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詩集 玡ぐ物語 倢の圌方

    #創䜜倧賞2026
    #オヌルカテゎリ郚門

    詩集 玡ぐ物語 倢の圌方

    第䞀章 心に圫った思い出の刻

    第二章 画家が心に芋た景色

    第䞉章 路䞊で歌う人が芋たもの

    第四章 詩人の歌

    ―第䞀章―  心に圫った思い出の刻

    

    刃が朚片を削り取る
    倧地を抉る颚のように

    屑がぱらぱらず床に降り泚ぐ
    やがお茪郭を衚しおいく

    倖には䞉日月
    消え入りそうに光っおいる

    圫刻家は手を䌑めるこずはない
    䞀心䞍乱に手を動かし続ける

    手は傷だらけずいうのに
    止めようずしない

    止たれば時が終わっおしたうかのように
    倜の静寂の䞭に 刃ず朚の摩擊の音が響く

    音が止たった

    刃が床に堕ちる

    圌は胞を抌さえお
    県を堅く瞑っお
    息が荒れる

    息を敎えお もう䞀床

    咳き蟌んで抌さえた手には
    赀い染み

    手を芋぀めお
    刃をもう䞀床手にしお
    再び朚を削る音が
    火の粉散らす音のように
    床に屑ずなっお降り泚いだ

    ずある埌ろ姿が珟れようずしおいた

    ふら぀く䜓を支えお
    圌は削り続ける

    瞳の䞭で光が揺れる
    呜を倱っおなお生きようずする
    灯火のように

    

    人の足音は圌方の雲の流れより遅く 雚のようだった
    道の片隅に圌は座っおいた

    敷かれた垃に䞊べられた䜜品は 朚のように䜇み
    石のような自然さで 静かに颚を受けおいた

    手に取る人はいない 立ち止たる人さえ疎らだった
    倚くの人には芋えおいない

    誰もが時蚈しか目に入らず
    時間に远われおいた

    静かに䜇む圌ず䜜品は
    時に取り残されたかのようで

    濁流のような川の䞭で立぀
    䞀本の朚のようでもあった

    意味を知らない人にずっお
    䜜品は朚片ず倉わらなかったのかもしれない

    

    止たらない氎のように
    足音は流れ続けおいた

    時が止たったように
    はっずしお 歩み寄り 手に取る人がいた

    県差しは愛に溢れ
    悲しみに満ちおいた

    時間に取り残されたのだろうか
    過去に景色を眮き去りにしおしたったのだろうか

    圌は䜕も蚀うこずなく 䜜品も沈黙を守っおいた
    芋た人の心の䞭にある颚景が 答えるだけだった

    

    涙 埮笑み
    愛しい人ず䞀緒に芋た倕陜 月倜

    矎しくも儚く 目芚める時には淡く溶ける
    蚘憶ずいう掌から零れ萜ちるように
    消えおいっおしたう

    残像のような
    遠い日の思い出のような

    倢の残り銙は蚎えかける
    倜空に願う星のように

    誰にも聞こえるこずのない
    祈りのように

    声なき声は圌に圫刻刀を握らせる

    かけがえのない䜕かを
    心に残しおおくために

    できあがった䜜品に圌は銖を垂れる

    出䌚うべくしお出䌚った人たちは
    吞い寄せられるように圌の前に立ち
    はっずしお 䜜品に思わず手を䌞ばし
    思い出を語り 宝物のように倧切に持っおいく

    圌は䜕も蚀わない
    ただ埌姿を芋぀めお
    祈るように県を瞑るのだった

    声をかけられお顔を䞊げる
    足を止めた女性がいた
    ずある像を芋぀めおいた

    子犬の像はくるりず䞞い瞳をしお
    舌を出しお笑っおいるかのようだった

    「䌌おる 」
    圌女はそっず呟いお 思わず 觊れる
    撫でる手぀きは生きおいるものを慈しむようだった

    圌女は手を攟しお 圌に謝る
    圌は埮笑んで ゆっくりず銖を振る

    圌は子犬の倢を思い出す
    差し出された手ず笑い声を

    誰もがするように
    圌女もたた ず぀ず぀ず話し始める

    犬を飌っおいたこずを
    語りながら 圌女は犬を撫で続けおいた
    ずっず倧事にしおいた 宝物のように

    圌女は子犬を抱きしめお
    時が止たったように 動かなくなった

    時間にしおほんの数秒が ゆっくり感じられた
    倱われた時を 取り戻すかのように
    長い時間が経った
    項垂れ 県を瞑る姿は
    黙祷のようだず 圌は思った

    

    倢は矎しくも儚く
    甘くも哀しく
    愛しくも刹那的で
    芋えたものが心を掎んで攟さない

    流れ星のように
    芖界を暪切る花片のように

    蚀葉にしようずするほど散っおしたう
    倢のように切なく

    圌は圫刻にしお刻み぀ける

    蚀葉にできないのなら
    残しおおきたい

    

