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ゆうこりんさんの夢

    ぷらーな

    現在の私はリアリストであり、常に現実のみを見据えて生きているのですが、高校生の時分の私は決してそんなことはありませんでした。

    夢をたくさん見ていたのです。

    フォークギターしか持っていないのに、いつかロックスターになるのだと思っていました。

    ドラえもんしか描けないのに、いつか萌え系4コマ漫画家としてブレイクすると思っていました。

    そして…………、小倉優子さんが住んでいらっしゃるという星「こりん星」の存在も信じていました。

    早い話が、小倉優子さんが好きでした。といっても、現在のリアルな女性の小倉優子さんではなく、設定上でのゆうこりん(当時の彼女の公式の愛称)さんが……。  

    現代のヤングな方々にはピンと来ないかもしれませんが、当時の小倉優子さんは、「こりん星」という星からやってきた謎の美少女、ということになっていて、イチゴの馬車に乗ってこの地球にやってきた、というファンシーな設定を貫いていました。

    そして自分は、そのただあざといだけのキャラクターがめっちゃ好きでした。かわいいだけじゃだめですか?なんて世に問わなくてもいいのです。かわいいだけでいいんですよ。かわいいだけで良かったのに……。

    2009年にこりん星は彼女ご自身の手によって破壊されましたが(この年に『こりん星は爆発した』と公言)、個人的には、どこかの相撲マニアの閣下みたいに、ずっと設定を貫いてほしかったもの……。あ、いや、すみません。閣下が10万年以上も生きている悪魔なのは、設定とかではなく事実ですね。あれが素顔だし。

    実をいうと、ゆうこりんさんの写真集『初恋物語』も持っていました。

    まだ彼女が本格的にブレイクする前の作品で、写真集としては珍しい文庫本サイズ。

    そして、どういうわけだか表紙にタイトルも名前もなく、ただ笑顔のゆうこりんさんの写真がドーンと載せられているだけ。

    どうやらこの『初恋物語』シリーズ、同じタイトルで様々なグラビアアイドルのものが出版されていたようで、若槻千夏さんのバージョンも存在するらしい。こちらも表紙にタイトルも名前もない。

    今の若槻さんなら、この本に関する裏話をしてくれそうな気もするが……。とりあえずギャラは安そう。

    でもって、写真集なのでまあ、ゆうこりんさんの浴衣姿とかスクール水着姿とかがふんだんに収録されているのですが、どのページにも必ず謎のポエムが添えられているのが印象的。

    謎のポエムとは、文字どおりに謎のポエムであり、表紙に作者名が記されていなかったので、ガチで誰のポエムなのかわからない。

    もしかしたら、ゆうこりんさんご自身によるものだったのかもしれないけど、昔話をよくしてくれる若槻さんと違って、「りんこだプー」などと言っていた半世紀前のことなど全人類の記憶から抹消させたいであろう、もうとっくにゆうこりんではなくなった現在の小倉優子さんにそれを質問しても、絶対に答えてくれなさそうだ……。

    調べてみたところ、どうやら早川杏子さんという方の文らしい。ところでカメラマンさんは著名な方のご子息ですが、Wikipediaにろくなことが書かれていなかったので、あまり掘り下げるのはやめておきます。

    その写真集を毎晩のようにそっと見ては閉じ、なぜ謎のポエムに寝転んでいるゆうこりんさんの写真が添えられているのかよくわからないまま、ドキドキしながら眠りに就いた夜の数々……。

    あ、私は断じてロリコンではないです。

    加護ちゃんや辻ちゃん(年下なので)を好きならロリコンと呼ばれても文句は言えないが、ゆうこりんさんはお姉さんだし、そもそも、こりん星に年齢の概念とかたぶん無いし……。

    ちなみに、ゴマキさんは当時の時点で未成年とは思えない貫禄があったし、実年齢でも同い年だったので、完全にセーフ。

    同じ理由でミキティさんもセーフ(それにミキティさんは1学年上だし)。誰に何を言われるのを恐れて、こんなに必死になっとるんだ俺は……。

    ところで、私はモーニング娘。、および、ハロプロことハロー!プロジェクトには、そこまでハマりませんでした。

    中学生の頃にモー娘。の『LOVEマシーン』が大ヒット、高校生の頃に松浦亜弥さんが登場して、世代的にはドンピシャなのですが、その頃は既にもう、ブック○フで黒夢のCDを買い揃えることに余念がなかったので、アイドルの歌う楽曲には、とんと興味を示さなかったのです。 

    むしろ、歌って動くアイドルの姿よりも、静止画の美少女の姿に惹かれた。このあたりが陽キャと陰キャの境目なのでしょう。

    当時のモーオタは(今もそうなのかもしれませんが)とてつもない金額をモー娘。に捧げていたといいますが、私はせいぜい、ゆうこりんさんが表紙の時の週刊少年マガジンを買うくらいの財力しかありませんでした。いや、むしろ所詮はその程度の熱量しかなかったということでしょう。

    そして、やがてゆうこりんさんへの興味は薄れていき、もともと原作が好きだったアニメ『スクールランブル』のエンディング曲をゆうこりんさんが歌っているのを視ても、どこか空々しく感じてしまいました。数年前にゆうこりんさん目当てで買ったマガジンの新連載が『スクールランブル』だったのに……。

    さらにその数年後のこと。詳細はもう忘れてしまいましたが、ゆうこりんさんが焼肉屋チェーンを経営されることになり、関西にもいくつか出店されていました。

    店名は「焼肉 小倉優子」。ただただ本名を店名に冠したのみ。自分が最初に就職した会社を辞めてしばらく経った頃に、同じ会社の先輩に誘われて、京都の木屋町にあった店舗に行きました。ちなみに、この先輩もその少し前に会社を辞めています。

    単純に根性がなくて辞めた自分とは違い、この先輩はめっちゃシゴデキで、将来の幹部候補とまで言われており、社長からも一目置かれていたくらいですが、異常な拘束時間の長さのせいでまともに家に帰れなくなり、家庭が崩壊しかけたことが離職の理由なのだそう。

    ゆうこりんさんが焼肉屋を経営していて、その焼肉屋で一緒に焼肉を食べているのが、会社の元同僚と先輩、しかも先輩と自分は既に会社を辞めていて、辞めた会社の愚痴を言い合っているという現実。

    『初恋物語』をベッドの横に置いていた高校生の頃には、全く予期していなかった現実。しょっぱい。焼肉がしょっぱかったかどうかはもう完全に忘れましたが、その日の空気は確実に少ししょっぱかった。

    もうちょっと、夢を見ていたかったよ。

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