AACE:2025年版 脂質異常症の成人に対する薬物療法に関する臨床診療ガイドライン

2025 Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Management of Adults with Dyslipidemia
Patel, Shailendra B., Kathleen L. Wyne, Samina Afreen, L. Maria Belalcazar, Melanie D. Bird, Sarah Coles, Joel C. Marrs, ほか. 「American Association of Clinical Endocrinology Clinical Practice Guideline on Pharmacologic Management of Adults With Dyslipidemia」. Endocrine Practice 31, no. 2 (2025年2月1日): 236–62. https://doi.org/10.1016/j.eprac.2024.09.016.
このガイドラインの更新には、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスク低減という患者にとって重要なアウトカムに焦点を当てた、脂質異常症の成人に対する薬物療法に関する13のエビデンスに基づいた推奨が含まれている。
タスクフォースは、脂質異常症の成人におけるASCVDイベントのリスク評価が一次予防において重要であるとのグッドプラクティス声明を発表した。
また、ASCVDを有する、またはASCVDのリスクが高い成人に対して、標準治療に加え、アリロクマブ(alirocumab)、エボロクマブ(evolocumab)、ベンペド酸(bempedoic acid)の使用を推奨した。
一方で、ASCVDを有しない成人に対するこれらの薬剤の使用は推奨しないとした。
インクリシラン(inclisiran)の追加に関しては、推奨の是非を判断するのに十分なエビデンスがないとされた。
また、高中性脂肪血症を有し、ASCVDを有する、またはASCVDのリスクが高い成人に対しては、エイコサペンタエン酸(EPA)の使用を推奨し、EPAとドコサヘキサエン酸(DHA)の併用は推奨しないとした。
さらに、ナイアシン(niacin)の使用は強く推奨しないとした。
重度高中性脂肪血症(≥500 mg/dL) の成人に対する薬物療法については、明確な推奨を行うのに十分なエビデンスがないとされた。
タスクフォースは、脂質異常症を有し、ASCVDを有する、またはASCVDのリスクが高い成人に対して、LDLコレステロール(LDL-C)を70 mg/dL未満にすることを治療目標として推奨した。
成人脂質異常症の薬物療法において、推奨される一次予防戦略は何ですか?
成人における脂質異常症の薬物療法に関する一次予防戦略についてのご質問ですね。利用可能な情報源から、関連する推奨事項と考慮事項を詳しく見ていきましょう。
American Association of Clinical Endocrinology (AACE)のガイドラインでは、一次予防におけるASCVD(アテローム性動脈硬化性心血管疾患)リスク評価(https://tools.acc.org/ascvd-risk-estimator-plus/#!/calculate/estimate/)が重要視されています1。具体的には、以下の点が推奨されています。
1.ASCVDリスク評価:脂質異常症を持つ成人に対して、将来のASCVDイベントのリスクを予測するために、検証されたツールまたは計算機を使用することが推奨されています1。これは、治療に関する意思決定を共有する上での重要な要素となります1...。ただし、冠動脈カルシウム(CAC)スコア、アポリポタンパク質B(ApoB)、リポタンパク質a(Lp(a))の測定を追加することの有用性は限られているとされています2。
2.追加検査の考慮:中間リスクの個人に対しては、追加検査の潜在的なコストを理解し、CACスコア、ApoB、Lp(a)を使用してリスク情報を得ることに価値を見出す場合に、追加検査が考慮されることがあります2。しかし、これらのマーカーがルーチン評価を支持するエビデンスは不足しています3。
3.リスク計算ツール:リスク予測モデルを改善するために、ApoB、Lp(a)、CACなどの非伝統的なリスク因子を含めるオプションが多くのガイドラインで提供されています4。ただし、これらのリスク因子が改善をもたらすものの、その変化の大きさは非常に小さいとされています3。
4.臨床的考慮事項:
◦利益と害:タスクフォースは、患者と臨床医が適切な治療オプションなしに検査結果を持つことの潜在的な有害な影響、過剰治療と副作用の可能性、不適切な治療の可能性、患者と臨床医の不安の増加、外来受診とフォローアップの増加を認識しました5。主な利点は、意思決定の共有を促進するためのより多くの情報と、家族における心臓病の早期発見の可能性です5。
◦実現可能性:タスクフォースは、地方や資源の乏しいコミュニティでは、これらの追加リスクエンハンサーのための画像施設や機器、または社内検査サービスがないため、実現可能性は異なると判断しました6。
◦健康エクイティへの影響:タスクフォースは、これらのリスク因子が追加された場合に、医療へのアクセス、人種、民族、社会経済的地位における潜在的な不平等について議論しました7。
5.将来の研究:脂質管理の開始が65歳以上の患者に与える影響や、Lp(a)を標的とすることがASCVDイベントを低下させる効果的な戦略となるかどうかなど、今後の研究で解明されるべき重要な点がいくつかあります8...。
このガイドラインは、最新のエビデンスに基づいて、脂質異常症の管理における臨床的判断と患者の価値観を重視しています10。特に、個々の患者に合わせた治療目標を設定し、共有意思決定を通じて最適な治療法を選択することが重要です11。
主要なポイント
本ガイドラインは、無作為化対照試験やコホート研究の系統的レビューに基づき、データベースの創設から2024年5月31日までの文献検索を実施した上で、多分野の専門家とガイドライン策定の専門家からなるタスクフォースによって作成された。脂質異常症の成人における薬物療法に関する13のエビデンスに基づいた推奨を含み、特に患者にとって重要なアウトカムである動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクの低減に焦点を当てている。主なポイントは以下の通り。
ASCVD患者またはASCVDリスクの高い成人に対し、標準治療に加えてアリロクマブ(alirocumab)、エボロクマブ(evolocumab)、またはベンペド酸(bempedoic acid)の使用を推奨。
ASCVDを有さない成人に対しては、これらの薬剤の使用を推奨しない。
