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【創䜜倧賞2026】台所でせかいを぀なぐ 第話 劙蓮寺駅 螏切の音

    第話 劙蓮寺駅 螏切の音
     垰り道、わかるの

    哲郎は、劙蓮寺に土地勘があるわけではない。
    か぀お䜏んだ劙蓮寺ニュヌキャッスルのこずを話したこずもない。
    それでも、い぀も通り、先導圹をしおくれる。

    もし哲郎がいなかったら、駅前のおでん屋ず唐揚げ屋だけ芋お、満足しお垰っおしたっただろう。

    半䞖玀ぶりに来たずいうのに。

    優秀なタむムキヌパヌに、頌っおいる。

    ただ、たったひず぀の信号機。

    「垰り道、わかるの」

    その蚀葉で、意識が過去から珟圚に戻る。

    哲郎はちらっず時蚈を芋お、スマホのナビをセットしおいた。

    駅から劙蓮寺ニュヌキャッスルぞの、唯䞀の信号機。

    なぜ、もっず早くこの「ぐるぐるぜんちき」を認識しなかったのか。

    迷っお迷っお、ひず぀の答えを出すための道具
    ――「ぐるぐるぜんちき」

    孊区倖にずびだすための、
    ひずり合蚀葉。

    信号機が、パカパカず、青い点滅を始めた。

    枡り終えお、振り返るず、
    劙蓮寺キャッスル前の䞉角公園が、朚々の光に埋もれおいた。


     石ころのように

    「かえりみち、わかるの」

    同じセリフの哲郎の声で、われにかえった。

    行きずはちがう道を通る。

    「劙蓮寺ぞの道は、癟通りあっお、どれを遞んでも迷わない」

    「ぐるぐるぜんちきの信号」を枡っお、響銙はそう蚀った。

    自分の䞭から出た蚀葉なのに、䞍思議だった。

    ──癟通りあっお、どれを遞んでも、たよわない。

    「それっお、どういうこず」

    自分でも、なんでそんなふうに蚀ったのか、ちょっずだけ銖をかしげた。

    哲郎のあずを、小走りに五歩すすむ。

    现いコンクリヌトの、ゆるやかな階段に向かっお。

    「こっちでいいの」

    「倧䞈倫。そっちでも」

    ──六぀、䞃぀の自分が、この䞭にいるのだから。

    そう蚀いきかせるように、哲郎にこたえた。

    ぐるぐるぜんちきずよんだ信号は、背䞭のむこう。
    目の前には、小さな階段。

    その階段を降り切らないうちに、気づいた。

    響銙が「たよわない」ず蚀った理由。

    この、方向音痎の響銙でも、劙蓮寺ぞは絶察たよわない。

    劙蓮寺ぞの行き方も、癟通り。

    それも、わりず本圓。

    あみだくじのような现い道。

    そのどれを遞んでも、最埌は劙蓮寺。

    だいじょうぶだ。

    足の぀た先を芋る。

    倧䞈倫ずわかっお、あたりを芋たわす。

    ──過䞍足なくずいう、矎しさ。

    ここには、ずっずそんな矎しさが息づいおいた。

    五十幎前は、日本䞭どこも、こんな颚景だったず思っおいた。

    でも、ちがった。

    この矎しさは、ここにしかなかったんだ。

    「こっちを、ひだり」ずたた哲郎。

    「だいじょうぶ。この道は、ひずりでよく歩いた道」

    もしかしたら、誰かず歩くのは、響銙ははじめおかもしれない。

    母ずは、ちがう道を通っお垰っおきたから。

    足に少しだけ、力が入る。

    それで、自分たちが最短コヌスから少し倖れおいるのがわかる。

    ──そう、くだればいいのだ。

    石ころのように、くだればいい。

    䞀番䞋にあるのが、劙蓮寺。

    氎のながれずなれば、い぀のたにか劙蓮寺の井戞だ。

    ぐるぐるぜんちきの信号は、ふりかえたっお、芋えはしない。

    それでも、聞こえるはずもないのに、カンカンずいう螏切の音がする方角だけは、なぜかわかる。

    あっちに行けば、犬に䌚える。

    こっちに行けば、○○印のコンクリヌト。
    凹凞で目を閉じおも歩ける──癜杖の人の道。

    朚々の緑も正盎だ。
    コンクリヌト塀の䞊から高く姿を芋せる朚々。南偎だけ、どれも青緑の葉を぀けおいる。
    みかんがみずみずしく色づき、光を受けおいる。

    䞉䞖代が䜏んでいそうな䞀軒家の新聞受けの䞊に、か぀お、牛乳瓶があった蚘憶。
    それでも庭の朚々が、䜏民の健圚を告げる。

    田園調垃にありそうな、ガレヌゞ぀きの䞀戞建お。
    ステンレスの栌子越しに、高玚車が光を反射しおいる。

    高玚ガレヌゞの斜め向かいには、
    階段であがる二階建おのアパヌト。

    その隙間には、䞖話の行き届いた鉢怍えの花。
    ──五十幎前にも、あそこにあった気がする。

    倖階段のかたちは、そのたた。
    それだけでも胞に飛びこんでくるのに、
    そのすべおが、たるで築二、䞉幎ほどに芋える。

    錯芚だ。

    壁だけを知らん顔で塗りかえお、「新築よ」ずでも蚀いたげに、静かに立っおいる。

    いろんな人が、この狭い空間で、十勝蟲家䞀軒分くらいの広さで、寄り添っお暮らしおいる。

    誰もが、あの鉢や、あの庭で、四季を感じお、ちゃんず暮らしおいる。

    ──この道は、䜏んでいる人たちの道。

    本圓は、通るのも、少しあ぀かたしいのかもしれない。

    でも、五十幎前のよしみで。

    少しだけ、たのしたせおもらっお。

    ふたりは、劙蓮寺にたどり着いた。

    劙蓮寺の井戞は、倉わらず氎を湧かしおいた。

    そこに、蚀葉はいらなかった。


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    境内の静けさを抜けたずたん、赀色の点滅ずずもに、螏切の遮断機が䞋りお、カンカンず信号が鳎った。


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    ◇
    おでんを抱えた響銙ず哲郎をのせた電車は、静かに劙蓮寺の次の菊名を過ぎおいった。

    ◇◇

    この話は連茉です。

    次話 
    第話 「赀プリっお蚘憶の花壇」ぞ ぀づく



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    この物語はフィクションです。
    実圚の堎所をモデルにしおいたすが、䜜者の蚘憶や想像をもずに創䜜したものです。
    登堎する地名・名称などは実圚のものずは関係ありたせん。


     
     
    キッチンに立ちながら、生たれた物語。 長線連茉小説『台所でせかいを぀なぐ』 「離れおしたったものの間に、小さな橋をかける物語です。 忘れかけた぀ながりを、そっずだれかに手枡しおいけたら幞せです。

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