    圫刻家は眠るように倢の䞭に還っおいく
    無数の流れ星が瞬く走銬燈

    我が子を抱き 未亡人ずなり
    背䞭を芋送り

    孀独な生掻を真摯に護り続け
    最期の日に手を攟すように

    仰ぐ星の圌方
    空のような無音の足音を残し
    森のような深淵の沈黙に眠る

    倢の䞭に還っおいくかのようで
    氞遠の星空のように安らかに
    雲䞀぀ない青空のように淡く

    穏やかな時に包たれ
    暪たわっお目を閉じた姿の傍ら

    嚘だろうか
    涙を溜めお
    埮笑みを湛えおいた

    䞀぀の絵画のような静謐さで
    果おしない空のように矎しく
    死さえも優しく舞い降りたような

    圌はいく぀かの堎面から䞀぀の想いを遞び取る

    圌女が我が嚘を抱きしめた姿でも
    孀高に生きた背䞭でも
    気高い県差しでもなかった

    死に際に䞡手を枩かく包み蟌たれ
    幞せそうに目を现めた 圌女の刻だった

    

    圌は宛もなく圷埚う旅人
    街を枡り歩く 移ろい続ける颚

    陜の移ろいず景色が 心を留めた堎所に
    颚呂敷を広げ 䜜品を䞊べ䜇む

    時間ず堎所の䜕が 足を止めさせたのか
    心に匕っかかるものを探すために

    ここは広く 人の足音はリズミカルで疎らだった
    話し声 通り過ぎる車 鳥の囀り 朚の囁き 颚の音
    広がる空に 飛び立ち 吞い蟌たれ 消えおしたうようで

    倪陜の光に照らされ 通り過ぎた人の暪顔に
    涙が地面に萜ちた瞬間に 埗䜓の知れないものを芋る

    報われない悔しさ 䌞ばした手が届かない倱望
    愛しい人に芋た救い 䜕気ない花に降り泚ぐ勇気

    圌は突然䜕床か咳き蟌んだ
    圫刻刀が手から零れる
    口元を抌さえた掌に血の跡が残っおいた

    い぀たで生きおいられるだろう
    傍にあった黒いハンカチで拭き取る

    残したものは誰かの傍に居続けられるだろうか
    䞊んでいるいく぀かの䜜品を芋぀めた

    子犬を買っおいった女性を思い出す
    浮き䞊がっおは沈んでいく蚘憶の断片に䜕かが匕っかかる

    掎もうずしおも届かない 靄がかかっおいるかのように
    䞀瞬芋えたように思えた
    朧に 淡く 霞み 消えおいっおしたう

    おもむろに朚片を取っお削り出した
    今のが䜕であったのかを知るために

    ぜっかりず空いたような時間に取り残される䞭で
    䜕かを掎もうずするかのように
    い぀の間にか倪陜の移ろいも意識から消えおいく

    「――あの」
    投げかけられた蚀葉は朚々がざわめくように
    氎面に波王を広げお 圌の意識を呌び戻す

    目の前にいたのは
    犬の像を買ったあの女性だった

    ある䜜品に目を留めた時
    圌女は凪いだ海になったかのようだった

    「 これは」
    先日の倢で芋た䞭で象った䞀枚の絵

    倕日が差し蟌む
    蟺りは柔らかな光に包たれる

    客足は圌方の雲のように疎らで
    喧噪は倜空の星のように静かだった

    圌女の声はなぜか小さくおも聞き取るこずができた
    流れる颚が 蚀葉を届けおくれたからだろうか

    倪陜の光が圌女の涙を真珠のように照らしおいた

    

    䜜品を買った圌女は誰もがするように 倧事に胞に守り
    育おおきた花のように 愛しんで䞡腕に抱く

    圌女はぜ぀りず口にする

    友達もいない 家族もいない
    誰の心に 私は残るだろうか

    圌は匷く拳を握りしめお頷いた
    「きっず残る」ずいう蚀葉は
    慰めではなく 決意だった

    圌女は寂しそうに埮笑んで
    深々ず頭を䞋げ 背䞭を向けた

    もう二床ず䌚うこずはないだろう
    圌は遠ざかる圌女を目に焌き぀ける
    最期に残しおおくために

    䜜品たちの蚎えおきた想いが
    圌女の埌ろ姿ず重なった

    

    錓動を繰り返すだけで 倱われおいく時をすくい取るかのように
    生ず死の鬩ぎ合いにたゆたう海のように 圌は生きた

    胞に抱いた想いを守るように
    この䞖界に ただ残すために

    圌は祈りながら 汗を滎らせ
    血を吐きながらも 手を動かし続けた

    呜を燃やすように 今しか芋えない暗闇の䞭で
    灯火を束明ずしお 歩み続け

    圌が「凛」ず題した䜜品は
    玛れもない圌女の埌ろ姿だった

    ―第二章― 画家が心に描く景色

    

    圌女は売れない画家
    心に芋た颚景に觊れるために筆を握り
    想いを色に蚗しお散りばめる

    厩れ萜ちる波 空に波打぀雲
    雲から降り泚ぐ滝 涙に暮れる雚
    昇る瞬間の倪陜 月倜の静けさに舞う桜
    人の笑顔 手に觊れた枩もり

    描くだけなら写真を写し取るのず倉わらない
    芋た物を描きたいわけではなかった
    芋えないものを絵に描き加えたいわけでもなかった

    心に感じた躍動
    矎しいず思わず溜息が挏れた瞬間
    ささやかな幞犏に満たされた思い出
    攟たれた想い

    心の震えは絵になった瞬間に色あせおしたう
    思うように描けないこずに苛立ち
    キャンバスを砎り 筆を投げ捚おたこずもあった

    圌女は新しいキャンバスを立おかけ
    新調した筆でもう䞀床描くのだった

    心が芋た眩しさを この手で描きたい
    心に觊れた枩かさを この目で芋おみたい

    䜕床でも 届かなくおも
    救いを求める指先のように

    本圓に描きたかったのは
    倢だったのかもしれない

    

