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連載小説⑩漂着ちゃん

    山根あきら | 哲学者

     1年後、ナオミと私との間に男の子が生まれた。自ら死を選ぼうとしていた者が人の子の親になるとは、自分でも驚きであった。ナオミは子どもを溺愛するようになった。いつしか、私のことを「お父さん」と呼ぶようになっていた。

    「お父さん、この子の名前なんだけどね、私、ヨブにしたいと思うの」

    「ヨブって、聖書の…」 

    「そう、ヨブ記のヨブよ」

    「なぜだ?苦難の連続だった人物じゃないか!」
     私はどうしてもヨブという名前は受け入れられなかった。ナオミは何を考えているのだろう?

    「でもね、ヨブのように信じる力がないと、この子は生けていけないと思うの。だって、この子は千歳以上も年の差のある両親を持っているのよ。しっかり自分を持っていないと、この子は生きていけないんじゃないかしら?」

    「それは関係ないだろう?」

    「あら、そうかしら?この今という時代で生きていくためには、相当な精神力がないと」
     そう言われると、私には何も返す言葉がなかった。

    「ナオミ、君がそんなに言い張るならば、この子はヨブと名付けよう」

    「ありがとう。お父さん」


    「お父さん、ちょっと、席を外していただけないかしら。授乳したいから」

    「あぁ、すまない。わかった。ちょっと外へ出るよ」

     私はこのとき、よからぬことを考えていた。


    …つづく


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    初投稿2021/08/08。毎日投稿。2023年から個人企画「青ブラ文学部」。英語、ことば、文学、哲学、数学、時々noteのことなどを書いています。 『星空の恋の方程式』で創作大賞2025中間選考通過。『算数の時間 | 分数を理解しよう!』で「今日の注目記事」に選出。

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