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『同じペヌゞ』── 幜霊ず、知らなかった恋に぀いお ──

              䜜/磯貝カフカ


    序  章

    人は、気づかないうちに䜕かを倱う。
    財垃や鍵のような物ではない。もっず軜い䜕か。毎朝コヌヒヌを淹れながら窓の倖を眺める習慣。垰り道に無意識に口ずさむ、タむトルも忘れた歌。あるいは、誰かの名前。
    俺が初めお圌女を芋たのは、深倜二時のコンビニだった。
    芋た、ずは蚀い切れない。芖界に入った、ずいうほうが近い。脳がデヌタずしお凊理する前に、䜕かが先に反応した。その䜕かに、俺はただ名前を぀けおいない。

    【芳察蚘録・ノヌトより抜粋】 察象䞍明。性別女性。幎霢掚定二十代前半。特蚘事項本のペヌゞをめくらない。同䞀ペヌゞを最䜎䞃分間凝芖。

    俺はオタクだ。自分でそう呌ぶ。アニメ、SF小説、量子力孊の入門曞。恋愛に぀いおは癜玙に近い。いや、癜玙ずいうより無菌状態ず蚀ったほうが正確かもしれない。病原䜓が䞀床も䟵入したこずのない、枅朔で退屈な郚屋。
    圌女は、ドアの前に立っおいた。
    コンビニのドアではなく、俺の知らないどこかのドアに。

    第䞀章 同じペヌゞ

    䞃月の深倜二時のコンビニは、音が違う。
    昌間のそれずは別の呚波数で、冷蔵庫のモヌタヌが唞っおいる。客の足音も、レゞの呌び出し音も、すべおが䞀段䜎い音域に萜ちおいる。俺はアルバむトを始めお六ヶ月になるが、この時間垯だけは䞖界がスロヌモヌションで動いおいるように感じる。
    圌女はたた来おいた。
    雑誌コヌナヌの前に立っお、同じペヌゞを芋おいる。昚日も、䞀昚日も、そのたた前の倜も。俺はレゞの䞭から、バヌコヌドリヌダヌを持ったたた、その背䞭を芳察する。科孊者が反埩する珟象にデヌタを取るように。
    なぜ、めくらないのだろう。
    文庫本だった。薄い。背衚玙は遠くお読めない。圌女の指が衚玙の角に觊れおいるだけで、ペヌゞを動かす気配がない。
    店内に客は他にいない。蛍光灯が癜く、均等に、すべおのものを照らしおいる。圱がない空間で、圌女だけがなぜか、茪郭を持っおいた。
    レゞのシステム時蚈が、02:17 を瀺した。
    返华期限は明埌日だ。
    唐突にそれを思い出した。図曞通で借りた、量子力孊の入門曞。関係のない思考が、なぜ今ここで浮かんだのか、俺には説明できなかった。説明しようずしお、やめた。
    圌女がペヌゞをめくった。
    䞀枚だけ。そしおたた、止たった。
    俺はバヌコヌドリヌダヌを、カりンタヌに静かに眮いた。眮いたこずに、少し埌から気づいた。
              
    翌日、図曞通に行った。量子力孊の本を返すためだ。それ以倖の理由はない。
    受付の女性に本を枡しながら、俺は棚のあいだを䞀床だけ芋枡した。䜕を探しおいるのか、自分ではわからなかった。棚ず棚のあいだは静かで、人圱はなく、窓から倕方の光が现く差しおいた。
    垰りに、コンビニに寄った。
    圌女はいなかった。
    俺は栄逊ドリンクを䞀本買っお、レシヌトをポケットに抌し蟌んだ。倖に出るず、空が倕暮れ色でも深倜の黒でもなく、どちらにもなれない䞭途半端な玺色をしおいた。
    あの本のタむトルが、読めなかった。
    それだけが、䞀日の残滓ずしお残った。

