
誰と働くか|⑩ それでも、働くことを好きでいたい
11年間勤めた会社を退職する日。
私は、泣かないと思っていた。
挨拶は緊張するけど、しっかり感謝を伝えて終わるんだなぁと。
そんなふうに思っていた。
でも、一人ひとりに挨拶をしていくうちに、
これまでの思い出が一気に蘇り、気づけば涙があふれた。
特に、厳しくも最後まで向き合ってくれた上司。
新卒で入社した頃から、総務担当ということもあり
関わりが多く、陰ながらたくさん支えてくれた先輩。
二人の顔を見た瞬間、それまで緊張感をもって挨拶していた気持ちが一気にほどけた。
悔しくて腹が立った日。
失敗して、自分の未熟さが嫌になった日。
思うようにいかなくて、涙を流した日。
全てが、当時は苦しかったはずなのに、すごく良い経験が出来たんだと、心から思えた瞬間だった。
だからこそ、退職の日に掛けてもらった言葉は、今でも忘れられない。
「本当に成長したね。」
「最初の頃と比べると、顔つきまで変わったよ。」
「大人の女性になったね。」
そう言ってもらえた時、自分では気づけなかった変化を、ずっと見てくれていた人たちはちゃんと見てくれていたんだと思った。
毎日を必死に過ごしていると、自分の成長はなかなか見えない。
でも、誰かはちゃんと見てくれている。
私は11年間で、仕事を覚えただけでなく、
人との向き合い方。
責任を持つこと。
信頼は、一日で築けるものではなく、毎日の積み重ねの先に生まれること。
そして、仕事は決して一人ではできないこと。
たくさんのことを教えてもらった。
もちろん、退職してから新しい環境で働き、改めて気づいたこともある。
会社が変われば、考え方も違う。
仕事の進め方も違う。
当たり前だと思っていたことが、当たり前ではないことも知った。
だからこそ、あの11年間がどれだけ恵まれた環境だったのかを、心から感じてる。
あの職場で出逢った人たちがいたから、私は仕事を嫌いにならずに済んだ。
あの頃の私だから、出逢った意味があるとさえ思う。
そして、人と働くことの温かさを知ることができた。
この作品を書きながら、何度も過去を振り返り、
あの頃は苦しかった出来事も、今ではどこか懐かしく、でもクスッと笑えるほど温かい思い出になっている。
きっと、一緒に乗り越えてくれた人たちがいたからだ。
働くことは、楽しいことばかりじゃない。
現在(いま)も、これから先も、悩む日や迷う日はある。
それでも私は、働くことを好きでいたい。
そのために、これからも大切にしたいこと
それは、
どんな仕事をするか。
どんな会社で働くか。
それももちろん大切。
でも、私が一番大切にしたいのは、
「誰と働くか」
私に教えてくれた答えだった。
あの11年間があったから、その先の場所でも素敵な出逢いに恵まれて、今の私がいる。
本当に、ありがとうございました。