メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

最終章 最終話 第話 青いガヌベラ鉄道 〜垰還のトンネルの先  


    第話  青いガヌベラ鉄道 〜垰還のトンネルの先 最終話

    

     飛行機を降りるず、ガラス越しに搭乗を埅぀人々の姿が芋える。

    この景色の䞭に、数日前の私がいた。
    そしお、五幎前にも同じ景色の䞭にいた。

    あのずきは、二晩だけ岩氎沢に匕き返しお、あそこで携垯電話を手にした。

    飛行機の遅れを䌝えた、あの二床目の電話。
    出発時刻が決たったそのずき、これ以䞊、父の看病ができないこずを知らされた。

    意識が遠のいたたた、人の流れに導かれるように新千歳空枯駅ぞ向かう。

    コロナ犍の蚘憶も、もう薄らいでいる。

    空枯を行き亀う人は倚い。
    ——けれど、倚すぎる。

    駅に降りる階段に青いロヌプ。

    そんな、ばかな。

    どんな倧雪だっお、この䞉十幎倧䞈倫だったのに。

    青いロヌプをくぐる。

    改札の手前には倖囜人の列。
    そっず、その埌ろに、぀いた。

    アナりンスは、ひず぀もない。

    わずかに、列が、うごいた。

    列の䞭で、たたスマヌトフォン片手に
    立ったたた寝た。

    岩氎沢にむかいたい。
    札匵にいくのは、絶望的だ。

    倖囜人たちのグルヌプの䞭に
    ひずり混じっおいた。

    岩氎沢の䞀぀手前で降りる぀もり。

    スマヌトフォンを手に時刻衚を開こうずした。

    北広嶋で乗り換えれば、札匵を通らずに垰れる。

    ——でも、それがなんになるのだろう。

    そんな時短が、今の自分にずっおどんな意味を持぀のか。

    ふず、飛行機の䞭で芋た映画の続きを、もう䞀床思い描きたくなった。

    目を閉じる。

    映画の䞻人公は、自分でも父に少し䌌おいる気がした。

    ——倢は、自分で創䜜できない。

    あの映画は、すでに「Fin」で終わっおいた。

    でも、それもやはり倢だった。

    南千歳で降り、スヌツケヌスを匕きながら列車に乗る。

    その列車は「青いガヌベラ鉄道」。

    ずにかく、倢の䞭ではそう呌ばれおいる。

    倖囜人たちが流暢な日本語で䌚話しおいる。

    圌らの䌚話が聞こえた。

    「䌞子にあいたかったな。」

    えっ

    聞き耳をたおるず、
    䌞子さんずおなじく氎のこずにくわしい。

    「これは北広嶋には行かない。䌞子は北広嶋だろ」

    「この宀蘭本線は、岩氎沢にいくんだ。」
    さっき、青いガヌベラ鉄道っおいっおいなかったっけ

    「宀蘭本線。明治から続く路線なんだ。」

    「みんな電車っおいっおるけれど、電車じゃないよな」

    「あれは絊氎塔だ。」

    「よく、クレヌンもコンクリヌトミキサヌもない時代にあんなもの぀くったよな」

    「氎道管ひかなきゃ、汜車はしれないもんな」

    異囜の人は、たるで汜車の歎史の案内圹のように話す。

    「極寒の地で汜車を走らせる鉄橋を造るのは倧倉な挑戊のはずさ。
    圓時、石炭は日本の心臓郚。だからこの鉄道は陞の心臓から海路に぀なげる倧動脈だったんだ。」

    どっかの教科曞読んでる居眠りしちゃう

    「岩氎沢は、氎を飲たせるために育った郜垂なんだよ」

    えっ

    「レヌルの先を、氎が远いかけた堎所なんだ。」

    ——倢だものね 

    「トム、じゃあたたな。い぀かたた䌚おうぜ。元気でな。」
    「ゞェリヌもな。」

    「远分」ずいう駅で、トムずよばれおいた男が降り、十勝の「千幎の森」ぞ向かった。

    次の駅で、ゞェリヌは、軜自動車をあずけおいるず蚀っお、降りおいった。

    倢だずわかっおいるのに、私はただ「青いガヌベラ鉄道」に乗っおいる。

    日本語の流暢な異囜の人が、名前の由来を教えおくれた。

    「ガヌベラを鮮床そのたたで届ける技術からこの名が぀いた。ガヌベラが心地よく息をしお、日本の端たで届く。」

    その説明に、劙に玍埗しおしたう。

    列車の倩井から車掌の枋い声が聞こえる。

    「次は、志文です。志文の次は、終点・岩氎沢です。志文、志文です」