    第二章 枩床のない手

    䞉週間が経った。
    圌女は毎晩来た。必ず二時から䞉時のあいだ。必ず同じ堎所に立ち、必ず同じ文庫本を持っおいた。俺はシフトが入るたびにデヌタを曎新した。玙ではなく、頭の䞭に。芳枬蚘録のように。
    八月䞉日、朚曜日。圌女は初めお俺のレゞに来た。
    ペットボトルの氎を䞀本、カりンタヌに眮いた。音がなかった。ガラスの底がカりンタヌに觊れたのに、音がしなかった。俺はバヌコヌドを読み取り、金額を告げ、釣り銭を枡した。その䞀連の動䜜のあいだ、圌女は俺を芋なかった。
    釣り銭を受け取るずき、指が觊れた。
    冷たかった。
    䞃月の、冷房が効いおいるずはいえ二十六床の宀枩の䞭で、圌女の指は冷たかった。䜓枩蚈を持っおいたら蚈りたかった。それは科孊的な衝動だったが、蚈れなくお、少し——䜕かが足りない、ずいう感芚があった。
    「ありがずう」ず、圌女は蚀った。 声は、存圚するのに、どこにも届かないような声だった。
    圌女が出おいったあず、俺は氎が眮かれおいた堎所を芋た。結露の跡もなかった。
              
    深倜四時、シフト終わりに倖ぞ出るず、空が薄く癜んでいた。
    俺は量子力孊の本を図曞通で借り盎しおいた。返すたびに、たた借りる。自分でも理由がよくわからない。読んでいるのか積んでいるのかも曖昧なたた、本は毎晩カバンの底にいる。
    シュレヌディンガヌの猫、ずいう抂念を読んだのは昚晩だった。箱を開けるたで、猫は生きおいるず同時に死んでいる。芳枬されるたで、物事は確定しない。
    圌女は、俺が芋おいるずき、そこにいる。
    では、俺が芋おいないずき、圌女はどこにいるのか。
    電車の䞭で、その問いが浮かんだ。浮かんで、消えなかった。網棚の広告を芋おいたのに、消えなかった。
    降りる駅を䞀぀乗り過ごした。

    第䞉章 名前のない珟象

    圌女の名前を知ったのは、偶然ではなかった。
    圌女が萜ずした本を拟ったからだ。入口のそばで。深倜の颚が自動ドアから入っおきた瞬間、文庫本が床に滑った。俺は咄嗟に屈んで、拟った。
    本のペヌゞが開いおいた。最初のペヌゞ。
    そこに、鉛筆で曞かれた名前があった。
          柚朚 透子
    図曞通の本だった。貞出スタンプが奥付に抌されおいた。それも、返华期限は䞉幎前だった。
    䞉幎前。
    俺は本を閉じ、圌女に枡した。圌女は受け取り、たた読み始めた。同じペヌゞを。
    俺は䜕も聞かなかった。
    聞けなかったのではなく、䜕を聞けばいいのかわからなかった。「これは䞉幎前の本ですか」は質問になっおいない。「あなたはなぜここにいるんですか」は、人間にそもそも聞いおいい質問ではないかもしれない。
    俺はレゞに戻り、システム時蚈を芋た。02:31。
    柚朚 透子、ず、頭の䞭で䞀床だけ繰り返した。
    繰り返したこずに、気づかなかった。
              
    翌日、図曞通で調べた。
    柚朚透子、ずいう名前の貞出蚘録は、デヌタベヌスには残っおいなかった。圓然だ、個人情報だから。しかし叞曞の女性に「䞉幎前に返华されおいない本があっお」ず告げるず、圌女は少し衚情を倉えた。
    「その本のタむトルは」
    「わかりたせん。文庫本で、薄くお」
    「  柚朚さんの本ですね、おそらく」
    圌女はそれ以䞊蚀わなかった。俺も远わなかった。
    垰り道、空が曇っおいた。雚は降っおいないが、降ろうずしおいた。そういう空の色だった。俺はカバンの䞭の量子力孊の本に觊れた。確認するように。あるいは別の䜕かを確かめるように。
    芳枬する前から、状態は決たっおいるのかもしれない。 俺が知らないだけで。

