
卵巣嚢腫の既往がある私が、婚活で「言うか黙るか」に悩み続けた話
23歳のとき、卵巣嚢腫で手術を受けた。
卵巣の両側に大きな皮様嚢腫が見つかったのだ。
医師はMRIの画像をあれこれ見せてくれたが、現実味がなさすぎて、私は「はぁ…」というしかなかった。
手術前の説明で、医師から「卵巣を残せそうなら残すが、無理なら卵巣ごと切除する可能性があります。」と言われた。
どちらにするかはお腹を開いてから判断するということだった。
ここでも私は「はぁ…わかりました」というしかなかった。
術後、担当医からは「両側とも卵巣は残せたよ。妊娠できるよ」と告げられた。その言葉に安心しつつも、「あんなに引き伸ばされた卵巣の一部が残っていて、本当に大丈夫なんだろうか」と、素人なりにぼんやり考えていた。
いつか結婚したら、当然のようにこどもを産めると思ってた。
それほど私は若くて無知だった。
けれども自分が卵巣の手術を受けたことで、その前提は一度崩れた。
一部でも卵巣が残り機能していると知ってから、「産めるのならこどもを産みたい」という思いが静かに強くなっていった。
それから時は流れ、気が付けば30歳になっていた。
私はいよいよ本腰を入れて婚活を始めることになる。
そこで、最初につまずいたのがこれだった。
「卵巣嚢腫のこと、婚活相手に言うべき?」
言わない理由はいくらでも思いついた。
・今は完治している
・日常生活に支障はない
・初対面で話すには重すぎる
・医者には妊娠できると言われている
・引かれたらどうしよう
一方で、言うべき理由も、同じくらいあった。
・将来子どもを望むなら無関係ではない
・後から知って不信感を持たれたくない
・「大事なことを隠した」と思われたくない
頭の中で天秤を何度も揺らしながら、結論はなかなか出なかった。
結局、私は「基本は言わない、でも関係が深まりそうなら伝える」という、なんとも曖昧なスタンスを取ることにした。
初回の食事。
2回目のデート。
そのたびに、
今日?
いや、まだ早いか。
と、心の中で自問自答する。
相手が優しそうだと「言った方がいいのかな」と思い、
盛り上がらないと「言わなくて正解だった」と思う。
感情と理性が、毎回シーソーゲームをしていた。
そんななか、ある人と、何度か会うようになった。
彼とは出会ったばかりとは思えないくらい話がはずんだ。
そのうちに結婚観や子どもの話題も自然に出るようになった。
その帰り道、私は決めた。
次に会うとき、話そう。
重くならないように。でも軽くしすぎないように。事実だけを、淡々と。
そう思って準備していたはずなのに、実際は気が重かった。
彼はとても気のいい人だったから、がっかりさせてしまうかもしれないと思うと、余計に怖くなった。
けれど嘘はつきたくなかったし、彼が去るなら仕方ない。
そうならそうで、それがお互いのためだと思うことにした。
そして次のデートの時、私は伝えた。
結果から言うと、その人はこう言った。
「そうなんだね。
健康でも授からない人もいるって聞くし、子供ができなければそれはそれで、自分たちが二人でいて楽しければそれでいいんじゃない?」
それだけだった。
あっさりしていた。
私が一人で何年もぐずぐず悩んできたことを、相手は数秒で受け止めた。
この人はそれでいいのか。
そうか。
なんだぁ。
よかった。
肩の力が抜けた。
なんだか笑えた。
私があれこれ悩んでいたことは、彼にとってはなんでもなかった。
そんなことある?と思ったけど、あった。
人生はふしぎ。
自分のとった行動が正しかったのかは、今でも分からない。
ただ、あのとき彼に話して良かったと思える今はある。
その日から、少しだけ楽になった。
そんな出来事だった。
読んでくれてありがとうございました。