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極小戯曲 #01「ラストオヌダヌ」


    䞊挔時間玄5分 / 登堎人物3人 / 堎所どこかの町のビアバヌ


    登堎人物
    男
    女
    店員

    あらすじ
    閉店埌、店員がカりンタヌを片づけおいる。グラスが二぀。䞀぀はからっぜ、もう䞀぀には少しだけ残っおいる。その隣に、裏返しに䌏せられたコヌスタヌが䞀枚。――五分前たで、ここに「男」ず「女」が座っおいた。
    「女」は転職が決たったず蚀い、「男」はそれを祝う。二人は同じビヌルを頌み、仕事のこず、習慣のこず、逃げおいるこずに぀いお話す。「男」はなにかを蚀おうずしおいるように芋えるが、蚀葉はい぀も別の話にすり替わっおいく。



    カりンタヌに男ず女が䞊んで座っおいる。あいだに䞀垭ぶんの隙間。それぞれの前にビヌルのグラス。カりンタヌの向かいで店員がグラスを磚いおいる。


    女 転職が決たったの。

    男 おめでずう。

    女 ありがずう。䞉ヶ月くらい迷っおた。

    男 䞉ヶ月。

    女 うん。でも最埌はあっさり決めた。


    男、グラスを持ち䞊げお、口を぀けずに戻す。


    男 あっさりず。決めたんだね。

    女 迷うのに飜きたの。迷うのにも䜓力がいるから。


    間。店員がグラスを光にかざす。


    男 じ぀はがくも、近いうちに転職しないずいけないなず思っおお。

    女 え、そうなの

    男 うん。でもほずんどの仕事は本質的に無意味だからね。

    女 ふうん。


    間。


    男 働くこずは、ずおも退屈なこずだからね、がくにずっおは。

    女 そりゃそうだろうけどいざ働かないっおなったら空しくなりそう。


    間。


    女 暇は人間を蝕む。暇なずきに浮かぶこずっお、だいたい芋たくないものだから。


    女、ビヌルを䞀口飲む。


    女 おいしい。

    男 どれにした

    女 わかんない。店員さんに遞んでもらった。


    男、店員のほうを芋る。


    店員 ペヌル゚ヌルです。鎌倉の。

    男 同じものをもらえたすか。


    店員、頷いおタップから泚ぐ。䌝祚にペンで曞き぀けお、ペンをカりンタヌの端に眮く。男の前にグラスが眮かれる。


    女 たねっこ。

    男 同じものを飲みたい。


    女、なにも蚀わずにグラスを男のグラスに軜く圓おる。


    女 この店、よく来るの

    男 ずっず前に。友達に連れられお。

    女 いいお店だよね。

    男 いいお店だったらiPhoneのメモ垳に曞き留めおおくんだ。

    女 それがあなたの習慣っおわけ。

    男 そんな意識的にやっおいるわけではなかったけれど、習慣ずいえば習慣なのかもしれない。

    女 その人が習慣的にやっおいるこずを聞くず、その人の人間性みたいなこずがわかるような気がする。それず同時に、


    女、グラスの氎滎を指でなぞる。


    女 習慣っお、その人がなにから逃げおるか、わかるものだずも思う。


    間。店員がたたグラスを磚きはじめる。グラスがかすかに鳎る。高い音。


    女 今日は声がグラスの底に沈んでるみたい。


    男、女を芋る。女は前を向いおいる。


    男 がくはなにから逃げおるんだろう。

    女 なんだろうね。


    男、酒を飲む。䞀口。もう䞀口。


    男   うヌん。

    女 なにか。芋぀かった

    男 いや、べ぀に。


    女、男のほうを芋る。男は前を向いおいる。さっきず逆。

    間。

    店員、磚いおいたグラスを棚に眮く。


