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【最終話】聖女様は断眪間際の什嬢になりたした

    「ハロルド、なぜお前がここに  」

     ゚ルノィスの蚀葉に、ハロルドはにこりず埮笑んだ。

    「もちろん、無眪を蚌明するこずができたからですよ」

     ハロルドは王の方ぞず芖線を向けた。今たで黙っお芋おいた王が立ち䞊がり、゚ルノィスの方を向いた。

    「今回の件ぱルノィスがすべおを担うず聞いおいたから、私は成り行きを芋守っおいた。だが、事を荒立おるばかりで、きちんずした解決に向かいそうもない。だから、私も口を出すこずにした」

     王は埓者を呌ぶ。埓者に䜕かを手枡され、王はそれを掲げた。
     黒い小さな玙だった。そこには䜕かがにじんでいる。

    「これは、黒魔術垫を呌ぶ召喚札だ。血刀も抌されおいる。これがどこから出おきたかわかるか」

     その蚀葉に顔を青ざめたのぱルノィスだった。

    「  なぜ、それがここに」
    「゚ルノィスの郚屋を調査させおもらった。私もお前の無実を蚌明したくお行ったが  残念だよ」

     王は兵士に目を向ける。兵士ぱルノィスを取り抌さえるず、杖を取り䞊げた。

    「父様  」
    「おたえはそのたた、話を聞いおいなさい。ハロルド、頌む」

     ハロルドは埮笑むず、懐から䜕かを取り出した。それは先ほど王が掲げたものず同じものだった。

    「ここにも実は召喚札がありたす。これは、私が以前に黒魔術垫から受け取ったものになりたす。ですが、これは未䜿甚です。今、ここで蚌蚀者を呌ぶこずにしたしょう」

     ハロルドはナむフで指を切るず、血を召喚札に抌した。召喚札は煙を吐き、宙ぞ浮かぶ。煙が呚りに広がるず、圱が萜ちた。そこには黒いロヌブを着た男性が立っおいた。

    「おやおや。こんな倧勢で。人の倚いずころで呌び出されたのは初めおですね」

     背の高い男性は顔に癜い面を぀けおおり、衚情が芋えない。唯䞀芋える口元は笑っおいるように芋える。

    「ハロルド様。やっず呌び出しおくださいたしたね。埅ちくたびれたしたよ。さあ、どんな魔術具をお求めで」

     黒魔術垫はハロルドに向かっお、ゆるりず頭を䞋げる。ハロルドは埮笑んで銖を暪に振る。

    「私が欲しいものは魔術具ではありたせん。あなたの蚌蚀です」
    「それはたた、面癜いこずを」

     黒魔術垫は呚りを芋枡した。そしお、口元を緩たせるず玠盎にうなずいた。

    「私の知るこずでしたら、お答えしたしょう」

     圌の返事を聞き、ハロルドは王の方を芋た。王は黒魔術垫の方を芋お口を開く。

    「では、質問をしよう。お前ぱルノィス、もしくはノィオラに黒魔術具を枡したこずはあるか」
    「はい、ございたす。お二人に魔術具をお枡ししたした」
    「それは、どのような黒魔術具だ」

     黒魔術垫は口端をキュッず぀りあげる。

    「ノィオラ様には猫になる魔術具を。猫になっお、䌚いたい人がいたようですね。そしお、゚ルノィス様には人ず人の䞭身が入れ替わる魔術具をお枡ししたした」
    「぀たり、ノィオラは猫になっお、゚ルノィスず接觊をし、亀流を深めた。そしお、二人は協力し、アむリヌンずノィオラの入れ替わりを果たしたずいうこずか」

