
君と僕と夏 8
8. 海
◯海への道のり
街中を自転車で駆け抜ける夏海と高瀬。
夏海が先導し、高瀬が後に続く。
(回想)
学校近くのシェアサイクルで自転車を借りる2人。
高校から海まで大体30分。
電車移動だと会話が持つ自信がなかった夏海は、自転車で海へ向かおうと誘う。
高瀬は突拍子のない提案に驚くが、着いていくことにした。
(回想終わり)
通学路
商店街
田んぼ道
景色がどんどん海へと近づいていく。
高瀬は、自転車を漕ぎながら控えめに笑った。
久しぶりに生きていることを実感した。
◯再浜ビーチ
15:00
砂浜に、少し距離を空けて座る2人。
夏海「高瀬くんは、東京の大学を受けるの?」
高瀬「まだ決めてない。井上さんは?」
夏海「私は、一応ここの大学の予定。
東京の大学生活も憧れるけど、ちょっと怖いかなって」
高瀬「人と場所による」
夏海「・・・そうだよね」
少しの沈黙のあと、
高瀬「どこも良し悪しはあるけど、自分に合う場所が見つかるといいね」
夏海は高瀬を見る。
夏海「・・・ありがとう」
夏海「7月のはじめに、ここで高瀬くんを見た」
高瀬は思い出したように、あぁと呟く。
夏海「その日は学校に行きたくなくて、朝から休んでここに来たの。
昔から、この海が好きで」
高瀬は手を後ろにつく。
高瀬「俺も、好き」
波の音。
ドキドキする夏海。
夏海は、手をぎゅっと握りしめた。
夏海「東京で、何かあったの・・・?」
海の向こう側を見る高瀬。
高瀬「ごめん。あんまり話したくない」
夏海は、踏み込みすぎたことを後悔した。
夏海「ごめんなさい」
高瀬は夏海の目を見て、優しく言った。
高瀬「でも、ありがとう」
高瀬はごろんと寝転がった。
夏海も同じように寝転んだ。
しばらくの間、2人は目を瞑って波の音を聞いていた。
* * *
高瀬「そろそろ帰ろうか」
高瀬が起き上がる。
夏海「うん」
◯再浜駅・駅前(夕方)
夏海「今日は本当にありがとう。その、楽しかったです」
高瀬「こちらこそ」
夏海「色々ごめんなさい。でも、高瀬くんのこと少し知ることができて、嬉しかった」
高瀬「“何か“は、あった?」
夏海「上手く言葉にできないけど、ありました」
夏海の真っ直ぐな瞳に、頷く高瀬。
スマホを見ながら少し険しい顔をして、駅の改札前で止まる高瀬。
高瀬「親が近くまで来てるらしいから、俺はここで」
夏海「じゃあ、また浜ゼミで」
頷く高瀬。
夏海は改札の中に入り、少し歩いた後振り返った。
高瀬はいなくなっていた。
⚪︎浜ゼミ・休憩室
翌日 14:30。
アミ「なんかちょっと焼けた?」
夏海「昨日、外にいたからかも・・・」
夏海とアミは、次の授業に向けて休憩室でお菓子をつまんでいた。
そこに、同じ高校の同級生の春川南(18)、及川加奈(18)、川口洋輔(17)が入ってきた。
夏海はあまり接点はないが、アミとは友達だ。
南「あー!アミ!
ね、聞いた?
ここに通ってる人で、ちょっとやばい話あるらしいよ」
アミ「何の話?」
南「今ちょうど話してたんだけどぉ、なんか、タカセ?っていう男子が、この前東京で起きた殺人事件に関わってるかもしれないんだって〜」
名前を聞いた後、夏海は固まった。
続く