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Photo byciel_azzurro

小学生の私を連れて雨の図書館へ

    柊あきら

    小学生の時、好きだった国語の物語について投稿しました。

    その物語はタクシー運転手、松井さんシリーズであることを知り、ぜひ読んでみたいと思いました。

    まだ完治していない咳の薬をもらいに行く帰り、久しぶりに図書館へ寄ることに。

    思ったより病院が早く終わり、ワクワクした気持ちで図書館へ。

    病院にいた時から降り出した雨が、少し強くなってきました。

    図書館の入り口へ続く階段の両脇には、大きな桜の木が植えてあります。

    傘をさし、葉っぱの上にポツポツと落ちる雨音を聴きながら、ゆっくりと登っていく。

    人とは勝手なもので、いつもは憂鬱な雨が今日は心地良く感じます。

    大きな木製の自動ドアを抜けると、静寂な空間が広がり、本の森が迎えてくれます。

    そこで、ハッとしました。
    図書カードを忘れた事に気づいたのです。
    本を借りて、ゆっくり家で読もうと思っていたのに……

    雨のせいか、誰も来ていないようで、受付でパソコンを打つ音だけが、人の気配を感じさせます。

    ここでも落ち着いて読めそう、そう思いました。

    探すは、あまんきみこさんの本。
    児童図書の低い本棚の間を、虫を捕まえる時のような足取りで、腰を屈めながら探します。

    整理整頓された本棚から見つけるのは、この世で一番簡単な宝探しかもしれません。

    ありました、ありました。
    総集編も合わせると10冊くらい。

    迷わず「車のいろは空のいろ」を選び、大きな窓に向いた椅子に腰を下ろし、一呼吸置いてページを開きます。

    かすかに聞こえてくる雨だれの音が、物語の世界にすーっと連れて行ってくれました。

    途中、新聞を読んでいる、年配の男性の大くしゃみに驚かされましたが、またすぐに集中。

    物語の中に、怪談らしき話がありました。

    「すずかけ通り三丁目」

    他の物語は、動物などが出てくるのに、これだけは人です。

    戦争で子どもを失った母親が、命日にかつての家を訪れる、不思議で切ない物語でした。

    私は怪談が好きです。
    怪談はただ怖いだけでなく、切ない話も多いので、あまんきみこさんの物語に惹かれたのも偶然ではなかったのかもしれません。

    カードを忘れ、図書館で本を読むことになりましたが、日常から切り離された特別な時間を過ごせ、とても満たされました。

    夏休みが来る前に、また読みに行こうと思ってます。

    雨の日を選んで……

     
     
     
    今や絶滅危惧種な専業主婦が、創作の海へ飛び込み、エッセイやショートショートを書き始めました。 温かい目で見守っていただけると幸いです。 ひとりひとりのご縁を大切にしたいので、無理のないペースでフォローバックしております。 minneのお店もよろしくお願いします。

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