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Photo bykohlrabi_1203

古いコインランドリーで無の将棋をする

    ぷらーな

    月に5~6回ほどの頻度でコインランドリーに行きます。

    別に洗濯なら家でもできるし、実際につい数年前までは旅先でしか使ったことがなかったのですが、日常的に使ってみるとなかなか快適で、銭湯めぐりと同じく、趣味のひとつといってもいいのかな、という感じになりました。

    最近だと、店内にコワーキングスペースがあって、スマホを充電できるようになっていたり、ドリップコーヒーの自販機が設置されていて半分カフェのようになっていたり、オシャレなところもあります。

    そういうところももちろん快適で好きなのですが、より自分が惹かれるのは、昔ながらの、申しわけ程度のベンチしかない、いつの時代から営業されているのかわからないような、古いタイプのコインランドリー。

    看板は日焼けして色が薄れ、昭和時代の名残を思わせる斜体で「コインランドリー」と書かれた文字が煤けている。

    野菜ですら300円を下らないこの物価高の令和時代において、洗濯400円、乾燥100円などというバグった価格設定。

    失礼ながら、この価格設定でやっていけるのだろうか。さらに失礼ながら、もしかしてここはもう、ただ洗濯機を置いているというだけで、料金の回収などはしていないのではなかろうか。

    などというド失礼きわまりないことを考えながら服を机に拡げていると、いきなり奥のドアからおばちゃんが出てきてビビった。そして、そのおばちゃんはこう言った。

    「あっちの機械は洗濯と乾燥で400円やから、あっちのほうが安いよ」

    それだけ告げると、おばちゃんは再びドアを閉めて、中へと入っていった。

    こりゃご親切にどうも、という気持ちと裏腹に、失礼ながら、ただでさえ儲けが少なそうなのに、一見客の私に、売り上げが100円さがるようなことをわざわざアドバイスしていいの?とも思ったのですが、こういうのが下町人情というやつなのかもしれない。

    というか、昭和的な人情といえるのかもしれない。

    小学生のころ、自転車がパンクしたので、親からお金をもらって自転車修理店に行ったときのこと。

    パンクの修理費用が、親からもらってきたお金よりも高く、持ち合わせがなくて困っていたところ、修理店のお兄さんは「あー、えーよえーよ」と言って、何百円かおまけしてくれました。

    まあ、実際には人情や親切心というよりも、そのお兄さんからすると、子供を相手に数百円をせびってもしょうがないし、親が今でいうモンペみたいなやつだったらめんどくせえし、という考えで、その場はおまけしてくれたのかもしれませんが、その背中は妙にかっこよく見えたものです。

    でも、あそこが個人商店だったからできた芸当なんだろうなあ。本部に売り上げを上納しないといけないチェーン店だと、勝手におまけしたら怒られるだろうし。

    そもそも今は個人商店そのものが少ないので、古いコインランドリーには、そういうかつての時代の面影を感じるのかもしれない。

    いちおうベンチは備えつけられているものの、ほとんどの人は洗濯物を入れるとすぐにランドリーから出ていきます。

    基本的に利用客は地元の人ばかりで、みんな、いったん家に帰るのでしょう。よって、ランドリー内は誰もいない時間が長い。

    誰もいないランドリーで、洗濯機がガタガタ動く音に包まれながら、ゆるやかな時間を感じるのが実に尊い。

    それもまた、洗濯機が古いもののほうが、ガタガタ音の主張が強くてエモい。今ふうの洗濯機だと、静かすぎて物足りない。

    このゆるやかな時間を使って何をするのかというと、まあひたすらスマホを弄っているだけなのですが、目的もなくスマホを見る時間というのも、そうそう悪いものでもない。

    いや、別にゆるやかな時間でなくてもスマホは見ているし、ただ単にインターネット依存者なだけなのですが。

    ちなみに、この時間に於いては、X(Twitter)はあまり見ない。こんなにもゆるやかで落ち着いた気持ちになっているタイミングで、常に人々が足を引っ張り合い、くだらないことで争い合っている、治安の悪いイーロンストリートの空気などは吸うべきではない。

    じゃあスマホで何を見ているのかというと、アプリは入れているのに、普段は全然プレイしないので、ずっと7級から上に昇級しないことでお馴染みの、将棋ウォーズをやっていたりします。私が登録している唯一のソシャゲ。

    将棋そのものは嫌いではないので、まあまあ楽しいことは楽しいのですが、ものすごくエキサイティングするのかというと、そうでもありません。

    昼間だとプレイヤーが少ないためか、めちゃくちゃ弱いAIが対戦相手にやってきて、何も考えずにやっても勝ってしまったりする。ひたすら歩兵を1コマずつ進めていくだけの、ナメくさった戦法での勝利は、なんのカタルシスも生まない。

    だがそれがいい。こういう「無」が楽しい。

    しかし、そんなことを延々とやっていると、スマホの充電がみるみる減っていくし、そろそろ気温が30度に近い日もちらほら出はじめたので、エアコンのないこの手のランドリーに長時間いるのはしんどくなってくるだろう。

    夏が近づけば、たぶん今ふうの店舗にばかり浮気するようになって、ここにはあまり来なくなるかも。また寒い時期になったら戻ってくるので、それまではどうか閉店しないでいてほしい。

    おばちゃんのアドバイスに反して、400円の洗濯機と100円の乾燥機を回すので。100円くらいはお布施させてください。ていうかそもそもそれが定価だから、お布施でもないんだけど。

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