夫の旅支度
結婚して特に感じるのは
お金の使い方というのは非日常のお買い物より
日常に性格が出る。
数ヶ月に一度おめかしして行く百貨店より
薬局やスーパーに行って感じる価値観の方が
断然に多い。
働いていた時は
こんなにも自分を削って働いているのに
その努力が自分の手元から離れていくのには
少し抵抗があった。
子供がいるならまだしも
営業として夫と同等程度の年収は稼いでいる
という自負もあったし
自分が買いたいものを買うという行為を
削りたくは無かった。
ところが人生を取り巻く環境というのは
目まぐるしく変わるものだ。
後輩とご飯に行って財布を出させない私が
今は夫のお給料でご飯を食べている。
なぜか急に家から出られなくなってしまった。
今思えば、私の未来が
今を拒否してしまったのだろう。
最近はおかげで徐々に元気を取り戻してきたが
ずっと寝ているだけの日も何日もあった。
少しでも外の空気を吸った方が良いと
数歩先のコンビニや薬局に
私のタイミングに合わせて
仕事から帰って疲れているだろうに
一緒に行ってくれた。
体調がいい日にはなるべく家のことをしようと
お弁当を作れば、蓋を開けた時に
どれだけ嬉しかったかを実演してくれ
おかげで仕事を頑張れたと喜んでくれた。
こんな状況の中で
夫は自分のお給料は
二人のお金だと心の底から思っている。
スーパーに行けば必ず
私のおやつのお菓子はまだあるのかと聞き
薬局のシャンプーで髪の毛が猫の毛みたいになれば
サロン仕様のものに変えてくれた。
あなたから見えない私の
昼ごはんなんて気にしなくていいのに。
とも思ったりしたが
私に食べ物がちゃんとあるのかを
夫はとても気にする。
日々の暮らしの中で
私が食べるご飯や、身なりを整えるものが
あなたの中では
生活必需品に入っているんだと実感した。
美容室や化粧品なんかは
独身時代の貯金で賄っているが
心が窮屈にならないのは
このはみ出しても良い余白があるからだろう。
夫は近々フィンランドに行くらしい。
新婚旅行にはまだ行っていないにも関わらず
義家族(パパ抜き)で海外旅行に行くという。
私の退職と試験勉強という理由はあるが
祖母はなんで置いてかれるんだと怒っていた。
まぁ、気持ちは分かる。
孫がおざなりにされていると思ったのだろう。
でも私は義家族と仲がいい方だと思う。
ママと妹ちゃんとグループ通話をしたり
不在のパパの机に「来たよ」と
ウサギの置き手紙をするくらいの関係性はある。
今回も行きたいと言えば歓迎してくれるだろうが
友達でもなんでもその時々によって
ベストメンバーというのがあるはずだ。
そして何より
そんな家族と旅行に行きたいと言う夫に
反対する権利を行使しようとは思わなかった。
根底に、会社員時代の名残なのか
「本人が稼いだお金を
どう使おうが本人の自由だよね」
という考え方が私の中にあるのだと思う。
あなたの選択の元で
私や二人の利益に使おうとしてくれるのは
ありがたいけれど
それは自由意思に基づくものだよね
本来はあなたの好きなように
使って良いものなんだよと。
そして反対しない一番の理由は
必ず私の存在があるところだ。
今回の海外旅行も
私が嫌だと言えば多分行かなかっただろう。
というか、ほとんど断ろうとしている状態で
話を持ってきた。
お金が無限にあるならまだしも
新婚旅行も行っていないのに
先に義家族と旅行に行くというのは
一般的には結構な優先順位の裏切りだ。
正直、そのお金があるなら
新婚旅行のホテルの一つや二つは
アップグレードできるだろうし
未来を模索中の身としては
手元にお金があるには越したことはなかった。
ただ、あなたには広い世界で生きてほしいのだ。
色んなものを見て、色々な人と話して
その中にずっと私がいるならそれは本物だろう。
いつか家族で海外旅行に行きたいという夢は
以前から聞いていたし
あなたの人生の大切な思い出が増えるなら
それは私にとっても良いことだ。
新しい景色を見て
モチベーションを上げて
これからいっぱい稼いできてくれと言って
背中を叩き、承諾した。
出発が迫ると
私がちゃんと食べてるか心配だからと
おかずを何品か作ってタッパーに詰めてくれた。

③ナスと鶏肉の焼き浸し④かぼちゃのクリームナッツサラダ⑤鮭とレンコンの照りポン酢⑥タコとトマトのマリネ
出発前の3時間程で
ちゃちゃっと作ってしまうのだから
見事なものだ。
今日明日で食べ切れなさそうなものは
冷凍庫に押し込み
ついでにシンクが空になっているところに
思いやりの裏ごしを感じる。
そして散らかっている部屋に
一人で居ては気持ちが沈むだろうと
二人でカーペットを剥がして床を拭き
溜まった段ボールを片付けた。
私達はどちらかがお出かけをしている時は
あまり連絡を取らない。
まだ夫が彼氏だった時
友達と泊まりがけの旅行に行くから
寂しくさせてごめんねと、ゲームソフトを渡され
おかげで連日朝方まで冒険することになった。
この人は旅行の準備に私が入っている。
だから私も心の準備ができる。
私にとって夫とは
所有するというより存在するものに近い。
太陽をめいっぱい浴びて
遮るものがない景色を感じるのも
とても気持ちいいけれど
あなたという木が1本あるだけで
木陰ができたことで
腰を下ろして休めるようになった。
こうやって背中を預けられているというのは
一緒に感じられている風もあれば
あなたにしか見えない景色もあるのでしょう。
お互い言葉でしか交換できないことも
多いのだろうけど
でもいつかは
私にもフィンランドの景色を見せてよねっ。