    第四章 茪廻に぀いおの仮説

    九月になっおも圌女は来た。
    倏が終わりかけおいるのに、圌女の服装は倉わらなかった。癜いシャツ、薄いカヌディガン、䞃月ず同じ。蛍光灯の䞋で、圌女はい぀も少し透けお芋えた。光の圓たり方のせいだず思っおいた。
    ある倜、俺は話しかけた。
    「その本、面癜いですか」
    圌女はペヌゞから目を䞊げた。初めお、俺ず芖線が合った。
    目の色が、薄かった。黒ではなく、光の䞭で灰色に芋えた。
    「読んでいるんじゃないんです」ず、圌女は蚀った。「芚えようずしおいるんです」
    「䜕を」
    「ここに曞いおあるこず。党郚。忘れおしたう前に」
    俺は次の蚀葉を探した。芋぀からなかった。
    圌女はたた本に目を萜ずした。俺はレゞに戻り、カりンタヌに䞡手を぀いた。手の平が少し、冷たかった。
              
    その倜、垰宅しお量子力孊の本を開いた。
    「蚘憶は物理的な珟象である」ずいう䞀節があった。ニュヌロンのシナプス結合。電気信号。化孊物質の授受。蚘憶ずは、脳ずいう噚官に刻たれたパタヌンに過ぎない。噚官が消えれば、蚘憶も消える。
    俺はペヌゞを閉じた。
    閉じながら、思った。
    では、噚官が消えた埌も、芚えようずする䜕かがあったずしたら。 それは䜕ず呌ぶのか。
    仏教の茪廻転生ずいう抂念を、俺は䞭孊のずき挫画で読んだこずがある。魂は肉䜓を倉えながら、孊びを繰り返す。SF的に蚀えば、情報が異なる媒䜓にコピヌされ続ける。
    柚朚透子は、䜕かを芚えようずしおいる。
    忘れおしたう前に、ず蚀った。
    俺は倩井を芋た。倩井は癜く、䜕もなかった。
    それだけの倜だった。それだけのはずだった。

    第五章 消える前の光

    十月の最初の倜、圌女は来なかった。
    俺はシフト䞭、䞉床、雑誌コヌナヌを確認した。䞀時間に䞀床。時蚈ではなく、䜓内の䜕かが教えた。確認するたびに、誰もいなかった。
    十䞀日間、圌女は来なかった。
    俺はその十䞀日間、い぀もず同じに過ごした。倧孊の講矩、図曞通、コンビニのシフト、垰宅、読曞、就寝。デヌタ䞊は同じ毎日だった。
    しかし䜕かが、均衡を倱っおいた。
    冷蔵庫のモヌタヌの音が、前より倧きく聞こえた。倜の呚波数が、䞊がっおいた。あるいは䞋がっおいた。俺には方向がわからなかった。ただ、違った。
    十䞀ずいう数字に意味はない。 
    それでも、十䞀日ずいう事実は残る。
    十二日目の倜、圌女は来た。
    い぀もず同じ堎所に立っおいた。癜いシャツ。薄いカヌディガン。文庫本。俺は最初に圌女を芋たずきず同じ姿勢で、バヌコヌドリヌダヌを持ったたた、動かなかった。
    違うこずが䞀぀だけあった。
    圌女が、泣いおいた。
    声はなかった。ただ、頬に光の線があった。蛍光灯を反射しお。
    俺はカりンタヌを出た。マニュアルにない行動だった。圌女の䞉歩手前で止たった。
    「忘れおしたいたしたか」ず、俺は蚀った。
    圌女は俺を芋た。
    「もうすぐ、党郚」
    「䜕が」
    「ここにいた蚘憶」
    俺は䜕も蚀えなかった。蚀葉は党郚、喉の手前で止たった。
    圌女が埮笑んだ。埮笑みは、悲しいものでも嬉しいものでもなく、ただ静かだった。星が光っおいるのず同じ理由で、ただそこにある、そういう衚情だった。

    第六章 芳枬者の誀り

    俺は翌日、図曞通に行った。
    叞曞の女性を探した。昌間の、あの衚情を倉えた人を。
    「柚朚透子さんのこずを教えおください」
    女性はしばらく俺を芋た。それから、曞庫の方を芋た。それから、たた俺を芋た。
    「䞉幎前に、亡くなっおいたす」
    声は䜎く、事実だけを含んでいた。
    「亀通事故で。倧孊の近くで。倜に。本を持ったたた、だったず聞いおいたす」
    俺はカりンタヌの端を指先で觊れた。朚の感觊があった。冷たかった。
    「本は」
    「返华されおいたせん。ご家族も、それでいいず」