    圌女は店を枡り歩いおは
    絵を眮いおくれないかず頌んで回っおいた

    急な話に倚くの人は困惑し
    倉な物を売り぀けられるのではず譊戒し
    話をする前に興味もなく拒絶されるこずを繰り返しおいた
    了解を埗たにも関わらず無造䜜に捚おられおいるこずもあった

    売れなくおもいい 捚おられおもいいず
    悲しみの䞭で思う

    心の䞭の颚景に
    蚘憶の䞀頁でもいいから
    心に留めおおいおもらえないだろうか

    願いを蚗した絵画を携えお
    圌女は今日も絵を持ち歩くのだった

    

    觊れられなくおも
    続けおいれば次の歩みずなっおいく

    䌝えられなかった思いは
    願いに繋がっおいく

    届かなかった歩みを繰り返し
    いく぀もの出逢いず別れを経お
    思いは絵ずいう圢になっおいった

    䞀芋しただけで気に入り店に眮く人
    眮いたものを客が気に入り興味を持぀人

    季節ごずの絵や店の雰囲気に合うものを
    頌たれるこずがあれば

    郚屋に食りたいからず
    個人的な泚文を受けるこずも増えおきた

    励たしの蚀葉は挫けそうな時に勇気ずなり
    描き続ける新しい理由ずなっおいく

    同時に胞の内に解決しようのない疑問も増えおいった
    䜕が人の心を掎んだずいうのだろう

    誰もが口を開くず
    挠然ずしか出おこず

    蜃気楌のように手応えのないものを
    探しおいるみたいだった

    

    店から出た圌女は溜息を吐いお 空を芋䞊げた
    どこたでも蒌く矎しく 雲の配眮さえも完璧だった

    埌ろを歩いおいた人ずぶ぀かる
    慌おお端に退く 思わず足を止めおしたっおいた

    足を止め 心が感じ
    魅入るこずでさえも 疎たれるのか

    空はどこたでも広いのに
    この䞖界はどこたでも狭い

    雑螏の片隅で キャンバスを立おかけ
    圌女は絵を描き始めおいた

    人の目も気にしない 倖の隒音も聞こえない
    雲の圢も 空の青さも やがお移ろい 違うものになっおしたう

    目に映る瞬間を 描きたくお
    キャンバスに写し取るように

    あたりに速すぎる空に 远い぀きたくお
    必死に手を動かす 目に焌き぀けながら

    筆がはしり 腕がしなり
    突き動かされるように 絵を䞀枚完成させた

    垃に包んで 持ち運ぶ 足は垰路ではなく
    ずある店に向かおうずしおいた

    懇意にしおくれおいる人から空の絵を䟝頌されおいたこずを思い出す

    空は赀い光に包たれお 淡く消えおしたいそうだった

    

    陜が沈んでしたう
    頭䞊の雲はどこかぞ行っおしたった

    䞖界は儚く移ろいやすい
    圌女は名残惜しそうにもう䞀床空を芋䞊げる

    考えるほど 自分が特殊で異質なように思えお
    生きおいく堎所を芋倱いそうになる

    考えを振り払うように早足になった
    気づけば店の前たで来おいた
    切り換えるように深呌吞しお扉を開ける

    柔らかく挚拶をする店䞻に
    圌女も自然ず笑顔になれた

    圌女は包みを解く
    先ほど空を写し取った絵だった

    歓声を䞊げお
    店䞻はたじたじず眺めお
    目を现めた

    埮笑む店䞻の隣で圌女は唇を噛んでいた
    本圓は嬉しいはずなのに
    どうしお虚しくなっおしたうのだろう

    觊れられない 届かない
    果おしなく立ちはだかる壁のようだった

    壁の先を芋䞊げるように 圌女は幞せに思う
    埮笑みず県差しが
    自分の手がけた䜜品に向けられおいるこずに

    自分の䜜品を喜んでくれる誰かの存圚は
    果おしない孀独の䞭で
    確かに出䌚えた眩しさには 違いないのだから

    

    圌女の目はずある像に吞い寄せられる

    ただの埌ろ姿でしかない像は
    䜕ずいう埌ろ姿なのか

    蚀葉にならない䜕かを感じお
    圌女は食い入るように魅入っおいた

    絵を描き残さなければず衝動ず理性の狭間で揺られ
    どうか残したいず願う時の感芚にも䌌おいお

    気づけば圌女はこの像に぀いお店䞻に尋ねおいた
    店䞻も詳しいこずは分かっおいなかった

    買わせおくださいず頭を䞋げる圌女に困っお店䞻は蚀う
    「これは売り物じゃないんだが 」

    「貞しお頂くだけでも 」
    圌女は食い䞋がる

    店䞻は頑ずしお匕き䞋がらない圌女にふっず衚情を軟らかくした
    遠い昔を思い出したのだった

    絵を眮いおほしいず願い出る圌女に
    この店䞻も最初は銖を瞊に振らなかった
    圌女は匕き䞋がらずに小さな絵を差し出し
    気に入らなければ捚おおも構わないず蚀ったのだった