    しぶん  ちらんです

    車内アナりンスが流れた瞬間、
    窓の景色がぱっず倉わった。

    知芧《ちらん》の倏。

    蝉の声、颚に揺れる緑、遠くで氎の音。
    列車はトンネルにはいる。
    トンネルなんかあったけ・・・乗るの初めおか

    な぀かしい茶の間で
    おばあちゃんがたた話しおいる。

    「おじいちゃんは、オニダンマになったのよ」

    軍医ずしお戊地から戻り、県科医ずしお生きたおじいちゃん。

    じゃあ、父は
    「むノシシはさすがにここにはいないな 」

    ガタン、ず列車が止たり、䞀瞬だけ目が芚めた。
    そこは本圓にしぶんだった。

    ——これは電車汜車 今はそんなこず、どうでもいい。

    ずにかく降りなきゃ。あわおおスヌツケヌスを持っおホヌムに立぀。扉が閉たる。

    教䌚のようなちいさな駅におりる。
    怅子は、぀。
    だれもいない。

    そずは、猛吹雪だった。

    迎えの車のラむト。
      哲郎

    真っ癜な道路を、車がはしる。
    しろい吹雪で道がわからない。

    ホワむトアりト

    Googleナビが父の顔になった。

    珟圚地ず自宅たでの道を確認する。

    道路を走る車の䜍眮、信号のタむミング、雪かきされた道——すべおが、正確。

    「ああ、守られおいるのね」——
    道も、蚘憶も、そしお父の思いも、導いおくれる。

    五幎前そうだった。

    五幎前の1月18日、午前8時13分。
    父は矜田に、ひ孫ず孫ず矩理の息子を迎えに行った。
    母ず匟ず私を残しお。

    ——そのこずを、この青いガヌベラ鉄道の倢が教えおくれた。

    ——ガタン、ず列車の䜙韻が残る。
    あわおお荷物を抱えた。

    むダホンから、音楜がかかっおいた。
    それが、゚ンドロヌルのようにながれた。

    フェヌドむン フェヌドアりト
    あの曲。

     

    そうだ、これは、倢だった。

    浅くなった眠りの䞭で、自分に聞く。

    いったい、どこから倢は始たったのだろう。

    グヌグルナビの䞭の父の顔。
    青いガヌベラ鉄道に乗る私。
    䞭東の日本の男。

    いやいやもっず前。
    あのべらがうベンチから。

    きのうの哲郎ずの䌚話も倢

    「この男の人、トムずゞェリヌのトレヌナヌきおいるね。」

    「そうよ。圌が『虹の茪』のトレヌナヌなんだっお。マむクラの氎道管バヌゞョンも䜜ったらしいの。䌞子さんが圌に日本語のワヌプロ゜フトを教えたおかげで、自囜の子どもたちが氎の問題に気づけるようになったっお。」


    自宅の寝宀。

    のぶこさんからもらった本『ザ・シヌクレット』に挟たれたメモ。

    「家族で富士山みたい」
    叶ったず䌞子さんに報告した、あのスマホの倜䌚。

    ただ、倢の始たりは、もっずむこう。

    「䌞子さんに、䌚いたい」
    「こゆきに䌚いたい」
    「若き日の父に䌚いたい」

    「ザ・シヌクレット」に、あらたに挟んだメモ。

    あれは倢じゃない。

    䌞子さんの次女から届いた手玙。

    そこには、「享幎六十四」ず蚘されたはがきが添えられおいた。

    「芪孝行ができなかった。母は、スヌツケヌスを持っお、ひょっこり垰っおくるような気がしたす。」



    パ゜コンをあけた。

    そこは、雪囜ではなかった。
    秋の癜さか、朝の癜さがほどけお、空は秋の青に抜けおいく。

    䌞子さんが、旅立぀前に描いた、玙芝居がはじたった。

    

    ホヌムの階段を䞀段ず぀䞊がる。カツ、カツ、カツ——。
    駅員のきっぷを切る音が小気味よく響く。
    い぀もの無人駅の改札。
    スマホをかざしお改札を通る。

    「ピッ」ず鳎ったずき、意識がくっきりず戻る。

    そこに、哲郎が迎えに来おいた。

    「ただいた」

    ◇ 完


     
     
    キッチンに立ちながら、生たれた物語。 長線連茉小説『台所でせかいを぀なぐ』 「離れおしたったものの間に、小さな橋をかける物語です。 忘れかけた぀ながりを、そっずだれかに手枡しおいけたら幞せです。

    あなたぞのおすすめ