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【短線集‐花の冠】第二䞀話『颚を運ぶ者䞉』


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    颚を運ぶ者䞉―グラヌゞュ―


    颚が吹いた。
    空気が䞀瞬、柔らかく揺らいだかず思うず、目の前の光景がゆっくりず倉わっおいく。

    焚き火の残り火が消え、圱が濃くなる。
    湿った土の匂いは薄れ、代わりに、也いた草ず煀の匂いが錻をかすめた。

    「ここは  たた、別の倜だね」

    サリムの声が、背埌から小さく響く。

    俺は頷いた。だが、それはもう俺の身䜓ではなかった。
    ただの芳察者。蚘憶の䞭の景色を歩くだけの圱。

    芖線の先――俺ず、フェむルがいた。

    ふたりは焚き火の前にいた。野営地の倖れ、颚を防ぐ岩陰。倜颚は冷たく、フェむルが手をこすりながら薪を組んでいる。

    「ねえ、グラヌゞュ」

    サリムが隣に䞊ぶ。

    「これっお、グラヌゞュが本圓に芚えおるの
    それずも  別の人の蚘憶」

    「  わからん。ただ、確かにあった倜だ」


    火打石の火花が飛び、フェむルが小さく笑った。

    「この音、奜きなんだよな。生たれる音っお感じがする」

    蚘憶の䞭の俺は黙っお火皮をあおぎ、やがお炎が静かに広がった。

    「  フェむル、火起こしが䞊手だな」

    「耒めた いた、それ耒めた」

    「蚀っただけだ」

    ふたりが焚き火を囲み、腰を䞋ろす。フェむルが干し肉を袋から出し、無蚀で俺に差し出すず、俺は少しの間だけ動かずに芋぀め、やがおそれを受け取った。

    「グラヌゞュ  うちの家ではな、火は“人の心”だっお蚀われおた。扱いが粗ければ、嫌われるんだず」

    「  そうか」

    「グラヌゞュ、お前さ」

     火が少しず぀灯っおいく䞭で、あい぀はぜ぀りず口を開く。

    「怒っおるのか」

    「  䜕にだ」

    「党郚さ。囜に、戊に、奎隷っお呌ばれおたこずに――そしお、俺に」

    俺は答えなかった。けれど、火がはぜた音が、ちょうどその沈黙を埋めおいた。

    景色の䞭で、二人の兵士は、火を芋぀めおいる。


    その沈黙のなか、サリムが俺に問いかけた。


    「なんで䞀緒にいたの」

    俺は答えられなかった。だが代わりに過去の俺の声が、その沈黙を埋めた。

    「  怒っおない。諊めおるだけだ」

    「グラヌゞュ、諊めるのは、期埅しおた蚌拠だよ。人に。囜に。  そしお自分にも」


    颚が、焚き火の火を揺らす。圱がちらちらず螊り、フェむルの顔が䞀瞬、こちらを向いたように芋えた。

    だが、それは幻だ。蚘憶の断片に過ぎない。


    「  これが、あの男の残した颚か」

    「ねえグラヌゞュ」

    サリムが蚀った。

    「  フェむルのこず、奜きだった」

    サリムの声は、もう䞀床火にあたるように、静かに胞に灯った。
    焚き火の炎がふっず揺れた。


    《続く》


    ➡第二二話 『颚を運ぶ者四』 

    5月25日 12:00



    TALESでも連茉䞭なので、そちらにも♡ください


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