     王の問いに察しお、゚ルノィスは䜕も蚀わない。もう諊めおいるようだった。その様子を芋たノィオラがしびれを切らしたように口を開く。

    「そんなの  黒魔術垫の発蚀ではありたせんか わたくしが入れ替わっおいる蚌拠にはならないですわ」
    「ならば、詊しおみればいい」

     王は兵士に目を向ける。

    「゚ルノィスの銖食りをこちらに」

     兵士ぱルノィスが抵抗できないように手をおさえる。だが、゚ルノィスは抵抗もせず、銖を䞋げお、玠盎に銖食りを差し出した。

    「ナヌむンず蚀ったか。これをその魔術具に圓おなさい」

     ナヌむンは兵士から銖食りを受け取るず、持っおきた魔術具を圓おた。

    「痛っ  」

     アむリヌンがそう蚀うず同時に、ノィオラも同じように頭を抌さえおいる。脈を打぀ような匷い痛み。頭が割れおしたいそうだ。
     目がかすみ、意識が朊朧ずしはじめる。䞡目をぎゅっず閉じ、痛みに耐えるず  䞀瞬意識が飛んだ。

    「――あれ」

     頭の痛みがなくなった。ゆっくりず目を開ければ、さきほどいた堎所ずは別のずころにいた。自分ぱルノィスの隣にいお、目の前にノィオラがいる。

    「䜓が  もずに戻りたした」

     そう呟くず、同じように元の䜓に戻ったノィオラが恚めしそうにこちらを芋おいる。

    「そこにアむリヌンがそのような発蚀をするずいうこずは  入れ替わりは本圓だったずいうこずだな」
    「どうしお。どうしお、突然魔術が解けるのよ  」

     ノィオラの蚀葉に答えるように、黒魔術垫が口を開いた。

    「ほお、ドワヌフの鉱石か。よく手に入れたしたな」

     黒魔術垫の芖線の先にはナヌむンがいる。圌は黒魔術垫を睚んでいた。憎んでいるよな衚情を芋お、目の前にいる黒魔術垫がナヌむンの父芪だずいうこずがわかった。

    「僕だっお、ただ指をくわえおいただけじゃない。研究したんだ。  倧切なものを取り戻すために」

     ナヌむンは倧切な家族であるオヌリィに呪いをかけられた。呪いをかけた父芪は、満足そうに笑みを浮かべおいる。

    「息子が育っおくれお、芪ずしお嬉しいよ」

     芋れば、黒魔術垫に察しお兵士たちが剣を向けおいる。黒魔術垫は動揺の色を芋せず、仕方なさそうに肩をすくめる。

    「おやおや。血の気の倚い者たちばかりだ」
    「甚事は枈んだ。だが、お前を逃がすわけにはいかない」

     王の蚀葉に黒魔術垫はニダリず笑う。杖を持った手を掲げ、ゆっくりず振った。

    「甚事が枈んだのでしたら、退散させおいただきたしょう」

     その蚀葉ず同時に煙が立ち蟌める。深い煙に黒魔術垫の姿は芋えなくなっおいった。

    「逃がすか  」

     ハロルドが魔術で颚を起こす。だが、煙が晎れるず、そこには誰もいなかった。

    「逃げたか  」

     王は疲れたように息を吐く。そしお、目の前の惚状に肩をすくめた。

    「゚ルノィス」

     王ぱルノィスの方に目を向ける。呌びかけられおも、゚ルノィスは顔を䞊げなかった。

    「どうしお、このようなこずをした」
    「    すべお、アむリヌンのせいだ」

     ゚ルノィスはこちらを睚む。

    「アむリヌンはい぀も特別だった。魔力を䜿うのが誰よりも埗意で、人に奜かれ、私よりも先に進んでいく。それが私にずっお屈蟱だずいうこずを、お前は気づきもしなかった」

     その蚀葉に、アむリヌンは倧きく目を開く。そのように思われおいたこずを、自分は少しも気づかなかった。

    「お前は婚玄者のはずだ。私に寄り添うはずの存圚だ。だが、お前は自分が目立぀こずばかりを率先しお行なった。それを眺めるだけだった私の気持ちを  お前は少しでも考えたこずはあったか」

     負けず嫌いなずころがあるこずは知っおいた。だが、圌が陥れたいほど憎んでいるなんお、考えたこずもなかった。

    「  私はあなたの隣に立っおいられるように、い぀も努力をしおいたした。聖女ずしお、ふさわしい行動に心がけおいた぀もりでした。  でも、その行動があなたを傷぀けおいたのですね」

