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流星の下で、キミに恋をした      ― 星を見に行こう ―    第十八話

    第18章:再出航

    一年という時間は、残酷であると同時に、傷をかさぶたへと変えるための必要な期間でもあった。

    拓也の意識は戻った。けれど、かつてのような日常は戻らなかった。言葉はうまく紡げず、歩くことにもリハビリが必要な体になった。

    華香は拓也と何度も話し合い、互いの未来のために、二人でいた時間を静かに過去へと置いた。

    誰も悪くなかった。

    ただ、季節が巡り、二人の輪郭が変わっただけのことだった。

    海斗は、小さな制作会社で働いている。

    夢見ていた華やかな場所ではない。けれど、泥をすすってでも進むと決めた、自分が選んだ場所だ。

    春の匂いがする。

    海斗は、仙台港のフェリーターミナルに立っていた。

    懐かしい潮の香りが、記憶の引き出しをゆっくりと開いていく。

    一年前、自分はここから逃げるように船へ乗った。

    就職活動からも。

    恋人との関係からも。

    自分自身の未来からも。

    あの時の自分は、北海道へ行けば何かが変わるかもしれないと、本気で思っていた。

    けれど、本当に自分を変えたのは旅先ではなかった。

    傷ついたこと。

    立ち止まったこと。

    誰かの涙を見たこと。

    そして、自分も誰かのために泣ける人間だったと知ったこと。

    それが、今の自分をここまで連れてきた。

    自動ドアが開く。

    人波の向こうから、華香が歩いてきた。

    海斗は思わず笑った。

    華香も笑った。

    かつての危ういほどの透明感は薄れていた。けれどその代わりに、今の彼女の足取りには、地面をしっかり踏みしめる強さが宿っていた。

    華香は、カメラを提げていなかった。

    けれど海斗は、それを少しも不思議だとは思わなかった。

    写真家になることだけが、彼女のすべてではない。

    泣いて、傷ついて、それでも前を向こうとしている今の彼女こそが、海斗の知っている桜庭華香だった。

    「また、船に乗る?」

    華香が言った。

    海斗は、その言葉を聞きながら、一年前の夜を思い出していた。

    『一緒に、星見に行こ?』

    あの時は、ただ流星群を見に行くだけだと思っていた。

    まさか、その一歩が人生を変える旅の始まりになるなんて、想像もしなかった。

    けれど、あの時とは何もかも違う。

    あの頃の二人は、まだ自分の人生から逃げていた。

    今は違う。

    現実から逃げるためではなく、現実を生きるために、この船へ乗る。

    「うん」

    海斗は力強く頷いた。

    「行こう」

    二人は並んで乗船口へ向かった。

    かつては逃げるために乗った船だった。

    今は違う。

    どこへ辿り着くのかは分からな
    い。

    それでも、自分の足で選んだ未来へ向かって進んでいる。

    夜。

    甲板には春先の冷たい風が吹いていた。

    海はどこまでも黒く広がり、フェリーは静かにその上を進んでいく。

    流星群の季節ではない。

    あの日のように、夜空を埋め尽くす星もない。

    それでも海斗は不思議と満たされていた。

    隣には華香がいる。

    それだけで十分だった。

    船がゆっくりと岸壁を離れていく。

    海斗は隣に立つ華香を見た。

    ゲームコーナーの灯りの下で、退屈そうに笑っていた女の子。

    ペルセウス座流星群の夜、肩を並べて空を見上げた女の子。

    傷ついて、泣いて、それでも前を向こうとしていた女の子。

    あの初めて出会った日、

    流れる星の速さで、

    俺は君に恋に落ちたんだと思う。

    華香が何かを感じ取ったように振り返る。

    「どうしたの?」

    海斗は小さく首を振った。

    「なんでもない」

    そう言って笑う。

    華香もつられるように笑った。

    船は夜の海へ進んでいく。

    もう迷うことはない。

    その旅の始まりには、いつだって君がいた。

    (完)

    あとがき

    最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

    最終話を7月7日に設定したくて、1日に2話投稿という過密なスケジュールになってしまい、読んでいる方には、ご迷惑をおかけしたかもしれません。

    実際に船上で見た『ペルセウス座流星群』は、街の明かりがないため、満天の星空で本当に感動しました。
    約1分間に1つ2つ流れる感じですが、あなたも『流れ星を船の上で見たい』と思ってくれたらいいな

    『流星の下で、キミに恋をした』
    『ホシコイ』読んだ?と流行ればいいなww

    実際に、作者本人が経験した恋をきっかけに、完成した物語です。
    こんな奇跡的な出逢いが、読者の方にも訪れますように…星に願っています。

    最後までご愛読いただき誠にありがとうございます。
    次回の作品も、気に入っていいただければ幸いです。
    次の作品は『星月夜』ですが、創作大賞には間に合わなかったので、完成はまだ先になると思います。(テーマがちょっと重い…)

    ではまた、違う作品でお逢いしましょう。

    ◆最後に、ホシコイの元になった自分の体験を歌にした、オリジナル曲をお届けします。(自身の体験 → 歌詞 → 小説)
    『ペルセウス座流星群』 Song By PuNi

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    #創作大賞2026   #恋愛小説部門


     
     

    PuNi

     
     
    おはこんばんにちわ『PuNi』です 『なりたい自分になる』をモットーに、現場監督を兼任しながらVTuberをしています。 YouTubeでの配信や、経験した事をこれからの人に【note】で伝えていきたいなと思っています。 どうぞよろしくお願いいたします。

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