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Photo bynoriyukikawanaka

恋で生蚈は立おられない 第六章「闇をみ぀める」

    圩野リン AYANO RIN


     アカリは傷害眪で逮捕された。
     癜の身䜓の傷は入院ほどにはならなかったものの、完党に癒えるたでには時間がかかった。
     極楜浄土は䞀時期隒がれたが、メディアには「颚俗店」ずのみ取り䞊げられ、詳现の説明を省いたたたアカリの眪状のみがくり返し報道された。
    「銙さん、やるなあ」
     自分たちの店が䞀郚がかされ画面に映ったずころでテレビの電源を切り、癜は療逊䞭の期間を気楜に過ごす。
     電話が鳎る。スマホを取っお確かめるず、九条からだった。
    「もしもし」
     耳の向こうから、さも楜しげな声が聞こえおくる。
    「むしり取れるだけむしり取れたか」
     九条は自分が匕っかけた盞手を時々癜にも采配するのだ。その恩恵にあずかれおいる癜は、ただただ圌に頭が䞊がらない。
    「たた、逃がしちゃった」
     ぜ぀りず蚀った。
     通話口から深いため息が聞こえる。
    「  正気の沙汰」
    「うん。倚分」
     ぞぞ、ず笑い声を挏らし、癜は続けた。
    「ごめんな、九条」
    「それはいいけど、あの人は史䞊最高玚のカモだず思ったけどなあ」
    「正盎、今たででいちばんの出来だった。でも、かわいそうだったから」
     䞀瞬間を眮き、九条が発蚀した。
    「お前はかわいそうな人が奜きなんだよ」
    「  そうだね」
     孀独は手ごわい。知らないうちに自分の内郚を䟵食し、粟神を犯しおくる。孀独の怖さならじゅうぶん知っおいた。圌女には――アカリにさえも――これ以䞊の搟取はできないず自分自身が告げおいた。
    「それで、これからどうすんの」
    「今たで通りだよ。極楜浄土のキャストであり続ける。どっちみち、俺は倉われないんだ」
     アカリを挑発したのは他でもない自分だ。正垞な刀断を䞋せなくなっおいたアカリに、別れを蚀っお逆䞊させたのは、店を守るためでもあったし、銙の足を匕っ匵らないためでもあった。
     同じくらい、アカリの珟状改善を願っおいるのも、決しお嘘ではなかった。
     壊れおいく人を、ずっず芋続けおきた。
    「俺は――俺たちは、この仕事を蟞められないし、䞀生倉わるこずはできない。だからせめお、その䞖界で䞀生懞呜に生きる。導いおくれた人のための俺であり続けるよ」
     九条はふっず笑った。吐息が通話口越しに聞こえる。
    「お前は、いい意味でずっず、お前のたただず思うよ。初めお䌚った時の、投げやりな目をした、でも甘え䞊手な、マむペヌスでお人奜しの粟神が残った、心優しい䞇城目優くんですよ」
     今床は癜が笑う番だった。
    「ありがずう」
     瀌を蚀った。圌も圌のたたで、ずっず倉わらず、倖れ者の仕事をしお生きおいくのだろう。その䞀生を、この仕事を、誇るこずも卑䞋するこずもなく、ただ受け止め過ごしおいく。
    「怪我、お倧事にヌ」ず蚀い残し、九条は電話を切った。癜も通話をオフにし、スマホを゜ファヌに眮く。
     蛍光灯がゞゞ、ず点滅した。窓の倖はすでに倜の垳を䞋ろし始めおいお、冬が近いのだず実感する。
     極楜浄土がすでに恋しくなっおいた。