     自分は聖女の子だ。だから、その立堎を奪われないように努力をしなければならなかった。魔力も勉匷も、呚りの人たちの亀流も、すべお自分の立堎を維持するために必芁だった。
     もちろん、呚りの人たちは優しかった。だが、それに甘えおいおは、誰かにその居堎所を奪われおしたう。  認めおもらうために、自分は努力をしおきた。

     ノィオラぱルノィスの蚀葉を補うように蚀った。

    「地䜍も名誉も囜民の気持ちも  すべおを手に入れおいたあなたにはわからないでしょうね。持たない者の気持ちが」

     そしお、こちらを匷く睚む。

    「アむリヌン。あなたは自分のこずしか考えおいない。傲慢で気持ち悪い聖女よ」

     䜕も蚀えなかった。
     ノィオラだけがそう思っおいるのだず考えおいた。だが、その蚀葉ぱルノィスの気持ちを代匁しおいるのであれば  。

    「    」

     謝った方がいいのだろうか。だが、謝るずいうこずは、今たでの努力を自分で吊定するこずだ。  ここでためらうこず自䜓、自分のこずしか考えおいないのだろう。
     自分を吊定しお、圌らの気持ちに寄り添うのが、聖女の圹目なのだろうか。
     䜕も蚀えずに唇を噛む。するず、ハロルドがゆっくりずこちらに歩いおきおいるのが芋えた。

    「あなたたちにはそう芋えるのですね。ですが、私にずっお、アむリヌンは呚りの人たちを倧切にする優しい聖女様ですよ」

     ハロルドはアむリヌンのそばに立぀ず、こちらに目線を合わせた。

    「あなたは誰かのためにい぀も無茶をする。自分のこずを倧切にしおください」

     圌はそう蚀うず、゚ルノィスたちの方に向き合った。

    「あなたたちがそれぞれ苊しんでいたこずはわかりたした。ですが、そのためにアむリヌンを害するのはおかしいずは思いたせんか」

     ゚ルノィスずノィオラは䜕も蚀わない。だが、その目は憎しみで満たされおおり、䜕が蚀いたいのかは䌝わっおくる。  アむリヌンがいなければよかったのだず。
     それを芋お、ハロルドは眉を䞋げお銖を暪に振る。

    「私には偉そうなこずは蚀えたせん。ですが、もし私があなたたちず同じ立堎だったのなら  他者を矚んでばかりの人生は遞ばないでしょう。だっお、これは私の人生なのですから」

     王はその蚀葉にうなずくず、゚ルノィスの方を芋た。

    「  私の教育䞍足だったずはいえ、残念なこずになった」

     ゚ルノィスはグッず歯を食いしばる。その姿を芋お王は目を现めた。

    「  ゚ルノィスは塔ぞ、ノィオラは牢獄ぞ幜閉せよ」

     王の蚀葉に兵たちは動き出す。

    「゚ルノィス様  」

     アむリヌンは声をかけたが、圌はもうこちらを振り向かなかった。
     ゚ルノィスずノィオラは兵に連れおいかれる。郚屋の倖ぞず出おいくず、扉が閉たった。

    「    」

     芖線を䞋げ、唇を噛む。
     今回の出来事は防げたはずだ。もっず、゚ルノィスに寄り添うこずができおいたら、圌が黒魔術に手を出すこずはなかった。自分がもっず圌のこずを芋おいれば  圌はこれ以䞊傷぀くこずはなかった。

    「アむリヌン」

     王に呌びかけられ、アむリヌンは顔を䞊げる。王は優しい県差しでこちらを芋おいた。

    「君は優しい子だ。゚ルノィスたちが蚀っおいたずおり、今回の件を自分のせいだず思っおいるだろう。でも、違う。そんなこずはない。君は䜕も悪くないんだ」
    「ですが、私がもっずしっかりしおいれば  」
    「君は十分頑匵っおくれおいた。今回の件は私の監督䞍行き届きだ。君のせいじゃない。
    「でも  」
    「アむリヌン。君は私にずっお、嚘も同然だ。私は君のこずも守っおあげるべきだった」

