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「おかあさん」って呼ばせていたのに「ママ」になった話

上の子が小さい頃の話。

私はママって柄じゃあないので、子どもの前では自分のことは「おかあさん」だよーと言ってた。
そのうち、1歳すぎになって娘がしゃべり始めた。
私のことは「たーたん(おかあさん)」と言ってくれた。
めっちゃ可愛かった。

もう少し大きくなると「おかしゃん」
もっと大きくなると「おかあさん」とはっきり言ってくれるようになった。
子ども独特の舌足らずな発音で「おかあさん」と言ってくれる娘がとても可愛かった。

「おかあさん」
「おかーさん!」
「おかあさああんん」

本当に、可愛かった。



そんなある日、事件がおこった。

娘が3歳か、4歳のころだったと思う。

突然、娘から
「わたしもみんなみたいに『ママ』って呼びたい」
と言われたのだ。

当時、娘は保育園に通っていた。
そこでは確かにみんな、お母さんのことをママって呼んでいた。

そ、そんなことあるんだ……。


私は、二つの気持ちで揺れた。

一つ目は、娘がそう呼びたいならそう呼べばええやん、という気持ち。

二つ目は、娘が「おかあさん」ってもう呼んでくれないの寂しすぎるやん、という気持ち。

二つの気持ちが一瞬のうちにぎゅるぎゅるぎゅるっと回転して、前者が勝った。

娘の人生だもんな。
本人がそうしたいなら、好きなようにさせてあげないとな。


その日から、私は娘から「ママ」と呼ばれるようになった。

正直、おかあさんと呼んでもらえた、幼き頃の尊い思い出がなくなるみたいで寂しかった。

でも、娘はずっと「ママ」と呼ぶことに憧れがあったようで
「ママ♡」「ママ♡」と、すごく気持ちを込めたハート付きのママ♡で、それはそれは嬉しそうに私を呼んだ。

だから、それでいいんだと思った。

時々やっぱりさみしくて、未練がましく「時々は前みたいに『おかあさん』って言ってよ」と娘に言ってみたりした。
娘の中ではすっぱり切り替わったようで、それからはおかあさんと言ってくれることはなかった。


娘が小学生になり、参観の授業で作文を読んだ。
そこには家族のことが書かれており、私は「お母さん」として登場していた。

久しぶりに娘の口から「おかあさん」という音をきいて、私は胸がいっぱいになり、涙をぬぐうのに必死だった。

と、いうお話。

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