ダーツの前にペットショップに行きたいと言われて、中目のコジマに行った。

当時のコジマは、入ると、右側に、子犬のショーケースがあった。

その頃、ちょうど、フレブルを知ったばかりで、いつかパイドを飼ってみたいと思っていた。会社が近くにあったので、お昼に、たまにフレブルの子犬を見たりしていた。

その流れで、子犬を見に行くと、左から1列目の上から2段目のショーケースに釘付けになった。

ショーケースの子犬は、大体寝てて、たまに潜ったりしてる子がいる程度だったと思う。その中で、ひとりだけ、真正面を向いて、ガラスに向かって、ひたすら前進してる子がいた。

ショーケースなので、鼻か顔をガラスでせき止められていたと思うけど、そんなの全く気にもせず、ひたすらパタパタと足踏みして、前進していた。

それがパンチだった。

その子はパイドでは無かった。
ショーケースには、確か、フレンチブルドッグ、♂、優良血統、タイガーブリンドル と、書いてあった。

犬を飼ったこと無かったので、私が理解できたのは、「フレンチブルドッグ」と「♂(オスだよな?)」くらい。

私の目は、ひたすらパタパタ前進し続ける子に釘付けになっていた。
でも、犬を一度も飼ったことないし、生き物は衝動買いするものじゃ無いから、「落ち着け!」「落ち着け!」っと必死だった。

パンチの斜め上(左から2列目の1番上の段)にはフレンチブルドッグのパイドの子がいた。
その子のフロントガラスには、確か「フレンチブルドッグ、♀、CH直子、パイド」と書いてあった。

「あ、パイド」と思ったけど、どう見ても、このパタパタ前進する子の方がはるかに魅力的だった。

「CH直子」は、何のことだか、さっぱり分からなかった。
次に「パイドがよかったんじゃないっけ?」と自問する。
でも、この子がどうしようもなく可愛い。まいったな。。どうしよう。。。

冷静になろうと思って、店をグルグル歩き回る。

先輩は、何かを見てそう。

うーん、どうしよう。。グルグル歩き回る。

いや、でも、これを逃したら2度と会えないぞ!
いや、いや、でも、犬飼ったことないしな。
飼えるのかな?いやいや、うーん、どうしよう。。。

何周か回って、意を決して、店員さんに声を掛ける。
「この子とこの子、見せてもらってもいいですか?」

置かれた瞬間、黒い子はピョコピョコ飛び跳ねて、ヨチヨチとたどたどしく歩いては、ピョコピョコと元気よく動き回る。

パイドの子は、置かれた後、少しモゾモゾして、止まった。
その一方で、黒い子は、ひたすら、絶え間なく、ピョコピョコして、とっても楽しそうで、はしゃいでるみたいだった。

なんて可愛いんだろう。もう、メロメロだった。
それでも、なぜか、「ちょっと考えます」と言って、一旦、閉まってもらった。

ただ、その後も、グルグル歩き回った。
頭の中では「どうしよう。。いや、ホントに、どうしよう。。。」でいっぱいだった。

今思えば、諦める理由を必死に探してたんだろうと思う。
でも、そんな理由はひとつも見当たらなかった。

どうしよう。

いや、いや、払えるの?
ご飯もあるし、世話するのにも、お金掛かるだろうし。

いやいやいや、このチャンス逃したら本気で2度と会えないぞ!
いや、いや、いや、まぁ、落ち着け。しかし、どうしよう。。。

ここで諦めたら、永久に会えないぞ!こんなに可愛いんだから!

意を決して、もう一回、店員さんに声をかける。
「この子、もう一度、出してもらっていいですか?」

今度は黒い子だけ。
相変わらず、ピョコピョコ飛び跳ねる。ヨチヨチ、ピョコピョコ、楽しそうに、ひたすら動き回ってる。

「この子、お願いします」

わ!言っちゃった!

今思えば、運命の出逢いだった。
19年続くとは、この時、私もパンチも、思いもしなかった。

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