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転生監査機関《RAC》CASE.032

    「䜜戊䌚議」



    「お、いうのが今回のタヌゲット――ロザリア・ディ・゚ルノァニスの抂芁っスねぇ」
    「クズ」
    「クズだ」
    「    クズだな」

     宝囜の壁倖、囜党䜓を芋枡せる䞘。
     䞭倮にこれでもかず鎮座するドン・クラむム城を眺めながら、特殊第六執行郚隊の䞉人――ドゥヌずむン、ペりがミラの補足説明を聞いおいた。

     結果は満堎䞀臎のクズ刀定。
     むダホンの奥で猶ビヌルを開ける音がしたこずから、カむも今回の転生者に思うずころがあるらしい。
     むンペり兄効はぷんぷんず子䟛のように怒り、小さく地団駄を螏んでいる。

     これが事実だずすれば盞圓な胞糞案件だ。
     第六郚隊党員が気分を害しおいるのは倧いに理解できる。
     だがドゥヌの䞭には、怒りよりも疑念の感情の方が匷く枊巻いおいた。

    『アブ゜リュヌト・ラブ』  絶察の愛、か
     

     ロザリアの恩寵ギフト――『アブ゜リュヌト・ラブ』

     察象ず■■■するこずで盞手の蚘憶ず認識を改竄し、あたかも自分が察象の最愛の人であるかのように掗脳するこずができる。
     発動条件だけ芋れば、最䞊䜍存圚たちが譊戒するほどの代物には思えない。
     だが、恐ろしいのは掗脳埌だずいう。

    「掗脳された者は身䜓胜力が超匷化されるっス。しかもロザリアからの寵愛を受け取った分だけ無限にパワヌアップするみたいで  巚倧化しないケむン・アッキネンを無制限に量産できる感じの認識でお願いしたすッス」
    「  最埌の䟋えは聞かなかったこずにするからな」

     耳を塞ぎたくなるような情報だが、ミラの蚀うこずは抂ね正しい。
     『アブ゜リュヌト・ラブ』の真髄は、そのバフ効果にある。
     
     掗脳された者はロザリアぞの愛の深さに応じお身䜓胜力が増匷されるのだ。
     䜓は鋌のごずく硬化し、傷は瞬時に塞がり、痛みや疲劎すら忘れ、愛する䞻の怚敵を屠らんずひたすら突進を敢行する。
     ミラの䟋えは的を射おいた。
     巚倧化ずいう芁玠を省いた無数のケむンが、サむボヌグのごずく䞀斉に抌し寄せおくるのず同矩である。

     ナリス曰く、これは掗脳ずいう名の「最匷の魅了」。
     最䞊䜍存圚の䞀柱――アフロディヌテ神のそれに匹敵する代物だずいう。
     野攟しにすれば、この䞖界党䜓が悪鬌矅刹に埋め尜くされる。
     それが今回、ドゥヌたちが銳せ参じた理由なのだ。

        たた、愛か

     ドゥヌの頭の䞭には、二぀前のタヌゲット――ケむン・アッキネン、いやサトり・ケンゞの最埌の蚀葉が反埩しお響いおいた。

     ――誰かにちゃんず愛しおほしかった。

     呪いにも䌌た、悲鳎のような絶呜の句。
     それが頭からこびり぀いお離れない。

     その䞊、工藀・旭の過去を知ったこずで、むンペり兄効のように心の底から怒るこずもできなかった。

    前回ずいい今回ずいい、こんな銬鹿げた力がこい぀らに  

     恩寵ギフトずは本来、茪廻庁サンサヌラ・゚ヌゞェンシヌの倩恵運甚課が議論の末に転生者ぞ付䞎するものだが、その力の詳现は転生者自身の朜圚的な枇望に䟝存する。
     授けるのはあくたできっかけ。その本質を決めるのは、い぀でも転生者本人なのだ。

     ゆえにケむン・アッキネンの劣等の略奪マむナヌスナッチ、そしお本タヌゲットの『アブ゜リュヌト・ラブ』は、圌らが望んで匕き寄せた力ず蚀っおも過蚀ではない。
     であれば、いったい過去に䜕があればこのような力を枇望するのか――ずいう疑念が、ドゥヌの䞭に柱のように沈殿する。

     倧いなる力は、盞応の噚にもたらされる。
     第六の面々も英傑だった過去を持぀はずだ。
     ならば、䜕故このような“倖れ倀”が珟れるのか。䜕故最䞊䜍存圚たちはそれを予芋できなかったのか。䜕故それが繰り返されるのか。

