
想いと衝動|Flash Fiction#3
服飾の専門学校に通った私は、日本のブランドのアパレルを経てオーダーメイドスーツを仕立てている今の会社に就職した。
突然ですが、私 杏奈は名実共に「ブラコン」である。アパレル業界に入ったのも、兄 大翔が自分の好きなブランドの会社に就職したことが大いに影響している。私の夢はヒロが似合うスーツを仕立てること。私には理想の男性であるヒロがいるから恋愛は諦めている。ヒロ以上の男性はいないと25歳にして気づいてしまっているから。私の人生は全てヒロで成り立っていると言っても過言ではないくらい。もちろん、そんなこと本人は微塵も知る由もない。
「もしもーし」
「どうした?」
「明日ヒロと遊びに行きたいなあって思って」
「わりぃ、明日は咲希が来るわ」
「…ふーん、わかったぁ」
「なんかあった?」
「いや、別に」
「じゃあ、また連絡して」
「はーい」
…ふん。
こういう時、私の中に黒々とした"何か"が顔を出す。
「あ!三島、今平気?」
「はい、大丈夫です」
「わりぃ、今から大宮店に行くんだけど、野辺が客先からまだ帰れないらしくて、一緒に来れない?」
「大丈夫ですよ」
「助かったー!大宮店が来週からイベントだからさ、その準備とかもあって1人じゃヤバかったんだよ」
「森下先輩の担当ですか?」
「いや、野辺の担当なんだけど慣れてないから俺がサポートに入ってるんだよね」「大宮店って女性客も結構いるから、三島もいつものように意見があったらガンガン言ってほしい」
「はい、分かりました」
すぐに準備をして2人で大宮店へと向かった。
「もう9時過ぎてるじゃん」
「結構かかりましたね」
「腹減ったー」
「ご飯食べて帰りません?明日休みですし」
「賛成!酒飲みたいんだけど、三島は食べたいものある?」
「いえ、私もお酒飲みたいので居酒屋とかで大丈夫です」
「あ、じゃあ一軒気になってた店があるから、そこにしようぜ」
「何系ですか?」
「ちょっと渋い系」
「最高!」
「じゃあ、ちょっと駅から離れたところだから」
「はーい」
店に着くと、そこは小料理屋のような外観で如何にも「ちょっと渋い系」だった。
(ヒロもこういうお店好きだから、今度一緒に来よう)
以前から少し感じていたんだけど、森下先輩は外見は全く似ていないけど、喋り方だったり、好きなものがヒロに似てるところがある。そのせいか、先輩の中でも一番親しみやすくて仕事の相談はいつも森下先輩にしてしまったりする。
「へー、座敷でいいですね」
「ずっと入ってみたかったんだよね」「今日頑張ってくれたから奢るよ」
「やったー!最近なんか先輩羽振りよくなりましたよね」
「はは、なんだよその言い方は」「3か月前に付き合った彼女が料理上手ですぐ半同棲みたいになったから、いっそのこと一緒に住む?ってなって、ちょっとだけ家賃と食費を払ってくれてるんだよね」
「…へぇ」