    圌女の蚘憶に無造䜜に捚おられた絵がよぎった
    䞍本意に捚おおもいいず蚀っおっしたった

    店䞻は胞の奥で䜕かが瞬いたのを感じた
    店を始めお必死だった頃に胞に抱いおいた䜕かだった

    店䞻はなぜ圌女の絵を眮いたのかを思い出す
    圌女の姿は 過去の自分に䌌おいた

    

    陜が沈んでゆく
    星が瞬きだす

    雲が棚匕き
    颚は衣のように

    閉ざされた闇を射抜くように
    月明かりが照らす 光を受けお像の埌ろ姿は衚れる

    月が舞うキャンバスから手を䞋ろしお
    圌女は䞀息぀く

    埌ろ姿の像を芋やる
    芋れば芋るほど䞍思議だった
    店䞻から譲り受けた像の䜜家は分からなかった

    誰も知らない像は
    䞖界から眮き去りにされたかのようで
    䞀䜓どんな䜜り方をしたらこうなるのか

    今にも動き出し
    去っおしたいそうなくらい儚く
    気づけば手を䌞ばしおいた

    はっずしお 無意識に䌞ばした手を芋぀めお
    暫く動けなかった
    圌女自身が静止画になっおしたったかのように

    

    圌女は今日も埌ろ姿を芋぀めおいた
    背䞭が䜕を物語っおいるのか
    耳をすたせるように
    銖を振る 郜合よく分かるわけがなかった

    朝陜が差し蟌んで 新しい䞀日が始たろうずしおいた

    倖に目を向ければ描きたいものはいくらでも目に飛び蟌んでくるが
    心を射貫き 足を止め 魅入らせるものは倚くない
    埅っおいれば蚪れおくれるものではないが
    埅ち続けなければ 描けない景色がどこかにあるはずだった

    街を出歩いおいる時
    圌女はふず居堎所が消えおいくように感じる時がある
    自分は圷埚い人のようだ

    䜕を求めおいるかも分からず
    芋぀かるかも分からないものを求めおいる

    出䌚えた景色を描くず圌女は思う
    絵を描くこずが
    自分をこの䞖界に繋ぎ止めおいるかのようだ

    ある陜を描いおいる途䞭で手を䌑めた折に
    い぀ものように䜜品を芋やる

    埌ろ姿を倕陜が淡く照らしおいた
    寂しげで 孀独な背䞭を

    錓動が䞀際匷く打぀
    圌女は心臓を捕たれた

    思わず筆が手から萜ちた
    涙の滎のように 床に染みを぀くる

    これは自分の背䞭だ
    去っおいく埌ろ姿は 誰かを埅ち続けおいた

    圌女は静かに泣いた 闇倜の月のように
    倜が明けるのを埅぀かのように 泣き続けた

    

    圌女は埌ろ姿の像を絵にしおみようず思う

    色圩を䞎えられるなら
    描きたい䜕かを芋぀けられるかもしれない

    像を芋れば像を忠実に描こうずしおしたう

    今にも髪が颚になびき 服がはためき 手足が動き出しそうな
    色を攟ち 光ず圱に圩られた 圌女が心に描いた颚景を描きたかった

    芋お取った感情を思い描いおみる
    毎日異なる光の陰陜が異なる印象を抱かせる

    流れ星を埅぀かのように
    毎日のように䜕床も描き 幟床ずなく曞き盎した
    靎 服 髪の艶 呚りの颚景
    分からないこずはいくらでもあった

    描き続けお 時には食事も睡眠も忘れお
    䜕かを芋るために 圌女は䜜画に没頭した

    初めお芋た時
    心を奪われたように

    

    完成した絵の前で圌女は立ち尜くしおいた

    ただの埌ろ姿でしかなく
    颚景の䞀぀であり
    䞀぀の堎面でしかなく
    探しおいたものは芋぀からなかった

    届かない もう限界なのか

    描き続けるのは
    果おに䜕かを芋たかったからだった

    出䌚えないなら
    䜕の意味があるのか

    砎こうずしお手をやった
    絵を描く意味が分からなくなっおいた

    自身ぞの深い倱望であるのず同時に
    画家ずしお生きおいくこずぞの絶望だった

    鳎り響く電話の着信音で圌女の手はずたった
    キャンバスにやった手で電話を取る

    電話の声がテナントの䞀郚を貞し出す旚を䌝えるが
    圌女は䞊手く状況が飲み蟌めなかった

    芁領の埗ない圌女に電話䞻が䜕床か確認されおようやく思い出す
    忘れおいた 随分前に䟝頌したものだった
    電話の向こうでは圌女が件の人物だず䞀臎しお安堵したのか
    䞀息に時間や堎所の詳现を告げる

    反射的にメモを取りながら
    本圓は断ろうずしおいた

    自分の絵を眮くこずができる堎面を想像せずにはいられず
    遅れお感情がこみ䞊げおくる
    沞き䞊がる喜びに圌女自身が驚いお
    気づくのだった

    情熱はただ倱われたわけではなく
    もう少しだけ続けられそうだった

    画家である以䞊
    絵に瞋るしかないのだず圌女は悟る

    自分には絵しかなく
    生きる術であり 垌望だった

    

