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掌線小説『ミス400ず呌ばれる女』

    文月詩織ふづき・しおり、二十九歳。

    文章を“ぎったり400文字”で曞ける女。
    誀差、±0。

    䞀文字も狂わない。

    長すぎず、短すぎない。
    過䞍足のない、ちょうどいい密床。

    ただそれだけの胜力。

    だが圌女は、“400文字”だけは絶察に倖さない。

    だから瀟内ではこう呌ばれおいる。

    「ミス400」

    本人は、少しだけ気に入っおいる。

    ◆ 䌚議宀の戊い

    ある日、新商品販売に向けおの䌁画䌚議が開かれた。

    テヌマは
    「女性向け・ぎったり䌝わるキャッチコピヌ」

    郚長が蚀う。

    「䞀瞬で䟡倀を䌝える蚀葉だ。短すぎおも刺さらん、長すぎおも読たれん」

    開発郚がうなずく。

    「理想は  そうだな、400文字だ」

    ざわ぀く空気。

    そのずき。

    ドアが静かに開く。

    「倱瀌したす」

    文月詩織が入っおくる。

    皆がざわ぀く。

    「あれ、有名なあの女史ですよね」

    「そうそう。曞けば売れるずいう䟋の」

    口々に䌚話しおいた。

    「では、曞きたすね」

    しばしの静寂。

    玙が差し出される。

    郚長が読む。

    沈黙。

    もう䞀床、読む

    「  完璧だ」

    「ちょうど400文字です」

    䜐䌯がのぞき蟌んで読む。

    「無駄が䞀文字もない  」

    山本がぜ぀り。

    「  別に400文字じゃなくおもよくないっすか」

    䌚議宀、凍る。

    郚長がゆっくり振り向く。

    「山本」

    「は、はい」

    「“ちょうどいい”ずいうのはな、䞀番難しいんだ」

    静寂。

    そのずき、埌ろから声。

    「  300グラムず同じですね」

    秀屋重人だった。

    空気が、少しだけゆるむ。

    䜐䌯は䞋を向いお肩が揺れおいる

    詩織が圌を芋る。

    「  あなたが、ミスタヌ300ですか」

    「ええ、たあ」

    䞀瞬だけ、芖線が重なる。

    ◆ プレれンの成立

    数日埌。

    クラむアントぞの最終プレれン。

    詩織の資料は、たった䞀枚。

    そこに、400文字。

    それだけ。

    郚長が小声で蚀う。

    「  これでいくのか」

    詩織はうなずく。

    「はい」

    スラむドが映る。

    静寂。

    クラむアントが読む。

    䞀床。

    二床。

    䞉床。

    誰も䜕も蚀わない。

    空気が、止たる。

    やがお——

    「  いいですね」

    小さく、しかし確かに。

    郚長の拳が、机の䞋で握られる。

    「この方向で進めたしょう」

    亀枉は、その堎で成立した。

    垰りの゚レベヌタヌ。

    山本が蚀う。

    「なんか毎回うたくいきすぎじゃないっすか」

    䜐䌯が笑う。

    「そりゃあミス400だからな」

    詩織は黙っおいる。

    そのずき、重人がぜ぀り。

    「  すこし 軜いですね」

    「え」

    「届き方が、軜い」

    沈黙。

    「党郚、同じ重さなんです」

    詩織の目が、わずかに揺れる。

    ◆ 400にならない蚀葉

    数週間埌。

    詩織のコピヌは、成果を出し続けおいた。

    だがある日。

    圌女の手が止たる。

    400。

    完璧なはずの文章。

    ——軜い。

    敎いすぎおいる。

    届かない。

    詩織は、初めお党郚消した。

    そしお、曞く。

    数えない。

    削らない。

    敎えない。

    完成。

    399文字。

    「  だめ」

    曞き盎す。

    401。

    「  違う」

    沈黙。

    時蚈の音。

    ふず、思い出す。

    “ぎったりすぎるず、匕っかからない”

    詩織は、目を閉じる。

    そしお——そのたた提出した。

    ◆ 再び、䌚議宀

    「  400じゃないな」

    ざわ぀く声。

    山本が蚀う。

    「399っすよ」

    詩織は黙っおいる。

    重人が玙を持぀。

    目を閉じる。

    数秒。

    「  401」

    「は」

    「読む人の分、入っおる」

    静寂。

    詩織の目が揺れる。

    郚長がゆっくり蚀う。

    「  出そう」

    誰も反察しない。

    ◆ ビルの屋䞊

    詩織が蚀う。

    「どうしお分かるんですか」

    重人は空を芋る。

    「増えるんですよ」

    「䜕が」

    「重さが」

    颚が吹く。

    「誰かがちゃんず受け取るず、ちょっずだけ」

    詩織は぀ぶやく。

    「  400じゃなくおも、いいんですね」

    重人は笑う。

    「300も、たたに倖したすよ」

    「え」

    「今日のあなた、402くらいありたした」

    詩織、少しだけ笑う。

    「倚いですね」

    「いい意味で」

    沈黙。

    でも、悪くない。

    ◆ 最埌の䌚議

    新しい䌁画。

    詩織は数えない。
    重人は枬らない。

    それでも、できた。

    郚長が読む。

    静かに、うなずく。

    「  いいな」

    山本が聞く。

    「䜕文字っすか」

    詩織は笑う。

    「  知りたせん」

    重人が蚀う。

    「  ちょうどいい」

    「䜕グラムだ」

    「郚長の䜓重ず同じで、枬定䞍胜です」

    笑いが起きる。

    ◆

    䞖界は、正確にできおいる。

    でも。

    人が関わるず、少しだけズレる。

    そのズレは——

    だいたい、悪くない。

    ちょうどじゃないものは、䞍安だ。

    でも。

    ちょうどじゃないから、觊れられる。

    それでも今日も、

    誰かが誰かの䜕かを、

    少しだけ、いい加枛にする。

    それが、

    案倖、ちょうどいい。

    ――――
    あずがき

    こちらの短線は、
    #400note祭りに参加するために曞きたした。
    前回の「ミスタヌず呌ばれた男」の続線です。これにお完結したす。
    読んでくれた方が、たた「ふふっ」おなっおくれるず嬉しいです。


     
     
     

    KAi_ss

     
     
    50代から、新しい䞀歩を。 人生で出䌚った喜びや迷い、別れや垌望を、詩ず音楜にのせお綎っおいたす。 「もう遅すぎる」「いたさら」は、きっず思い蟌み。 いく぀になっおも、新しい物語を始められる。 この堎所が、誰かの心を少しだけ軜くし、 明日ぞ歩き出すきっかけになればず願いをこめお。

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