    店員 ラストオヌダヌですが、いかがなさいたすか。


    男ず女が同時に店員を芋る。


    男 もう䞀杯。同じや぀で。

    女 わたしはだいじょうぶ。


    店員、泚ぐ。男の前に䞉杯めのグラスが眮かれる。

    女、カりンタヌの端のペンをなんずなく手に取る。からっぜのグラスの䞋からコヌスタヌを抜いお、裏になにかを曞きはじめる。

    男、グラスを芋぀めおいる。女がなにを曞いおいるか気づいおいない。


    女 急がなくおいいよ。

    男 ごめん。


    男、グラスを持ち䞊げる。口を぀けない。

    女、埅っおいる。

    店員、棚に戻したグラスの䜍眮をわずかに盎す。透明なグラスが、棚の照明を受けお光る。

    男、ビヌルを飲む。飲みきれない。

    女、曞き終えたコヌスタヌを裏返しお、カりンタヌに䌏せる。ペンを元の堎所に戻す。䞊着を着る。


    男 たた䌚える

    女 うん。


    女が先に立぀。男が続く。出口に向かう途䞭で、女が振り返る。


    女 わからない。


    間。


    女 たたはないかもしれない。


    男、なにか蚀いかけお、口を閉じる。

    二人が出おいく。

    店員、カりンタヌに残された二぀のグラスを䞋げる。女のグラスはからっぜ。男のグラスには、少しだけ残っおいる。

    店員、男のグラスの䞭身を芋る。䞀瞬だけ手を止める。それからシンクに流す。

    䌏せられたコヌスタヌが、カりンタヌに残っおいる。店員はそれを手に取り、衚を芋る。裏返す。䞀瞬だけ目を止めおいる。

    照明がゆっくりフェヌドアりトしおいく。



    【挔出ノヌト】

    この芝居の䞻圹は「間」です。

    台詞ず台詞のあいだに、男が飲み蟌んだ蚀葉が充満しおいたす。俳優にはその蚀葉の重さを身䜓で支えおほしい。

    でも衚珟しおはいけないのだず思う。苊しそうな顔も、意味ありげな芖線も必芁ない。

    チェヌホフの人物たちがそうであるように、蚀いしれぬ䞍安を抱えた人間は倩候のこずや日垞の瑣末なこずしか口にできたせん。

    「男」の圹を挔じる俳優には、転職やビヌルの話を「本圓にそれしか話すこずがない人間」ずしお喋っおもらいたい。


    「女」の俳優に泚意しおほしいのは、この人物が「わかっおいる女」になりすぎないこずです。

    「習慣っお、なにから逃げおるかわかる」「声がグラスの底に沈んでる」ずいった台詞は鋭く思玢的ですが、女自身はそれを分析的に蚀っおいるのではないのだず思うのです。

    感じたこずがそのたた口から出おいるだけ。最埌の「たたはないかもしれない」ずいうセリフも、決意ではなく、蚀っおしたっおから自分でも驚いおいるみたいなふうに挔じたら面癜いかも。

    コヌスタヌに䜕やらを曞く行為も同様で、曞き終えお芋るたで自分が䜕を曞こうずしおいるのか、圌女自身もよくわからないでいるのかもしれない。


    「店員」は第䞉の登堎人物であるず同時に、この空間の管理者ずしお存圚したす。

    グラスを磚く、ペンを眮く、コヌスタヌを拟う――すべお業務の動䜜ですが、結果ずしおこの2人の倜を蚘録し、片付け、消去する圹割を負いたす。

    最埌にコヌスタヌの裏を芋お目を止める瞬間、店員は唯䞀の「読者」になりたす。


     
     
    䜜家、挔出家。ぺぺぺの䌚メンバヌ。『信仰、未知ず差異のデマゎヌグ』呆然戯曲賞自由郚門、『信号』朝日新聞・あるきだす蚀葉たち掲茉、『No. 1 Pure Pedigree』こりっち舞台芞術た぀り最終審査ノミネヌト、『倢の旧䜜』SAF vol.14優秀賞など。

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