インクリシラン(inclisiran)の追加に関しては、推奨の可否を判断するのに十分なエビデンスがない。
高トリグリセリド血症を伴うASCVD患者、またはASCVDリスクの高い成人に対して、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid, EPA)の使用を推奨するが、EPA+ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid, DHA)の併用は推奨しない。
ナイアシン(niacin)の使用は強く推奨されない。
重度高トリグリセリド血症(≥500 mg/dL)の成人における薬物療法に関しては、推奨の可否を判断するのに十分なエビデンスがない。
脂質異常症を有するASCVD患者またはASCVDリスクの高い成人に対し、LDLコレステロールの治療目標を70 mg/dL未満とすることを推奨。
フィブラートに対して、評価が厳しいようだが・・・
deep researchにてまとめて貰った
脂質異常症に対するフィブラート系薬剤と心血管イベントへの影響:ペマフィブラートに焦点を当てた総合的レビュー
序論
脂質異常症は血中脂質レベルの異常を特徴とし、心血管疾患(CVD)の主要なリスク因子である。スタチンが脂質異常症管理の中心的な治療薬である一方で、フィブラート系薬剤は、特に高トリグリセリド血症や低HDLコレステロール(HDL-C)血症の患者に対して、代替または補助療法として使用される。本レビューでは、フィブラート系薬剤による心血管イベントへの影響に関するエビデンスを検討し、特に新規選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)モジュレーターであるペマフィブラートに焦点を当てる。
脂質異常症に対するフィブラート系薬剤の臨床試験データとメタアナリシス
フィブラートは脂質修飾作用を持つ薬剤群であり、主にトリグリセリドを低下させ、HDL-Cを増加させる。脂質異常症の治療では、低LDLコレステロール(LDL-C)目標を達成するため(スタチン+レジンまたはエゼチミブ)や、複合型脂質異常症におけるLDL、トリグリセリド、およびHDLの管理のため(スタチン+フィブラートまたはナイアシン)に併用療法がしばしば行われる¹。
初期の臨床試験では、フィブラートが心血管イベントを減少させる効果があることが示された。例えば、**ヘルシンキ心臓研究(Helsinki Heart Study)**では、ジェムフィブロジルが冠動脈性心疾患(CHD)および脳卒中イベントを有意に減少させることが示された²。また、**退役軍人高HDLコレステロール介入試験(VA-HIT)**では、ジェムフィブロジルが心血管イベント全体の有意な減少に寄与した²。さらに、血管造影試験の結果から、フィブラートは冠動脈硬化の進行を抑制し、冠動脈イベントの発生を減少させることが明らかとなった³。
メタアナリシスも、フィブラートの心血管保護作用を支持している。12件の試験(53,000人以上の患者を対象)を対象としたメタアナリシスでは、フィブラート療法が心血管死亡、急性心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術を含む主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連していることが示された⁴。このMACEリスクの低下は、トリグリセリドの低下ではなく、LDL-Cの低下に起因すると考えられる⁴。また、45,000人以上を対象とした別のメタアナリシスでは、フィブラート療法による主要心血管イベントのリスクが10%減少し、冠動脈イベントのリスクが13%減少したと報告されている⁵。
しかし、一部の試験では結果が一貫していない。WHOクロフィブラート試験では、心筋梗塞の発生率は低下したものの、全死亡率の増加が観察された³。ベザフィブラート心筋梗塞予防(BIP)試験では、ベザフィブラートによる冠動脈イベントの有意な低下は認められなかった⁵。**フェノフィブラート介入試験(FIELD試験)**では、フェノフィブラートの有効性に関して賛否両論の結果が示された⁵。
FDAの安全性勧告とACCORD Lipid試験
2010年、FDAはトリリピックス(フェノフィブラート酸)に関する安全性情報を公表した。これは、ACCORD Lipid試験のデータに基づくものである⁶。この試験では、フェノフィブラート+シンバスタチン併用療法とシンバスタチン単独療法の有効性と安全性が評価されたが、主要心血管イベントのリスクには有意な差が認められなかった。特に、女性患者において併用療法がMACEリスクを増加させる可能性が示唆された。この結果を受け、FDAはトリリピックスの添付文書および患者向け医薬品ガイドに警告を追加し、特に2型糖尿病女性への処方時にはリスクと利益を慎重に評価するよう推奨した⁶。
ペマフィブラートの臨床試験データ
ペマフィブラートは、新規選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)であり、従来のフィブラートよりもトリグリセリド低下効果が高く、安全性にも優れることが示されている⁷。日本の第3相試験では、2型糖尿病と高トリグリセリド血症の患者を対象に、ペマフィブラートがトリグリセリドを有意に低下させ、他の脂質パラメータも改善させることが示された⁸。この試験では、24週間の治療で、ペマフィブラート群はトリグリセリドを約45%低下させた(P < 0.001)⁹。
さらに、7件のRCTを対象としたメタアナリシスでは、ペマフィブラートが**脂質異常症および脂肪肝疾患(MASLDおよびMASH)**患者においてLDL-Cを低下させ、HDL-Cを増加させ、肝酵素値を低下させることが示された¹¹。
ペマフィブラートの作用機序
ペマフィブラートはPPARαを選択的に活性化し、脂肪酸のβ酸化を促進することでトリグリセリドを低下させる¹⁵。また、HDL-Cの産生を増加させ、脂質プロファイル全体を改善する。従来のフィブラートに比べてPPARαに対する選択性が高いため、安全性が向上していると考えられている¹⁵。
結論
フィブラート系薬剤は、高トリグリセリド血症や低HDL-C血症の管理において重要な治療選択肢である。ペマフィブラートは、PPARαに対する選択性が高く、安全性の面でも優れた新規フィブラートとして注目されている。しかし、PROMINENT試験では、2型糖尿病患者においてスタチンと併用した際に心血管イベントを減少させる効果は認められなかった¹⁶。今後の研究では、ペマフィブラートの適切な使用法や費用対効果の評価が求められる。
引用文献
1. Treating Atherogenic Dyslipidemia in Patients with Type 2 Diabetes—The Case for Using Fenofibrate - US Cardiology Review (USC), 2月 14, 2025にアクセス、 https://www.uscjournal.com/articles/treating-atherogenic-dyslipidemia-patients-type-2-diabetes-case-using-fenofibrate