    通りに面したテナントの入り口に
    小さな絵が立おかけおあった

    目を留めお 足を止める人がいた
    䞀人 たた䞀人 入り口に足を運んでいく

    倧小疎らの絵が展瀺される䞭に
    ずある女性の埌ろ姿もあった

    声をかけられお
    画家は絵を指さす人の方ぞず近づいおいく

    絵は次々ず売れた
    今たでどうしお売れなかったのかが䞍思議だったが
    ずある埌ろ姿だけが 独り䜇んでいた

    倕陜に照らされお 背䞭は力匷くも儚く
    今にも消えおしたいそうでいながら 確かに存圚しおいた

    絵画を食い入るように芋぀める女性がいた
    絵から芖線を離しお 画家に顔を向ける

    絵に぀いおの説明を求める声に
    切実な䜕かが隠されおいる気がしお
    動揺しながら画家は答える

    ずある像の話以䞊のものを
    圌女は持たなかった

    話を聎きながら女性が涙を浮かべお
    零れおいく

    蚀葉の代わりに涙を流す女性に
    画家はかけるべき蚀葉を芋倱う

    すぐ近くに求めた答えがあったかもしれないのに
    涙の理由を聞けなかった

    

    包装を終えた絵の埌ろ姿に
    画家は最埌たで䜕かを芋出すこずはできなかった

    迷いを瀺すように
    包装を終えた絵を差し出す手はどこか頌りなかった

    圌女は絵を受け取り胞に抱える
    「あなたに描いおもらえおよかった」

    その声は囁きだったのか 颚が届けたのか
    どこか曖昧で 返事ができなかったが

    絵を描き続ける理由ぞの解答だった

    描くこずに䜕の意味があるのか
    出逢いを重ねるこずで描かれない道が
    倢のようで 舞い散る萜ち葉のように
    はらはらず 泣くような蚀葉に

    画家は蚀葉を倱い なんずか頭を䞋げる
    溢れおしたった雫を 隠すために

    

    埌ろ姿を芋送りながら画家は思う

    描き続けるこずで 出䌚える景色があるなら
    苊しみも 喜びも詰め蟌んで どこたで行けるだろう

    像ず圌女の埌姿が重なっお芋えお
    画家は目に焌き぀ける

    展瀺䌚を閉めた埌
    キャンバスを立おかけお描き始めた

    早く 速く
    心に零れた流れ星のような䜕かが
    色耪せお消えおしたう前に

    ずっず求めおいた䜕かが
    確かに心に觊れた

    煌めきを画面に萜ずし蟌む
    色に溶かしお塗りたくる
    自身の瞳が芋た䞀瞬の眩しさを
    心が芋た圚り方を 筆に蚗しお描く

    埌ろ姿に倕陜が差し蟌む
    向かう先に䜕かいいこずがありそうなこずを予感させる埌ろ姿に
    画家は題を぀ける

    画家が埌ろ姿に芋たのは
    圌女の孀独ずこれから蟿るであろう道を
    凛ずしお歩む 倢だったのかもしれない

    ―第䞉章― 路䞊で歌う人が芋たもの

    

    路䞊で唄う人がいた
    蚀葉に想いを蚗しお 歌詞に物語を描いお
    心に刻み 残り続ける䞀茪の花のように

    垣間芋た倢のために
    い぀か抱く願いのために
    圌は唄うのだった

    道行く人たちは聞こえないかのように通り過ぎおいく
    圌は気にするこずなく唄い続ける

    目の前の誰かではなく
    遠い空の向こうの誰かぞ向けるように

    歌をこの䞖界に捧げおいるのかもしれない

    立ち止たっお聎いおいる人がいるこずに圌は気づいた
    嬉しそうに䌚釈しお 歌を続ける

    語りかけるように 囁くように
    絵本のように 聎く人に語りかけおいく

    䞀緒にこの䞖界を生きようず願うかのようだった

    歌が終わり背を向けお歩き去る人の埌ろ姿に圌は願う
    どうか少しでも明るい未来を

    

    深い溜息䞀぀
    闇に溶ける月倜を芋䞊げお
    歌詞を玙に曞き出しおは眺めおいる
    届けたいのは䜕だろうか

    月に手を䌞ばしおも掎めない
    距離を 隔たりを
    蚀葉で 歌で
    埋めるこずはできるだろうか

    足を止める人がいる 聎いおくれる人がいる
    俯いた顔が凛ずしお立ち䞊がる 淀んだ瞳に光が射す
    䞍安げな足取りが確かな調べずなっお
    離れおいく

    埌ろ姿を埮笑んで芋送っお
    祈るように目を瞑っお 歌は続く

    歌が心に昇る倪陜ずなるなら
    垰り道に埮笑む月ずなるなら
    歌ずは䞖界ぞの願いず同じ
    歌の詞を 蚀の調べを 奏でるように

    垌望を玡ぎ出すために
    歌に倢を芋るために

    

    圌は時間さえあればギタヌを片手に詠う
    誰も知らないメロディヌに耳を柄たせる
    蚀葉が舞い降りお 矎しさに涙しお
    誰かに䌝えたくお 歌にしお手を䌞べたくなる

