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Photo bypiccolotakamura

お題【ファースト奇襲】

    山根あきら | 哲学者


     最後のキスはタバコのflavorがした。でも、最初のキスには、味も香りも感じる余裕などなかった。あまりにも突然で、偶発的な事故のような奇襲だったから。


    「振り子の等時性っていうのは…」

     僕がそう話し始めた瞬間に、彼女の唇が僕の頬をかすめた。
     放課後の教室の中で、黒板に書き残された数式が妙に鮮明に目に焼き付いていた。
     振り子の話がどうでもよくなったわけじゃない。ただ、頭の中が一瞬で空白になった。 彼女はすぐに身体を引いて、いたずらっぽく笑った。

    「ごめん、なんか急にキスしたくなっただけなの」

     まるで軽い冗談のような口調で言った。でも、彼女の目には一瞬、計算しきれなかった何かが揺れていた。

     僕は言葉を探した。喉の奥で何か詰まったような感覚があった。だけど、「…等時性、って何だったっけ?」と、間の抜けた声で返してしまった。彼女はくすくす笑いながら、教科書を閉じた。

    「もう!、集中力ゼロじゃん。続きはまた明日ね」
     そう言い残して、足早に教室を出て行った。




    #毎週ショートショートnote
    #ファースト奇襲
    #たらはかにさん

     
     
     
    初投稿2021/08/08。毎日投稿。2023年から個人企画「青ブラ文学部」。英語、ことば、文学、哲学、数学、時々noteのことなどを書いています。 『星空の恋の方程式』で創作大賞2025中間選考通過。『算数の時間 | 分数を理解しよう!』で「今日の注目記事」に選出。

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