2. Fibrates in Combination With Statins in the Management of Dyslipidemia - PMC, 2月 14, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8112375/
3. Mechanism of Action of Fibrates on Lipid and Lipoprotein Metabolism - AHA Journals, 2月 14, 2025にアクセス、 https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/01.CIR.98.19.2088
4. The effect of fibrates on lowering low-density lipoprotein cholesterol and cardiovascular risk reduction: a systemic review and meta-analysis - PubMed, 2月 14, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37855457/
5. Effects of fibrates on cardiovascular outcomes: a systematic review and meta-analysis, 2月 14, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20462635/
6. FDA Drug Safety Communication: Review update of Trilipix (fenofibric acid) and the ACCORD Lipid trial, 2月 14, 2025にアクセス、 https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-drug-safety-communication-review-update-trilipix-fenofibric-acid-and-accord-lipid-trial
7. Pemafibrate - Alzheimer's Drug Discovery Foundation, 2月 14, 2025にアクセス、 https://www.alzdiscovery.org/uploads/cognitive_vitality_media/Pemafibrate_UPDATE_%28drug%29.pdf
8. Efficacy and Safety of Pemafibrate, a Novel Selective Peroxisome Proliferator-Activated Receptor α Modulator (SPPARMα): Pooled Analysis of Phase 2 and 3 Studies in Dyslipidemic Patients with or without Statin Combination - PMC, 2月 14, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6888510/
9. Effects of Pemafibrate, a Novel Selective PPARα Modulator, on Lipid and Glucose Metabolism in Patients With Type 2 Diabetes and Hypertriglyceridemia: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Phase 3 Trial, 2月 14, 2025にアクセス、 https://diabetesjournals.org/care/article/41/3/538/36634/Effects-of-Pemafibrate-a-Novel-Selective-PPAR
10. Efficacy and Safety of Low-Dose Pemafibrate Therapy for Hypertriglyceridemia in Patients with Type 2 Diabetes | JMA Journal, 2月 14, 2025にアクセス、 https://www.jmaj.jp/detail.php?id=10.31662%2Fjmaj.2020-0104
11. Effect of Pemafibrate on the Lipid Profile, Liver Function, and Liver Fibrosis Among Patients With Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease - Gastroenterology Research, 2月 14, 2025にアクセス、 https://www.gastrores.org/index.php/Gastrores/article/view/1750/1730
12. (PDF) Efficacy and Safety of Pemafibrate Versus Bezafibrate to Treat Patients with Hypertriglyceridemia: A Randomized Crossover Study - ResearchGate, 2月 14, 2025にアクセス、 https://www.researchgate.net/publication/361584966_Efficacy_and_Safety_of_Pemafibrate_Versus_Bezafibrate_to_Treat_Patients_with_Hypertriglyceridemia_A_Randomized_Crossover_Study
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14. Fibrates and the risk of cardiovascular outcomes in chronic kidney disease patients, 2月 14, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38012115/
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