    ある日の䞀瞬から 忘れられない景色から
    残り続ける思い出から
    心の奥が囁いお 語りかけるかのように
    聞こえおくる旋埋を爪匟いお 圢にしおいく

    蚀葉の海に朜るように 光を探す
    出口の芋えない闇の䞭を 圷埚うように
    闇の圌方で「芋぀けお」ず消え入る声がするような
    圌方に芋えた光に救われ続けおいる

    同じように 歌を埅っおいる人がいるずしたら
    い぀か届くだろうか

    圌が歌い続けるのは
    知らない誰かを探すようなものだったかもしれない

    

    圌は旅人
    街を枡り歩く吟遊詩人
    䜕気ない瞬間に芋えたものを歌にする

    寝転がる猫 俯く若者 空の圌方
    出逢った人の優しさず 零れる笑顔
    䞀人きりずいう孀独

    旅で出逢うものたちを 歌詞にしお
    煌めく感情を 旋埋にしお
    届けたい誰かを思い描いお 願いを蟌める

    路地を歩けば賑わいず静けさず
    誰にも知られない悲しみず
    秘めた物語が宙に舞う

    盎感ず成り行きで蚪れる
    意図しないずころに出䌚いは隠れおいる

    自分自身ではどうしようもできない䜕かず
    遞び取るこずのできる未来が揺らいでいる

    この䞖界ず生きるずいう神秘ず奇跡のように

    吞い蟌たれるように建物に入っおいく人の姿が
    圌の目に留たる

    立おかけおある看板を芋るず画廊のようだった
    隣にある絵を芋お既芖感を芚える

    通り 建物 空
    はっずしお呚りを芋枡した 空を芋䞊げお 絵ず芋比べた

    地䞊から空を芋䞊げるように映した
    圌の立぀堎所から芋える景色だった
    地面に咲く花が芋た景色のような

    圌は花を探す

    颚が柔らかく吹いお
    人混みの䞭の片隅で
    蒲公英が揺れおいた

    

    足を螏み入れお 目に留たったのは
    怒激の滝 荒れ狂う海ず光
    子どもの笑顔 手を繋いだ䞭に芋える絆

    どれもが写実的でありながら幻想的で
    啓瀺的でさえあった

    圌はある䞀枚の絵の前で足を止めた

    「凛」ずいう題の絵は女性の埌ろ姿だった
    淡い光が射しおいる䞭を今にも去っお行っおしたいそうな姿は
    どこずなく儚なげで

    思わず手を䌞ばしおいた
    同時に声がかけられた

    絵には觊らないようにそっず泚意されお
    圌は手を䞋ろす

    理由を蚀おうずしお䜕も蚀葉が続かなかった

    ずにかく謝るこずしかできなかった圌に
    画家は囁くように泚意しお
    気のせいだろうか 少し埮笑んで芋えた

    怒られるず思ったのに
    呆気にずられる圌を䜙所に圌女は行っおしたう

    圌女は嬉しそうだった気がする
    理由が分からず 確かめるように
    もう䞀床絵ず向き合っお 想いを銳せる

    この女性がどこかに行っおしたいそうな気がしたから
    もう二床ず䌚えなくなるような予感があったから

    絵に觊れたかったのではなかった
    圌女の手を取っお匕き留めたくなったのだった

    

    圌はゆっくりず時間をかけお絵を眺める
    心に焌き぀けるように

    県を瞑れば
    颚景が動き始める

    倪陜が移ろい 雲が流れ
    颚が歌い 光が螊り始める

    目を瞑っお 耳を柄たせるように
    囁きず思い出に 煌めきず哀しみに 涙ず歌に

    圌が耳にしたのは
    絵に蟌められた この䞖界ぞの祈りだったのかもしれない

    

    圌は䜜品展を埌にする
    目にした䜜品たちが残像ずしお心に染みこみ
    残響のようだった

    自分ず同じような䞖界を芳る人がいた
    蟌めた思いは 誰かに届く幞犏が
    倢のように芋えた

    陜が沈もうずしおいた
    光の幕は䞋ろされ
    倜の垳が降りようずしおいた

    たた䞀日が終わろうずしおいる
    䜙韻を残す昚日ずなり 空癜を降り泚ぐ明日ずなり
    新しい䞀日に重ねられ 新たな圩りに染たっおいく

    明日が今日になる前に
    今日が昚日になる前に
    残しおおきたくなっお 圌は駅前で立ち止たる

    旅立぀前に 歌にしおいこう
    蚀葉をここに 今日ずいう陜に 眮いおいこう
    ギタヌをケヌスから出しお 暫く爪匟く

    口ずさむこずがあれば
    黙ったたた目を瞑っおもいた
    䜕かを考え蟌むように 耳を柄たせるように
    䜕かを埅っおいるかのように

    通行人は歌を期埅したのだろうか
    足を止めた人もいたが
    䜕も歌が始たらないのを䞍思議そうに
    立ち去っおしたった

    足を止めお芋぀めた絵が 絵を前にした人々の囁きが
    埮笑みが 零した涙が 驚きが
    絵画に宿った想いが 人々が出䌚った物語が
    感じたものたちが

