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入るまで知らなかった話⑬-⑧

    入るまで知らなかった話⑬-⑧

    新生寮で初めて感じた「もうすぐ出られる」という空気

    新生寮へ入って最初に感じたのは、工場とは空気がまるで違うということだった。

    まず、新生寮へ来るのは仮釈放予定者だけ。

    満期で出所する人は、新生寮には来ない。

    私が入った時にいたのは4人。

    一緒に新生寮へ来た人が1人、私が入った時には既に1週間ほど生活していた人が2人いた。

    部屋は空いている部屋の中から、自分で好きな部屋を選ぶことができた。

    工場では、新しく来た人がいても、なかなか話す機会は少ない。

    それぞれ作業があり、張り詰めた空気の中で生活しているからだ。

    でも、新生寮は違った。

    みんな仮釈放を目前に控え、気持ちにも余裕がある。

    新しく来た人がいても自然と歓迎ムードになり、

    「どこの工場やった?」

    「担当は誰やった?」

    そんな会話から始まり、すぐに打ち解けることができた。

    工場では同じ工場の人としか話す機会がなかった。

    だから新生寮へ来て初めて、他の工場の話を聞くことができた。

    「あの担当は厳しかった。」

    「あの工場は雰囲気が良かった。」

    「中心になってた奴がおってな。」

    「いじめられてた奴もおった。」

    同じ大阪拘置所の中でも、工場によって雰囲気は全く違う。

    それぞれの話を聞くのは本当に面白かった。

    食事は工場にいる受刑者と同じメニューだったが、食べる場所は新生寮のリビング。

    リビングには大きなテレビが一台置かれていて、自然とみんなが集まる場所になっていた。

    そして、私が一番嬉しかったことがある。

    工場にいた頃は、毎日どこか張り詰めた空気があった。

    職員と話をすることはあっても、それは仕事や指導の話が中心で、ゆっくり話すような雰囲気ではない。

    ところが新生寮へ入ると、お世話になった正担や職員が、わざわざ顔を出しに来てくれた。

    「お疲れ様。」

    「もう二度と戻ってくんなよ。」

    そんな最後の挨拶をしに来てくれたのだ。

    工場では厳しく接してくれていた正担や職員から、その言葉を掛けてもらえた時は、本当に嬉しかった。

    厳しかったからこそ、その一言には重みがあった。

    「ここまで来られたんやな。」

    そう実感した瞬間でもあった。

    新生寮で過ごした時間は長くはなかった。

    それでも、工場では感じることができなかった穏やかな空気と、人の温かさを初めて感じることができた時間だった。

     
     
     
    大阪拘置所で約4年を過ごし、その間に競馬を徹底的に研究。 回収率を重視した3連単フォーメーションや勝負レースの予想を発信しています。 また、大阪拘置所での生活や仮釈放制度など、実際に経験したこともnoteでお届けします。

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