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連載小説(45)漂着ちゃん

    山根あきら | 哲学者

    「ナオミさんは、ヨブくんとマリアを将来的に結婚をさせたいと思っている、ということですね」

    「はい、そういうことです。エヴァさんの目論見通りです。イサクの相手は、10年前に漂着した3人の漂着ちゃんの中のいずれかから選ぶことにしましょう。まだ子どもたちはみな20代ですから、そんなに急ぐ必要はないかもしれませんが」

    「いえ、私はこの町の繁栄ということを考えると、少し急ぐ気持ちもあります。私がこの町に流れついて以降、50数人の『漂着ちゃん』が流れついていますが、いずれも女性ばかり。この町にいる男性はあなたとヨブとイサクの3人だけですから」

    「エヴァさんの家にいる3人の『漂着ちゃん』以外の女性は、収容所にいるのですか?」

    「いることはいます。しかし、十分な教育は授けられることはありませんでした。拘禁状態で外界のことは何も知らない」

    「ずっと収容所に監禁されているような感じですね」

    「それが『漂着ちゃん』には、当たり前の状態なのです。自由ということを知らない。ただ収容所の中で、出されたものを食べ、指示通りの生活をするだけ。自ら考えて行動するという経験がないのです」

    「エヴァさんだけが、収容所ではない場所で育てられたのはどうしてでしょう?」

    「私がこの町に最初に漂着したからでしょうね。漂着ちゃんに関するルールがなかった。私の漂着はAIにとっても予測不可能だったのでしょうね。弥生から現代に生きている人間が流れてくるなんて、精密機械でも予知することは無理だったのでしょう」

    「しかし、あなたがこの町に漂着したことで、いずれ同様のことが起こると、AIである所長は予測し収容所に監禁することがベストだと判断した、ということですか?」

    「そうだろうと考えられます。この町には、もともと誰か暮らしていたのでしょう。しかし、私が漂着したときには、AIで動くロボット以外は誰もいませんでした」

    「ところで、エヴァさん。ナオミとヨブたちと、マリアとイサクたちはいつ頃会うのが良いとお考えですか?」

    「なるべく早いうちに、会わせたいと思っています。うまく馴染ることが出来るようにしたいとかんがえています」

    「こればかりは会ってみないことにはどうなるのか分かりませんね」

    「わからないでは困ります。ヨブとマリアの、、、いえ、マリアの幸せのためには、二人が仲良くなってもらわなければ困ります」

    「では、収容所に帰ったら、エヴァさんの意向をナオミとヨブに伝えましょう」

    「いえ、ナオミには伝える必要はありません。ヨブにだけ、マリアと会ってほしいとお伝えください」


    …つづく


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    初投稿2021/08/08。毎日投稿。2023年から個人企画「青ブラ文学部」。英語、ことば、文学、哲学、数学、時々noteのことなどを書いています。 『星空の恋の方程式』で創作大賞2025中間選考通過。『算数の時間 | 分数を理解しよう!』で「今日の注目記事」に選出。

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