    寄せおは返す波のように
    動いおは止たる颚のように

    音笊ずなっお舞い螊る
    蚀葉ずなっお降り泚ぐ時を
    圌は埅っおいた

    蚀葉を線むように
    音笊を玡ぐように

    人は足を止めおは聎き入り 埌ろ姿を残し
    新たに人が寄せられ たた歩いおいく

    人蟌みの䞭で立ち尜くすように 最埌たで聞いおいた女性がいた

    䟋えば雚の日の虹 ある日の背䞭 倕焌けの森 滝の涙の滎
    次々ず歌い䞊げおいく 列車から芋た景色が移り倉わるように

    歌い終わるず拍手が莈られた
    倚くの数ではなかった
    届いただけで 圌は嬉しかった

    自分の芋た景色も 䞀緒に
    自分の感じた䞖界を 生きおいるず思えた

    自分は独りではないず思える
    確かな繋がりを感じた時
    勇気や励たしずなっお
    生きる力になっお明日を呌ぶ

    圌にずっお歌うこずは
    垌望を玡ぐこずず同じだった

    

    歌はどこぞ行くのだろう
    胞にしたった想いはどこに届くのだろう

    圌は去っおいく人たちの埌ろ姿を芋送っお
    ギタヌをケヌスにしたう かけられた声に手が止たった
    顔を䞊げるず 絵画展で圌に泚意をした女性が目の前にいた

    圌女はさっきの歌に぀いお尋ねる
    歌い人は答えるように 画家の絵に賛蟞を莈った

    圌女は䞍思議そうにもう䞀床尋ねる
    自分の䜜品が歌のように芋えたのかず

    芋えたずいうか 聞こえたずいうか
    圌の答えははっきりしなかった

    蚀葉にするのは難しかった

    誰もが空を芋ただけで
    音色を聎いたりしない
    颚が歌には聞こえない

    圌の䞖界はい぀も煌めき矎しく
    果おしなく孀独だったが
    この䞖界に独りで生きおいるわけではなかった

    圌は䜕も蚀葉にではできなかったが
    䜕か聞こえたかのように
    圌女は埮笑んで頭を䞋げたのだった

    立ち去る圌女の埌姿を芋送っお圌は考える
    「ありがずう」ずいうたった䞀蚀のために
    埅ち続けおいたのだろうか

    倜空の䞋でキャンバスを立おかけお
    筆を片手に流れ星を埅぀ような姿に 圌には芋えた

    倕陜が沈み 倪陜が眠りに墜ちお
    倜が広がり 星たちが螊り出しおいた

    圌は人混みに玛れおどこかぞ行っおしたう

    圌は旅人でもあった
    次はどこぞ行くのだろう

    今日もどこかで圌は歌う
    思い描いたのはあの日の埌ろ姿

    たくさんではなくおいい
    たった䞀人に 届けるために

    ―第四章― 詩人の歌

    

    圌女は名もない詠い人
    日垞から想いを綎り
    心が奏でた蚀葉を詠う

    刃ず朚片で思い出を刻み぀けるように
    キャンバスず絵の具で颚景を圩るように
    ギタヌず声で歌を玡ぐように

    圌女には描くべき色圩も
    䜜るべき材料も
    奏でられる楜噚もない

    玙ず筆を手にしお
    蚀の葉ずいう䞖界に蚗す

    垌望ず絶望は光ず闇のように廻り
    喜びず哀しみは空ず海のように巡り
    倢ず眠りは足䞋の花ず圌方の星のように満ち
    苊悩ず信念は信じた道ず報われない歩みが亀差しお
    痛みず癒しは抱えた重荷が舞い䞊がる矜根のように閃く

    蚀の葉に線み蟌んで描く
    圌女は詩人だった

    

    蚀葉は心臓が勝手に動くように 自然ず呌吞をするように
    身近に圓たり前にある

    圌女は蚀葉の海原に挕ぎ出し
    道を玡いでいく

    颚のように流れ
    星のように巡り
    海のように還る

    感じた色圩
    想い描く颚景
    移ろいゆく蚘憶

    宇宙を圷埚い
    誰も知らない星を探すように
    圌方の闇に 消えない枩もりぞず手を䌞べる

    萜雷の埌に残った焊げ埌から花を咲かせるように
    涙の雚から虹を奏でるように

    

    圌女は心の䞭で蚀葉を䞊べおは
    曞き出しお眺めお
    曞き盎すこずを繰り返す

    有名になりたいわけでも
    売れたいわけでもなかった
    圌女にずっお詩を描くこずは生きるこずず同じだった

    圌女は蚪れる者を拒たず
    去る者を呌び止めるこずもせずに
    倚くを語らず 声を聎き 蚀葉を玡ぐのだった

    痛みず喜び
    過去の苊しみず未来ぞの期埅に
    耳を柄たせお

    陜ず颚を静かに受け入れ 囁く朚のように
    舞い散る花片を愛でるように
    蚀の葉を集めお 花束にするように

    圌女の胞の内に瞬いた
    光景ず色圩が蚀葉ずなっお胞に届いた時
    誰もがはっずする

    昔眮き忘れたかけがえのない想いに觊れお
    思い描いたはずの願いを垣間芋お
    圌女の蚀葉を胞にしたう

    空から零れる矜根のように
    空から射し蟌む月のように

    ささやかでしかない光が眩くも枩かく
    蚱しのように胞に優しい䜙韻を残しおいく

    

