
君と僕と夏 1
1. 出会い
⚪︎電車・車内(朝)
木曜日の朝8時。
制服姿の井上夏海(17)は、学校とは正反対の方向に走る電車に乗った。
空いている車内で、窓の景色をぼーっと眺めている。
夏海(モノローグ)
『高3の7月。
学校を休み、いつもと違う電車に乗った。
休んだ理由は、行きたくなかったから。
きっと正直に申告しても、家族以外に怒られることはないだろう。
だからいいというわけではないけれど。』
⚪︎再浜駅・正面口
夏海は改札を出て、近くの海まで歩く。
⚪︎再浜ビーチ
海に着いた夏海は、潮風を感じながら小さく深呼吸をする。
夏海(モノローグ)
『地元の人に愛されている海。
いつもは賑やかだけど、平日の朝はこんなに静かなんだ。』
夏海は、視線を浜辺に移した。
夏海「・・・あ」
波打ち際に、同い年くらいの男の子が座っている。
水平線を見つめて、微動だにしない。
夏海(モノローグ)
『海に何かを求めにきたのは、私だけじゃなかった。』

⚪︎夏海の高校・教室(朝)
翌日。
夏海はいつも通り学校へ行く。
昨日休んだことについて、誰からも何も言われなかった。
***
放課後。
夏海はそそくさと教室を出て、隣のクラスの中条アミ(18)と合流して予備校へ向かう。
⚪︎予備校への道のり(夕方)
アミ「昨日休んだのめずらしいね」
夏海「少し体調悪くて・・・もう大丈夫」
アミ「ふーん?よかった。そういえば、昨日のドッジボール、2組圧勝だったよ」
夏海「あぁ、うん、今日聞いたよ。うち運動部多いから」
アミ「山田とか本当にうるさくてさぁ・・・」
⚪︎再浜ゼミナール(以降、浜ゼミ)・廊下
アミ「じゃあまたあとでねー」
先に授業があるアミと別れた夏海は、自習室へ向かう。
⚪︎浜ゼミ・自習室
室内には数人がまばらに座っている。
夏海は、仕切り板がついた席の間を静かに歩きながら、あまり人気のない席を探す。
その時、夏海は見つけた。
昨日あの海で見かけた同年代くらいの男の子を。
男の子は、日当たりのいい席で頬杖をつきながら参考書を眺めている。
このあたりでは見かけない都会的な顔立ちに、運動着のようなラフな服装でそこに座っている。
夏海(モノローグ)
『昨日の・・・?』
男の子は夏海に気付く様子はなく、ただ静かに参考書を眺めている。
夏海はしばらく立ち止まったまま男の子の後ろ姿を見つめた。
夏海にとって、少し気になる存在ができた。
続く