3人のレンガ職人の話を自分の仕事に置き換えてみたら|管工事施工管理の場合
私は管工事の施工管理をやっている。
もともと自動車工場で10年近く働いていたが、未経験からこの業界に飛び込んで、現場で図面を読み、職人と共にダクトや配管と向き合う日々を送っている。
私は自分でレンガを積むのではなく、レンガを積む職人たちを指揮し、現場全体を回す立場。
だから、これから話す「3人のレンガ職人」は少し違う意味を持つが大枠としては同じだと思ってもらって良い。
「3人のレンガ職人」という有名な話

ある建築現場で、旅人が3人の職人に「何をしているのか」と尋ねた。
同じレンガ積みをしているのに、3人の答えはまるで違った。
1人目
「見ればわかるだろう、レンガを積んでるんだよ」。不機嫌そうにそう答えた。
2人目
「壁を作ってるんだ。この仕事で家族を養ってる」。
3人目
誇らしげに「歴史に残る大聖堂を造ってるんだ。ここで多くの人が祈り、心の安らぎを得るんだ」。
同じ作業でも見ている先が違う。いわゆる視座ってやつだ。
視座の高さによって今やってる仕事の意味が大きく変わる。
この話は現職の店舗設備工事にそっくりそのまま当てはまるな、と思った。
3人の設備屋の話

あなたは何の工事をしてるんですか?設備工事をする職人に尋ねてみた。
1人目の設備屋
「見てわかんねぇのか、ダクト繋いでんだよ」
うん、間違ってはいない。目の前で手を動かして繋いでるのは、まさにダクト配管だ。
でも、見ているのはそこまで。
自分が触っている”モノ”の話で止まってしまっている。
2人目の設備屋
「お店を作ってるんだよ」
担当しているのはダクトの配管だけかもしれない。それでも「自分はお店という完成物の一部を作っている」とわかっている。視座が一段、上がっている。
3人目の設備屋
「働く人が快適に過ごせて、お客さんが美味しい料理を笑顔で食べる。そんな素敵な空間を作ってるんだ」
ここまで来ると、見ているのはもう設備じゃない。設備の先にいる”人”を見ている。
しかも、設備屋の場合、その”人”は2種類いる。
ひとつは、そのお店で働く人。
排気がしっかりされるか、エアコンはちゃんと効くかなど、働く人の環境を直接つくっているのが設備屋の仕事だ。
もうひとつは、料理を食べに来るお客さん。
快適な空調、ちゃんと配置の考えられた換気。
気持ちのいい空間があってこそ、料理は美味しく感じられ、そこで過ごす時間は最高の物になる。
業種問わず3段階で変換するだけ
ここまで読んで、「いや、自分は設備屋ってやつじゃないし」と思った人もいるだろう。
でも、この変換は誰の仕事でもできる。
やっていることは単純で、視点・視座を3段階上げていくだけだ。
1段階目は、目の前のモノ。
レンガであり、ダクトであり、あなたが今まさに手を動かしている対象だ。
2段階目は、それが組み上がってできる完成物。壁であり、お店であり、あなたの作業が一部を担う「最終的に納まるもの」だ。
3段階目は、その完成物が出来上がったあとまでを考えること。
祈る人であり、料理を食べる客であり、そこで働く人だ。
誰かの何かが、あなたの仕事の先で良くなっている。
その「誰か」と「何が良くなるか」まで見えたとき、あなたはきっと3人目になれる。
レンガ→壁→祈る人。
ダクト→お店→食べる人と働く人。
どちらも同じ構造だ。
あなたの仕事の1段階目は何だろう。
それは何に組み上がって、最後に誰の何を良くしているだろうか。
3段階目まで上がった瞬間に、仕事の見え方が少し変わるはずだ。
施工管理は、職人に「見ている先」を渡せる
3人の職人の話は、よく「あなたはどの職人になりたいか」という自己啓発の文脈で語られる。
でも、建設現場を指揮する立場から見ると、話はそこで終わらない。
職人さんがどの景色を見るかは、本人の心がけだけで決まるわけじゃない。
指揮する我々側が、何を伝えるかで変わる。
「ここのダクト繋いどいてください」とだけ言えば、言われた職人は1人目になる。繋ぐことだけが仕事になってしまう。
でも、「このダクト系統は厨房排気の要で、ここの取り方が悪いと想定風量が出なくて煙がモクモクになっちゃいます。快適な店になるかどうか重要なダクトです。」と伝えたらどうだろう。
同じダクトを繋ぐ仕事が、まるで違う仕事になるはずだ。
施工管理の仕事は、工程を組んで、品質と原価を守りつつ、安全を守ることだ。
それは間違いない。
でも、それと同じくらい職人に”見ている先”を渡すことも、自分の仕事だと思っている。
現場全体がどんな空間を誰のために作っているのか。それを俯瞰で見られる立場にいるのが施工管理だ。
3人目のダクト職人を増やせるかどうかは、指揮する我々側にかかっている。
さて、あなたの目の前のレンガは何だろうか。
それは何に組み上がって、最後に誰を笑顔にしているだろうか。
せっかくなので、自分の仕事に置き換えてみてコメントでアウトプットして欲しい。