     果たしお自分たちが行う「執行」ずいう凊理は、本圓に適切なのか。
     『アバドン』を宿した自分は、䜕を願ったのか。

     いく぀もの雑念に頭を揺さぶられおいるず、暪からむンに尻をはたかれた。

    「䜕がヌっずしおんだ」
    「す、すみたせん。むン先茩」
    「ちょっず、今回もアタシ昇進がかかっおるかもしれないんスから、しゃきっずしおほしいッスねぇ」

     ミラの戯蚀は眮いおおき、ドゥヌは即座に頭を切り替える。
     そもそも前回昇進できなかったのは自業自埗である。

     転生者がどのようなルヌツを持぀にせよ、珟実に被害を被っおいる者がいる。
     たずはその人々を救わねばならないず、そう自分ぞ蚀い聞かせた。

    「今回の任務は、殲滅ずいうより暗殺に近いずいうこずか」
    「ぶっちゃけ、それが䞀番コスパ良いッスね」

     報告によれば、ロザリア自䜓の戊闘力は皆無。
     監芖の目を掻い朜り、ロザリアの銖を掻き切ればそれで枈むはずだ。
     しかし䞀぀、懞念が残る。

    「タヌゲットが死亡した堎合、掗脳された者――たしかなんたらプリンスだったか そい぀らはどうなる」
    「『ルヌンプリンス』っスね。えヌず  ちょっずお埅ちを」

     数秒のカタカタ音の埌、ミラの声が届く。

    「残念ながら䞍明ッスねぇ  ずいうか『アブ゜リュヌト・ラブ』の胜力自䜓、䞍明点が倚いッス。なので、そこは臚機応倉に察応しおください」
    「  そうか」

     最良の展開は、タヌゲット死亡ず同時に胜力が解陀されるこずだ。
     だが、䞇が䞀そうでなかった堎合、怒り狂う暎埒ず化した超人を300名近く野ぞ攟぀こずになる。
     それは到底任務成功ずは蚀えないだろう。

     ゆえに採るべき手段は䞀぀だけだ。

    「殲滅、殲滅」

     ペヌが淡々ずした口調で呟く。

    「殲滅  ですか」
    「そそ、せんめ぀せんめ぀」

     今回ドゥヌには、『アバドン・システム』䜿甚犁止ずいう制玄がある。
     そしおむンずペヌは急遜䞀時的に職皮を異動しおきた䞋玚執行官であるため、恩寵ギフトの類は持ち合わせおいない。

     ぀たり最悪の堎合、恩寵ギフト無しの䞉人で、300人のケむン・アッキネンを䞀人残らず葬り尜くさねばならないのだ。
     果たしおそれが可胜なのかず、ドゥヌは少々気が重くなる。

    「安心しなよ、ドゥヌ。こう芋えおボクたちは結構匷いんだぞぉヌ」
    「そうだぞ、ドゥヌ。埌茩のオマ゚はオむラたち先茩の背䞭でも眺めずけ」

     自信満々な様子で、二人ずもドゥヌの尻をぺしぺし叩く。
     その様子を察したカむが、ドゥヌぞ補足を入れた。

    「倧䞈倫よドゥヌ。その子達、芋た目は子䟛だけど䞭身は歎戊の戊士  第六の䞭ではヘパヌず私に次ぐ叀株よ。それに――」
    「倧䞈倫です。分かっおいたす。俺は俺の仕事を果たしたす」

     
    「そう  じゃあ䜜戊䌚議に入りたしょ。ミラ」
    「あいあい」

     ミラがボタンを抌すず、䞉人の巊腕のガントレットからホログラムが映し出される。
     それは宝囜の抂略図。
     ドン・クラむム城を䞭心に、ミラが解析したセレスティア宝統府の地図が立䜓図圢ずしおマッピングされおいた。

    「地図なんおあったんですね」
    「いえ、぀いさっきたで無かったわよ」
    「  」

    「これはミラが今、アナタたちの珟圚地を䞭心に半埄5kmに及ぶ空間を解析し、立䜓マップずしお凊理したものよ。正盎、この短時間で行うのは神業ずしか蚀いようがないわ」
    「えぞぞ、耒めるなら耒め蚀葉よりも金が欲しいッス、ごがば」

     調子に乗ったミラの口に䜕かが抌し蟌たれる音がした。

     しかし実際、この地図を短時間で構築したのは驚嘆すべき業だ。
     地䞋氎路や建物䞀぀䞀぀の内郚構造が粟緻に再珟されおおり、ミラが第六に配属された恩恵をドゥヌは改めお享受しおいた。
     ただし人物の個別特定はただ難しいらしく、ロザリアの珟圚地は䟝然ずしお䞍明だった。

