銀座17年、消えない女─ヘルプとして、主役にならなかった理由
この世界に入るということ
ホステスを始めるときは、覚悟を決めた方がいい
銀座の高級クラブで、私は17年を過ごした。
ヘルプとして。
No.1には一度もなれなかった。
売上を競うこともなかった。
消えていく側と、残る側
同年代の女たちは、次々に消えた。
ママになった者。
小さな店を持った者。
雇われの身で細々と続ける者。
折半でしか出られない者たち。
私の歳で、高級クラブのヘルプを
年齢を偽らず続けているのは、珍しいのだろう。
それでも私は、残った。
主役にならず、脇に立って。
そこに、生き残る知恵があった。
銀座という場所のルール
銀座の人間関係は、ある意味で簡単だ。
席で酒を飲む。
報連相を忘れない。
他人の客と秘密を作らない。
スタッフに挨拶し、会計のおばちゃんにも丁寧に。
新人にも同じように。
客を呼ぶ。
見えない力関係
派閥はあって当然。
お気に入りが席を回すのだから。
それを、自然なこととして受け止める。
客という存在を受け入れる
チェンジされても気にしない。
ババアと言われても気にしない。
客は座るだけで5万の場所に来ている。
その額を払うなら、
わがままも当然だと飲み込む。
体を壊さないための準備
ヘパリーゼを常備し、チェイサーを頼む。
自分が倒れない準備を、常に。
一瞬を逃さない
少しの興味を見逃さない。
目が合った。
名前を呼んでくれた。
また来ると言った。
その芽を、席が終われば即座に掴む。
記憶に残るということ
アフターは断らない。
少しだけでも、必ず行く。
顔を見せ、話を聞き、笑顔で帰る。
それで、記憶に残る。
無駄な争いをしない
ホステスの悪口は言わない。
黒服は口が軽い。
困ったことは店長に相談する。
客の嫌な言葉も、
「この給料なら」と割り切れる額で入店する。
無理をしないという判断
二日酔いで体が重ければ、
「風邪です」と休む。
日給のために無理をしない。
飲む席で飲まない方が、後々面倒が少ない。
最初の印象で決まる
初日は同伴を持っていく。
手ぶらなら、周りの目は冷たい。
「動ける子」と認識される一手だ。
見極められている時間
入店後「最初の2ヶ月ノルマなし」を信じてはならない。
見極め期間だ。
客を呼べる女か、使えない女か。
目標を外せばブラックリスト。
席はつかず、待機の地獄。
周囲も「あの子はすぐクビ」と見限る。
この世界の絶対
銀座は売上主義だ。
年下でも売上があれば格上。
結果が全て。
態度がすべてを変える
横柄な態度は取らない。
新人の黒服にも優しく。
スタッフの冷たさも、
売上が上がれば変わることを知る。
おばさん扱いされても、
「そりゃそうだと」受け入れる。
若い子を可愛がる。
いじられるくらいがちょうどいい。
よく来る客以外にも、まめに連絡。
スキンシップは腕組みまで。
生き残るということ
とにかく、ブランクを作らないこと。
次の店がなければ客は離れる。
他のホステスに取られる。
次の店は即決める。
簡単には辞められない世界だ。
金銭感覚が狂う。
時間の流れも違う。
やめても、大抵戻る。
体は消耗品。
店を持つまで、酷使し続けるしかない。
主役にならない選択
私は主役にならなかった。
前に出ず、空気を読んだ。
引くことを覚え、許すことを選んだ。
若い子を立て、場を回し、
枠だけは崩さなかった。
主役の代償
主役には、主役の苦しみがある。
毎日前に出て、
比較され、見られる。
それに耐える強さは、
誰にでもあるものではない。
距離が生んだ居場所
私は、少し離れた位置から見た。
自分にこの場で何を求められているのか
ヘルプとしてどんな席でも対応する
その距離が、私の居場所だった。
銀座という場所の本質
銀座は、華やかさの裏で
人の格を量る場所だ。
強い者ではなく、
うまく立ち回る者が残る。
消えないということ
主役にならないのは、負けではない。
自分の立ち位置を知っているということだ。
17年、私はそれで立ってきた。
これからも、たぶん主役にはならないだろう。
でも、銀座で立ち続けるなら、それでいい。
消えない女として。
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