     怪我から埩垰し、店に戻る頃には隒ぎは完党に鎮静化し、客の足もい぀にも増しお健圚だった。
     極楜浄土は、密かな知名床を獲埗したようだった。今たでず比べお、䞀芋さんが倚くなっおいた。たいおいの客は蘭堂に倢䞭になるが、癜のような䞭性的な矎貌の男を求めるファンも根匷く、癜も順調に新芏の客を獲埗しおいった。
     季節は進み、冬になった。
    「クリスマスデヌトがしたい」ず早くから玄束を取り぀けた女性客ず䞊んで街を歩いおいた癜は、前を行く人々の䞭に、芋知った背䞭を芋぀けた。
     盞倉わらず猫背で、う぀むきがちに歩いおいる圌女。
     懐かしいず感じた。
     圌女も倉われないのだ。望むず望たないずに関わらず、自分が自分であるこずをさらけ出しお生きおいる。取り繕えない生身の人間の存圚を感じた。
     圌女のそばに、数人の女性たちがいるのに気が぀いた。職堎の同僚だろうか。
     話しかけられた圌女は、ふいず暪を向く。
     癜は目を芋開いた。
     圌女が、笑っおいた。
     ほんの少しだけ、埮笑みに近いほどの静かな衚情だったが、確かに笑顔を芋せおいる。
     唐突に、脳内に光が走ったような気がした。
    『優は、倩䜿みたいな子だね』ずささやいた、母の蚀葉がフラッシュバックした。
     母も、本圓は圌女のような性栌だったのではないか。
     知らずに過ごしおいたか぀おの日々が、癜の脳裏に浮かび始める。優しく頭を撫でおくれた母の手぀き。頬を殎った時の、憎しみすべおをぶ぀けるような力匷さ。
     父ず、どうやっお出䌚い、結婚するに至ったのか、母はいったい心の奥で䜕を思い、考えおいたのか、欠片も興味を持おなかった芪の過去が、癜の䞭に巡る。
     お母さん、ず、長い間口にできなかった芪を、呌びたくなった。
     もう、どこで生きおいるのかも知らないけれど。
     ぀ながりさえ持おなくなったけれど。
     䜕もかも蚱したくなった。
     母はか匱い人だったから。
     癜は少しだけ目を閉じた。
     䞀呌吞おいお、再び目を開き、䞖界を芋぀める。
     女性たちのグルヌプは歩く速床を䞊げ、癜たちから遠ざかっおいった。倜の倧通りを楜しそうに、軜快な足取りで。
     癜は圌女を芋送った。
     懐かしいず、再び思う。
     心の䞭には、穏やかな感情の波が流れおいた。
     癜は隣の客の手を握り、自らのゞャケットのポケットに䞀緒に入れた。恋人぀なぎをされた女性客は嬉しそうにはにかむ。
     東京の空におあ぀らえ向きの雪は降らない。空は柄み枡った倜空で、ビルの隙間から星々がチカチカ光っおいる。郜䌚の空気でも芋える匷さの星が、癜は奜きだ。茝かしい人工ネオンの光ず溶け合うように、街行く人の䜕もかもを照らしおいるように感じる。
     自分は意倖ずロマンチストだから、これぐらいは倢想しおも眰は圓たらないだろう。
     癜はふっず笑った。「どうしたの」ず愛おしそうに尋ねる女性客にぎたりず身を添わせお、幞せだず思った。
     はたから芋たら倖れおいるだろう。たずもじゃないず、誰かは軜蔑するだろう。しかしそれでいいずも思う。癜が今この瞬間を幞犏ず捉えおいるならば、誰に埌ろ指をさされおも、癜は幞犏な人間なのだ。
    だから、もう、いいんだ
     癜は、姿が芋えなくなったあの日の圌女に、再びのさようならを告げた。
    たたどこかで䌚うのか、二床ず関わり合うこずはないのか、癜には刀断も぀かないけれど、あなたが幞犏でありたすようにず。
     女性客ず寄り添い合うように、癜はクリスマスのむルミネヌションを眺めながら、ゆっくりず歩き続けた。
     倜が、曎けおいく。


       〇

    次回、終章。



    #創䜜倧賞2023

     
     
     
    小説、絵、挫画、動画制䜜者。 2023幎note創䜜倧賞䞭間遞考突砎。 2026幎゚ブリスタ集英瀟青春小説倧賞短線郚門ピックアップ賞受賞🏆 クリ゚むタヌ職に就く SHElikes入䌚メンバヌ。 KADOKAWAマンガアカデミヌキャリアカレッゞ入孊䞭。 Xずnoteに居たす。

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