【人を呪わば穴二つ】(新釈ことわざ辞典)記事版
市井の人が他人を呪う場合には相手と自分で穴はふたつ。しかし、強権国家の独裁者が他国の政権を呪う場合、相手国の多くの人びとばかりでなく攻めに使われたり反撃された結果として自国民も多数亡くなり、埋葬する穴は無数に必要となる。しかも、その中に呪うヒトである彼自身の穴はない。
上記つぶやきに、joshさんからコメントをいただきましたが
子どもの頃、この表現を耳にして「鼻のこと? 目のこと? いや……耳か?」と考えを巡らせていたのを思い出しました🥴
実は、私自身もかなり最近まで、この『穴』って何だろう?とまさか墓穴だとは思っていませんでしたが、わからないまま、ことわざの意味だけは、
(他人を呪えば自分も呪われる)的な意味なんだろう、と想像していました。
Wikipediaによれば、
他人に害を与えようとするならば、結局は自分も同じように害を受けるということのたとえ。他人を呪って殺そうとするならば、自分もその報いで殺されるということであり、自分も殺されることになるから墓穴が2つ必要になるということである。
── なんだそうです。
さらに驚いたのは、この言葉は平安時代の『陰陽師』に由来し、
戦争が行われるようになれば、その当時の権力者は陰陽師に呪術を依頼していた。この時に陰陽師は、敵を呪い殺したならば自分も同じように呪い殺される可能性があるとして墓穴を2つ用意させていた。このことから、「人を呪わば穴二つ」といわれるようになった。
うーむ。その覚悟が無くては『人を呪う』なんてことはできなかったわけですね。
では、陰陽師に『呪い』を委託した権力者はどうだったんだろうか? ── その覚悟があったのだろうか?
ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻を開始してから、ロシア側の戦死者数は約20万〜25万人規模と推定されています。これはウクライナ側の死者数(約10万〜14万人規模と推定;こちらは非戦闘員も含まれる)をも上回っています。
表題写真は、読売新聞オンライン(↓)に掲載されていたロシア軍兵士の墓地です。
この侵略はプーチン大統領個人が決断したもので、その時海外に出ていたラブロフ外相もたいへん驚いたようです。
墓穴はもちろんふたつどころではなく、侵略する相手国(ウクライナ)の国民(兵士だけではなく、多くの一般市民が殺された)だけでなく、自国の兵士を多く使い捨てにしている ── そして、最も重要なのは、陰陽師の覚悟とはまったく異なり、そこには命令した権力者の墓穴はない、ということです。
内戦の続いたシリアでも、政府側・反政府側双方から多くの死者が出て、かつ、多くの難民を生みましたが、アサド政府が倒れた時 ── いや、その直前に ── アサド大統領とその家族はロシアに逃亡し、ロシア政府の保護を受けているとのことです。
ここでも、権力者の墓穴は無かった、ということですね。
【人を呪わば穴二つ】
他国民ばかりか自国民の墓穴も無数に掘っていく現代の独裁者には、このことわざの意味 ── 陰陽師の覚悟 ── は通じないでしょうね。