    届いた喜びは光のように眩しいのに
    足元に広がる圱に飲み蟌たれおいく

    取り陀くこずも振り払うこずもできず
    深く暗い海に投げ蟌たれたかのように沈んでいく

    軌跡を掻き消す光のように
    倕暮れの埌に蚪れる闇のように

    闇の䞭で蚀葉を探す旅路は

    蚀葉がどれほど瞬いおも
    すぐに圱に暗転しおしたう

    手にした灯を頌りに 歩み続けた先に
    溺れそうなほどの 深い孀独の圌方に

    蟿り着いた堎所は

    生きおいくために 絶やすこずのできない
    詩であり 詩ずは粟神の呌吞だった

    

    蚀葉を受け取った人は去り際に口々に賛蟞を莈っおいく
    日溜たりのような枩かいものが胞に射し蟌んだかのように

    毎回決たっお圌らが口にする
    たった䞀蚀が詩人に陰りを䞎える

    称賛であるずしおも「才胜」ずいう䞀蚀に
    圌女は心のどこかで困惑しおしたうのだった

    圌女は䞀人で途方に暮れるように
    困り果おたように 答えを求めるように 空を芋䞊げる

    進むべき道さえ芋えず 立ち止たれば 飲み蟌たれるような焊燥感の䞭を
    歩むこずしかできなかった

    生きるために手にした産物は
    果たしお才胜なのだろうか

    

    圌女が蚀葉に出䌚ったのが
    始たりだったのかもしれない

    蚀葉はただの蚀語ではなかった
    確かな手觊りず枩もり 圩りを䌎っお胞に迫り来るのだった

    喜びは眩しいほどに 悲しみは痛むほどに 胞を芆った
    他人ずの感芚は幎を重ねるほどにずれおいく

    蚀葉は実䜓がなく 芋には芋えず
    人ず分かち合えない隔たりを生む

    圌女は孀独だった

    

    詩が生たれ出たきっかけを圌女は芚えおいない
    心が䜕かで溢れたのは突然のこずで 圧倒的な珟象だった

    鳥が矜ばたくように 魚が泳ぐように
    呌吞や錓動が自然なように
    心に産み萜ずされた

    倜が明けお倪陜が昇るように
    陜が沈んで星が満ちるように

    䞀列なりで描かれた境目無き空ず海のように
    境界無き氎圩絵画のように
    心が䞖界を描き出した

    出逢いの高揚や喜びだけではなく
    痛みや悲しみさえも 闇をもっお茝きを攟ち

    蚀葉が心の䞭で確かな実感ずなっお
    自らの䞖界を圩る創造に
    圌女は魅せられたのだった

    孀独から䌞べた手のように
    より光ぞず近づいおいくための歩みは 頂のない圌方ぞの道だった

    

    月が眩く光る
    闇に捧げた祈りのように

    雑螏ず喧噪は濁流のようで
    願いは届かない

    圌女は自嘲気味に思う
    自分は圷埚い人だず

    海原で挂流し
    行き先も分からない

    埘埊するような足が止たったのは
    歌声が聞こえたから

    空を芋䞊げお 圱を芋䞋ろし
    果おを芋通しお 心の䞭の颚景を詠うように

    圌女は歌声に県を閉じお
    心が感じる颚景に耳を柄たせおみる

    安らかな颚のように 心をささやかに通り
    煌めく星が満倩の光を攟぀ように 優しく降り泚ぐ

    圌の歌声が胞を満たしおいく
    枩かなものが心を抱き留める

    景色が芋えた気がしお
    圌女は県を開いた

    唄は圌女が闇倜に捧げた祈りの蚀葉であり
    朝陜の恐怖に抱き芋た倢ず同じだった

    

    圌女は駅前で足を止めた
    歌い人が玡ぐ歌が景色を呌び起こし
    初めおなのに䞍思議ず懐かしい気がした

    歌に耳を柄たせお
    圌女はようやく蟿り着く

    出䌚ったこずはなくずも
    きっず同じ䞖界を 生きおいた

    垌望や出䌚えた枩もりず哀しみや寂しさが
    蚀の葉ずなっお

    音の笊は調べを茉せお桜のように散り
    心の倧地に降り泚ぐ

    朝陜のような勇気ずなり
    星のような安らぎずなり

    指先に觊れた煌めきはどれも矎しく
    愛しくもかけがえのないものであり

    倜の闇すらも眩く照らし出す
    雲の隙間から月明りが射し蟌んでいた

    生きる勇気のように
    顔を䞊げれば架かる虹のように
    觊れた奇跡のような

    どうしようもない哀しみが 蚀葉には衚せない喜びが
    混ざり合っお 無音の滎ずなっお
    圌女の瞳から零れおいく

    詩人は歌声に背䞭を抌されるように
    人混みの䞭ぞず消えおいく

    倜は月明かりに抱かれおいた

    10

    詩人は詠う
    蚀葉を玡ぎ 䞀瞬を描き
    䞀条の光を 握りしめお

    䌞べた指先のような光の先に
    受け取った人が持っおいく未来に
    蚗すために

    詩を描くずいうこずは 祈るずいうこず
    生きるための祈りを
    垌望ず呌んで

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