#010 私を取り戻す話

私は、数年前に地元を離れて地方の片田舎で教員をすることにした。非正規雇用ではあるが。
それ以前に地元でも非正規雇用で教員をしていたが、有難いことに最大任期が5年あり、任期途中の3年目での退職となった。

途中退職の理由は、地方に転勤となった恋人を追いかけての引っ越しである。
恋人以外知り合いも誰もいない土地に心機一転乗り込み、色々な活動を通して知り合いも増えた。

その中で唯一変わらなかったのが、恋人との関係だった。
端的に言えば、いつまでも結婚しようとしない恋人に発破をかけるため、押しかけて同棲を始めた。
それでも、彼は何も変わらなかった。
結婚願望は少しはあるらしい。子どももいつかはほしいらしい。
でも、私ではダメみたいだ。いつまでも結婚の話が出ない。
こちらから尋ねても、そのうち、とのらりくらりとかわされる。
それなら、なぜ私と交際しているのだろうか?
わからなくなってきた。

私は毎日、仕事を無理にでも定時に切り上げていつ帰ってくるかわからない恋人のために晩ご飯を作り続けた。
別に料理は好きではない。
ただ、健康に気をつけてほしくて、美味しいものを食べてほしくて、その一心で作った。

でも、それは大きなお世話だったみたいだ。
休日に私が疲れて、なぜいつも私が作らねばならないのか恋人に詰め寄った時、当て擦りはやめろと言われた。
誰も頼んでなんていないと。お前が作りたくて作ってるんだと。
私の善意は、ただ無碍にされただけだった。
ただ一言、労いの言葉がほしかっただけなのに。

私は、地元に戻る決心をした。
生憎仕事があるので、今すぐではない。
年度末をもって、今の自治体を退職して、元の生活に戻るだけ。
私の限界に向き合ってくれず、お互いの価値観を擦り合わせられない人と、ずっと一緒にいられる自信がなくなってしまった。
善意を踏み躙られ、傷つくなら一人の方がいい。

誰かに大事にされることを待つ前に、まず私が私を大事にすることにした。
私は、私を取り戻す。

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