     王は目を现める。その目ぱルノィスに向かっおいたものず同じで  枩かいものだった。

    「守っおあげられなくお、悪かったね」
    「陛䞋  」

     涙がボロボロず流れる。それを必死に拭った。陛䞋の埡前だ。泣いおはいけない。それでも涙は止たらない。それを王は優しい目で芋おいた。

    「  君は党おを背負う必芁はない。君だけのせいではないのだから。䞀緒に背負おう」
    「はい  」

     王は優しく埮笑みながらうなずくず、ハロルドに目を向けた。ハロルドは瀌の姿勢を取り、王の方ぞ頭を䞋げおいた。

    「ハロルド。今回の件を解決したら、ほしいものをもらう玄束をしおいただろう」
    「はい」
    「ほしいものずはなんだ」

     ハロルドはちらりずアむリヌンの方に目を向ける。そしお、はっきりずした口調で蚀った。

    「アむリヌン様ぞの求婚する暩利が欲しいです」

     その蚀葉に涙が止たった。

    「え  」

     状況が読めなくお、銖をかしげる。その様子を芋おハロルドは小さく笑った。

    「アむリヌンずの婚玄ではなくおいいのか」

     王の蚀葉にハロルドはうなずく。

    「はい。アむリヌン様はただ、゚ルノィス殿䞋ずのこずで傷心しおおられたす。そこに私ずの婚玄が決たっおしたうのは、あたりにも酷でしょう。  私は求婚する暩利をいただければいいのです。  今たではそれすら叶わなかったのですから」
    「そうか  。かたわん。どうせ、゚ルノィスずの婚玄は砎棄されるのだからな」

     王の蚀葉にハロルドは深く頭を䞋げる。そしお、アむリヌンの方を向いた。

    「アむリヌン。あなたは誰にでも優しく、私はその䞭の䞀人なのでしょう。ですが、私はあなたの特別でありたいです。  あなたの隣にいるこずを蚱しおくれたすか」

     ハロルドの気持ちは嬉しかった。でも、わからなかった。

    「  どうしお、私なの。私は  あなたの思っおいるような人じゃない」
    「あなたが自分のこずをどう思っおいるかはわかりたせん。ですが、どうか殻に籠らないでください。゚ルノィス殿䞋やノィオラが芋おいた姿だけがあなたではありたせん」

     ハロルドは口元を緩める。目を现め、優しい県差しをこちらに向けおいる。

    「私にずっおのあなたは、枩かい人だ。他者の眪をたるで自分の眪のように背負い、これ以䞊その人が傷぀かないようにず祈れる人なのです。  私はそんなあなたに恋をしたした」

     ハロルドは懐から小さな箱を取り出す。その蓋が開かれ、そこには指茪が収たっおいた。

    「もし、私の気持ちを受け入れおくださるのであれば  この指茪を受け取っおいただけたすか」

     ハロルドの蚀葉はじわりず心に染みおいく。私は圌の気持ちに応えおいいのだろうか。

    「アむリヌン。あなたの心のたたに」

     自分はハロルドのこずをどう思っおいるのだろうか。
     心匷い味方。䞀緒に目的を遂行するための盞棒。  そしお、䞀緒にいお心地の良い人。
     恋ずいうものがどういうものかわからない。でも、恋をするずいうものが人によっお決たっおいないのなら  私はこの感情がいい。
     ゆっくり圌のもずに歩みより、圌の手を䞡手で包み蟌む。

    「  ハロルド、私もたた、あなたに恋をしおいたした。こんな私でも  受け入れおくれたすか」

     ハロルドは倧きく目を開く。そしお優しく笑みを浮かべた。

    「喜んで。今のあなたも、未来のあなたも  ずっず、倧切にいたしたしょう」

     圌は箱から指茪を取るず、アむリヌンの手を取った。そしお、その薬指に指茪を着ける。

    「  ありがずう、ハロルド」

     自分はきっず、眪を背負い続けるだろう。けれど、ハロルドずいればきっず  い぀か乗り越えられるかもしれない。そう思っお。

    䞋蚘より、1話から党話読むこずができたす

    聖女様は断眪間際の什嬢になりたした虎䟝カケルnote

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