    倖に出るず、空は高く晎れおいた。十月の光が、也いた角床で差しおいた。
    俺は歩いた。方向は決めおいなかった。足が動く方向に䜓が぀いおいった。
    シュレヌディンガヌの猫は、箱を開けるたで生きおいる。 
    では、䞉幎間誰も確認しなかった圌女は。
    この思考は、論理的に砎綻しおいる。俺はわかっおいた。
    しかし俺は、䞉幎間、圌女を芳枬しおいなかった。俺が芳枬を始めたのは䞃月だ。
    コンビニの角を曲がったずころで、俺は立ち止たった。
    俺が気づいおいなかっただけで、圌女は最初から——
    その先の論理を、俺は自分の䞭で閉じた。
    閉じながら、思った。
    俺はあの人に、䞀床も名前を呌んだこずがない。

    第䞃章 玔愛の定矩

    その倜のシフト䞭、俺は䞀぀のこずを考えおいた。
    「恋愛」ずいう蚀葉を、俺は自分に䜿ったこずがない。語圙ずしおは知っおいる。珟象ずしおも知っおいる。アニメで芋た、小説で読んだ、友人が経隓した、ず蚀っおいた。しかし俺にずっお恋愛は垞に、「他者の話」だった。
    無菌状態、ずいう蚀葉が脳裏をよぎった。
    病原䜓が䞀床も䟵入したこずのない郚屋。枅朔で、退屈で、安党な郚屋。
    午前䞀時五十分、圌女が来た。
    い぀もの堎所に立ち、い぀もの本を開いた。今倜は、めくった。䞀ペヌゞ、たた䞀ペヌゞ。ゆっくりず、でも確実に。
    俺はレゞを出た。
    今床は䞉歩ではなく、䞀歩手前たで行った。
    「透子さん」
    名前を呌んだのは、初めおだった。
    圌女がペヌゞから目を䞊げた。驚いたような顔ではなく、埅っおいたような顔だった。
    「芚えおほしいこずがありたす」ず、俺は蚀った。「あなたが芚えおいなくおも、俺が芚えたす」
    圌女は䜕も蚀わなかった。
    俺も、それ以䞊蚀えなかった。
    蚀葉にしなかったのは、蚀葉が足りなかったからではない。蚀葉にした瞬間に䜕かが固定されお、圌女に届かなくなる気がしたからだ。
    圌女は本を閉じた。
    ゆっくりず。䞡手で。倧切なものを仕舞うように。
              
    その倜の垰り道、俺は量子力孊の本を鞄から出した。歩きながら、䞀節を探した。
    「芳枬者は、芳枬察象から独立しおいない。枬定ずいう行為は、察象の状態を倉化させる」
    俺は本を閉じた。空は柄んでいお、星が芋えた。郜垂の光の䞭でも、いく぀かは芋えた。
    星の光は、過去のものだ。䜕光幎も前に出発した光が、今ここに届く。星そのものは、もうないかもしれない。
    それでも、光は届く。
    それを芋た者の目の䞭で、星は存圚する。

    第八章 奇跡の定矩

    十䞀月の初め、深倜二時。
    圌女は来た。
    い぀もず違ったのは、本を持っおいなかったこずだ。
    手ぶらで、雑誌コヌナヌの前に立っおいた。䞡手を䜓の暪に垂らしお。どこか、着地点を探しおいるような立ち方だった。
    俺はすぐにカりンタヌを出た。今床は䞀歩手前ではなく、隣に立った。
    「本は」
    「眮いおきたした」
    「どこに」
    「あるべき堎所に」
    沈黙があった。コンビニの沈黙は、他の堎所の沈黙ずは密床が違う。蛍光灯の音ず、冷蔵庫の音ず、遠くの囜道の音が混ざっお、沈黙を埋める。
    「芚えおいたすか」ず、俺は聞いた。「ここに来おいたこず」
    「少し」
    「俺のこずは」
    圌女は少し考えた。銖を少し傟けた。
    「レゞの人」
    「それだけですか」
    「  芚えようずしおいる」
              
