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第40話 医師からの癌告知は突然に 「アレ?聞いてなかったの!?」

前話(第39話)でお伝えした
ステント手術のおかげで、
母の胆汁の流れは再開通した。

腹痛や嘔吐といった炎症の
症状は落ち着き、
黄疸もだいぶ良くなった。

それでも、
母がまだ知らないことがあった。

それは、母が早い段階で
知っておくべきことだった。

なんでも言い合ってきた母娘なのに、
いちばん大事なことだけが、
どうしても言い出せずにいた。

もしあの頃に戻れるなら、
私はどう話しただろう。

お医者さんから聞くより、
私から伝えたほうが、
母の心は少しでも軽かっただろうか。

当時の私は答えの出ないまま、
何も言えずに、約1週間が過ぎた。

退院後、はじめての再診の日。

私はいつものように
ミニノートを片手に、
母と一緒に診察室に入った。

呼んでくれたのは、
元の消化器外科の先生だ。

私たちが椅子に腰かけるなり、
先生は母に声をかけた。

「顔色だいぶ良くなったな。どうだい?」

その後の言葉を、
私は正確には覚えていない。
メモにも書き留められていなかった。
ただ、こう記憶している。

「癌は肝門部内のみと
 思われるから、取りましょう」

「えっ!」

母の声だった。

「先生、今、癌って言いました?」

先生は一瞬きょとんとして、
それから私の顔を見た。

「アレ? 前回手術した消化器内科の
 〇〇先生から、聞いてなかったの!?」

そのとき、
私は何も答えられなかった。

先生はすぐに、明るい声で続けた。

「ここの病院に来る人はね、
 ほぼ、みんな癌なんだよ」

きっと、母を怖がらせないための
優しさだったのだと思う。

母は、まっすぐ先生に尋ねた。

「手術をしないで、
 薬などで治すことはできないんですか」

先生は、ごまかさずに答えた。

「手術しない場合は、死んじゃうよ」

私は母の座っている椅子の横の少し後方の椅子に座っていたが
母の肩が、静かに落ちたのが分かった。

そのあと、
どうやって会計をすませたのか。

どうやってタクシーに乗って、
どうやって家に帰ったのか。

車の中で、母とどんな話をしたのか。

私は、何ひとつ覚えていない。

ただ一つ、

はっきりしていたのは、
これから私たちに残された道は、

大手術しかないということだった。

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