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転職のとき「全部いっぺんに変えない」ほうがよかった話

30歳で転職しました。損害保険会社から、IT業界へ。

ただ、担当になったのは保険業界向けの営業でした。

会社は変わった。立っている位置も変わった。保険を売る側から、保険会社にシステムを売る側へ。でも業界だけは、そのまま持っていったことになります。

これ、狙ってやったわけじゃないんです。たまたまそういう求人に当たっただけ。

でも後から、これがかなり効いていたと気づきました。


入る前にいちばん不安だったのは、IT業界のことを何も知らないことでした。

面接でも聞かれました。「IT業界は未経験だけど、大丈夫ですか」と。

そのとき言われたのが、これです。

「ITの知識は入社してからでいい。顧客理解があるなら大歓迎です」

半信半疑でした。慰められてるだけじゃないかと思っていた。

でも入ってみて、意味が分かりました。


前の会社で得た知識のうち、いちばん役に立ったのは商品知識でも業界動向でもありませんでした。

保険会社の営業担当者の、一日の仕事の流れです。

朝から何をして、どこで時間を取られて、どの作業が非効率で、何のためにやってるのか分からない業務がどれなのか。

それが体で分かっていた。

システムを提案する立場になったとき、これが決定的でした。お客さんが口に出さない「ここが面倒なんだよな」に、こっちから触れられる。

業界動向は調べれば分かります。でも「この帳票、誰も見てないのに毎朝作ってますよね」みたいな話は、外から調べても出てきません。


逆に、持っていけなかったものもありました。

前の会社では、とりあえず客先に行って、雑談して、関係をつくる、みたいな動き方をしていました。飛び込みに近い形も普通だった。

新しい会社では、これがまったく通用しませんでした。

そもそもアポがないと受付を突破できない。飛び込み営業という概念自体が存在しなかった。

同じ「法人営業」でも、動き方はこれだけ違う。

持っていけるものと、置いていくしかないものがある。行ってみるまで分かりませんでした。


その何年か後、今度は社内で異動しました。営業から経営企画へ。

このときは職種だけ変えて、会社も業界も、それまでに積んだ社内の信用も、全部そのまま残しました。

つまり2回とも、1回に1つか2つしか変えていない。

もし1回目で業界も職種も会社も全部変えていたら、たぶん選択肢はかなり狭まっていたと思います。評価してもらう材料が何もない状態になるので。

そして怖いのは、それでも進んでいただろうということ。

当時の私は「とりあえず転職したい」でした。条件が下がる話でも、たぶん決めてしまっていた。

逃げたい気持ちが強いと、選択そのものが雑になるんですよね。


だから、転職を考えはじめたときに最初にやるといいのは「何がしたいか」を考えることじゃなくて、自分が何を持っていて、そのうち何を持ち運べるのかを数えることだと思っています。

業界の知識。仕事の型。社内の信用。

このうち社内の信用だけは、転職すると完全にゼロになります。逆に言えば、社内で動く限りは残る。

数えてみると、思っていたより持っているものがありますよ。

この話をもう少し詳しく書いた記事はこちら
https://portable-career.com/keep-or-change-first/

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