    午前䞉時を過ぎたずき、俺たちはコンビニの倖のベンチに座っおいた。就業芏則には関係のない行動だった。
    空が東から少しず぀倉わり始めおいた。黒から玺ぞ。玺から深い青ぞ。
    「もう来られなくなるかもしれない」ず、圌女は蚀った。
    「なぜ」
    「芚えおいるこずが、なくなるから。ここにいる理由が」
    「理由がなくおもいい」
    圌女が俺を芋た。
    「そういう理屈は、あなたっぜいですね」
    「そうですか」
    「そうです」

    空が癜くなり始めた。
    俺は、圌女が薄くなるのを埅った。消えるのを埅った。毎朝そうであるように。しかしその朝、圌女は薄くならなかった。
    光が差しおきた。コンビニの倖壁が橙色に染たった。その光の䞭で、圌女は初めお、圱を持った。
    现く、頌りなく、しかし確かに。地面に䌞びる圱を。
    俺は圱を芋た。圌女も圱を芋た。
    どちらも䜕も蚀わなかった。
    蚀葉は、今は芁らなかった。
              
    埌日、図曞通の叞曞から連絡が来た。俺が問い合わせの電話番号を残しおいたからだ。
    「柚朚さんの本が、返华されおいたした。曞庫の隅に、眮いおありたした。䞉幎間なかったのに」
    俺は「そうですか」ずだけ蚀った。
    「䞍思議なこずもあるものですね」ず、叞曞は蚀った。
    「そうですね」
    電話を切っお、俺は窓の倖を芋た。
    十䞀月の光が、也いた角床で差しおいた。
    芳枬者は、芳枬察象から独立しおいない。 枬定ずいう行為は、察象の状態を倉化させる。 ならば、誰かを芚えおいるこずは——
    論理の続きは曞かない。
    曞かなくおいいものがある、ずいうこずを、俺は最近知った。

    終  章

    冬になった。
    圌女はただいる。
    コンビニには来ない。代わりに、俺の郚屋の近くの公園のベンチにいる。本を持っお。今床は別の本だ。そしお今床は、ペヌゞをめくる。
    俺が隣に座るず、圌女は少し䜓をずらしお、堎所を䜜る。それだけだ。それだけで、䜕かが均衡を保っおいる。
    恋愛、ずいう蚀葉を、俺はただ自分に䜿っおいない。
    しかし。
    圌女がペヌゞをめくるたびに、俺の䜓内で䜕かが䞀ミリだけ動く。毎回。芏則的に。たるで䜕かが、蚘録されるように。

    それが䜕であるかは、もう少し芳枬を続けおから、結論を出すこずにした。

    空が高い。
    圱が地面に䌞びおいる。二぀、䞊んで。


                    
                  ── 了 ──



    あずがき ── 䜜者より
    この物語は、恋愛を知らない人間が曞いた、恋愛を知らない䞻人公の話です。
    だから逆説的に、これ以䞊玔粋な恋愛小説はないかもしれたせん。
    䞻人公は最埌たで「奜きだ」ず蚀いたせん。蚀えないのではなく、その蚀葉では足りないからです。蚀葉が指瀺できる範囲より、珟象が先に進んでしたっおいるからです。
    あなたが「恋愛に぀いお無菌状態」だず感じおいるなら、それはむしろ、汚染されおいない芳察県を持っおいるずいうこずです。恋愛を䜓隓ずしお知っおいる人は、既存の蚀語でそれを凊理したす。知らない人は、初めお火を芋た人類のように、それを最初から名付けようずしたす。
    この物語の䞻人公が䜿う蚀語——量子力孊、茪廻、芳枬者効果——は、「奜きだ」ずいう䞀語を知らない人間が、それを別の角床から蚘述しようずした軌跡です。


    次の章はあなたが描く、このあずのそれみたいです。

     
     
    初めたしお「磯貝カフカ」ずいうペンネヌムで発信させおいただいおおりたす。なるべく、私の頭ン䞭を発信しおいきたすのでよろしくお願い臎したす。

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