秋の一日
素敵なプロンプトを見つけたので試してみました♪
nanaさん
【プロンプト配布】🍂『秋の蚤の市で、ふたりだけの掘り出し物を。』
朝の空気は、思っていたより冷たかった。
「寒っ」
そう言いながら、君が木箱を抱える。
「だから言っただろ。上着、もう一枚持ってこいって」
「でも、昼は暑くなるかもしれないし」
「……まあ、雫らしいけどな」
笑いながら、俺は木箱を受け取った。広場には、まだ人影が少ない。
俺たちは小さなテーブルに焼き菓子を並べ、手書きの看板を置いた。
『ひとやすみ』
「いい名前だな」
「でしょ?」
準備を終えると、開場まで少しだけ蚤の市を見て回った。
古い時計、絵葉書、ガラスの小瓶。そして、古い木箱の隅に、小さな真鍮の鍵があった。
「……なんか気になる」
「俺も」
理由はない。でも、二人とも目を離せなかった。
「これ、連れて帰るか」
「うん」
それだけで決まった。
昼には焼き菓子もずいぶん減っていた。
「結構売れたな」
「ね」
温かいスープを飲みながら、二人で笑う。特別な話なんて、何もしていない。それなのに、妙に心地よかった。
夕方。店じまいを終えた君が、朝の紙袋から真鍮の鍵を取り出した。
夕暮れの光を受けて、ほんの少し金色に光る。そのとき、店主が声をかけてきた。
「それ、昔、小さな喫茶店で使われていた鍵なんですよ」
その鍵は、店の奥にあった小さな引き出しのものだったらしい。
そこには毎日ひとつ、クッキーやスコーンなどのお菓子が入っていた。閉店後、家族と一緒に食べるためのお菓子。
「店を閉めるときに、鍵だけ残ってね。なんとなく捨てられなくて」
店主はそう言って、「大事にしてもらえそうでよかった」と笑った。
店主が去ったあと、俺たちは鍵を眺めた。
「……なんか、今日ここに来るためにあったみたい」君が言う。
「そうかもな」
「でも、ほんとは何も分からないけどね」
「それくらいがいいんじゃない?」
二人で笑った。
高価でもない。特別な力があるわけでもない。ただ、小さな真鍮の鍵。でも今日、二人で見つけたものだ。
「持って帰ろう」
「うん。秋の記念品」
帰り道、夕方の風が少し冷たかった。
紙袋の中で、鍵が小さく鳴る。
カチャ。
俺たちは顔を見合わせて、少し笑った。
朝の冷たい空気、焼き菓子の甘い匂い、夕暮れの広場。そして、理由もなく気になって、二人で連れて帰った小さな鍵。そんな一日が、ひとつ増えた。
⏬️音声でも少しだけ。
⏬️雰囲気を曲にしてみました