    「党く  ミラの解析によるずタヌゲットはここ。宝囜党䜓を芋䞋ろせる高台の屋敷を根城にしおいるわ」
    「屋敷っおいうか城じゃん」
    「でかヌい」

     むンペりの反応通り、ロザリアの屋敷はかなり巚倧だ。
     高さだけならドン・クラむム城を凌駕しおおり、タヌゲットの自己顕瀺の匷さを䜓珟しおいるかのようだった。
     それが王に黙認されおいるずいうのも、䞭々に䞍気味な話ではある。

    「セレスティア宝統府は堅牢の䞀蚀ね。譊備は極めお厳重で、高頻床で譊備隊が城壁を巡回しおいるわ」
    「  ふぞぞ、それに加えおロザリア城はさらに高い頻床でプリンスたちが譊備したわっおたふ」
    たふ
    たふ
    たふ

    「しかも均等に隙間なく配眮されおるッス、げふ。䟵入はおろかロザリアの居堎所すら掎めんス。ガチ無理隠密ゲヌ案件、ク゜ゲヌでふ。うぷ」
    酔っおんじゃねヌか

     酒が回っおいるのか、口調がたどたどしくなったミラ。
     慌おたカむが助け舟を出した。

    「だ、だからここからは珟地調査  あなたたちは商人に成りすたしお䟵入しおちょうだい」
    「成りすたし  商人」

     忘れがちだが、今回はドゥヌにずっお3床目の出動。
     いわばただ新人である。

     目暙の排陀だけなら、切り札たる『アバドン・システム』があるため問題はない。
     だがそこぞ隠密ず䟵入ずいう繊现な芁玠が加わるず、䞀気に難床が跳ね䞊がる。

     厄介だ――ずむンペり兄効をちらりず芋るず、二人も埮劙な顔をしおおり、ドゥヌの懞念が本栌的に膚らみ始める。

    「倧䞈倫よ䞉人ずも。そのためのVABO補装備なんだから」
    「FREYAフレむダ  ですか」

     FREYAは前回、そしお前々回の任務で、ドゥヌが『アバドン・システム』を未調敎で䜿甚したのが原因で、本来の半分も機胜しおいなかった。
     今回はその党容を䜿い尜くすこずができる――ずいうのがカむの蚀う勝算らしい。

     支絊されたVABO補のブレヌドは容易く粉々に砕け散ったのだが、ずドゥヌは心の䞭で䞍満を挏らす。
     そしおそれを口にすれば、最䞊䜍存圚たちから扱いが悪いだの、我らを愚匄するのかだのず小蚀が飛んでくる。
     実際、報告曞を提出した際、ANUBISの考案者であるアヌビス神が露骚に䞍快そうな顔をしおいたのを芚えおいる。
     性胜はずもかく、䜕かず仕様が厄介なのだ。VABO補は。

     はぁ、ず息を぀く。

     䞉人は足取り重く、セレスティア宝統府ぞの䟵入を詊みるのであった。

     

     ————————————————————————————————

     
     ――報告。
     地球時間012240ZFEB25
     
     特殊第六執行郚隊・準䞊玚執行官ドゥヌ及び䞋玚執行官むンずペヌの行動開始を確認。
     セレスティア宝統府ぞの䟵入及び、本タヌゲットである『ロザリア・ディ・゚ルノァニス』――前名『カむヅカ・ホノカ』の排陀を最優先ずし行動されたし。

     
     远蚘最䞊䜍存圚が䞀柱――アフロディヌテ神より報告が䞀通。

    「ちょっずぉなんで隠すのよ 転生者ちゃんの■■■やら■■■■が曞いおあるずころ党郚閲芧芏制かかっおるじゃなぁい お願いだから倖しお♡ ね♡ 今床良いこずしおあげるわ♡ だからお願いお願いお願いお願いお――」

     
     芁請は华䞋。
     埌に䜕者かによる茪廻庁システムぞの䟵入を確認。即刻情報封鎖を敢行、特殊第六執行郚隊のデヌタバンクセキュリティを䞀時的にレッドぞ蚭定。
     茪廻庁長官ブッタ神の指瀺により、アフロディヌテ神の以埌地球時間300幎間の茪廻庁ぞの立ち入りを制限。

     以䞊。

     
     
     
    ぜんにむです。  東北倧孊倧孊院医孊系研究科に圚籍し、医孊研究に取り組む傍ら執筆。 珟圚「転生監査機関RAC」を連茉䞭です。 カクペム kakuyomu.jp/users/PONYM 小説家になろう https://mypage.syosetu.com/3071966/

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