
🇩🇪🇫🇷親しみを込める呼び方について。
ヨーロッパ系の外国語を学ぶとき、人称代名詞や語尾変化を覚えることは、けっこう苦痛ですね。たとえば、ドイツ語をはじめて学んでいると、「英語って楽だなぁ」と思うのではないでしょうか?
英語だと、「あなた」や「君」と訳される人称代名詞は「you」だけしかありませんが、ドイツ語には「Sie」 (ズィー、あなた) と 「du」 (ドゥー、君)の二つがあります。
ドイツ語の「du」 は、辞書的には、「君」と出ている場合が多いのですが、「親しみを込めた呼び方」です。「君」という日本語とは、少しズレがあります。
たとえば、小さな子どもが、お父さんやお母さんに対して「du」 という呼び方をすることがあります。両親に対して「君」という日本語を当てはめると、違和感がありますから、「親しみを込めた言い方」としか説明しようがありません。
ドイツ語には、「du」から派生した「duzen(ドゥーツェン)」という動詞があります。「duで呼ぶ」という意味です。
そういえば、確かフランス語にも「du」 と似たような親称があったな、と思って調べてみたら、「tutoyer(テュトワイエ)という動詞がありました。
「duzen」も「tutoyer」も、どちらとも「お互いを親称(du や tu)で呼び合う」という意味を持つ言葉です。興味深いのは、この「親称(duやtu)」と「敬称(Sieやvous [ヴー])」の使い分けが、単なる年上・年下の上下関係ではなく、「心理的な距離の近さ」によって決まるという点です。
家庭に入れば、子供は父親や母親に対しても親称を使います。どんなに目上であっても、親しい家族や親友は「親称の世界」にいるわけです。言葉の選び方ひとつで、互いの垣根をそっと取り払うようなあたたかさがそこにはあります*。
*長い付き合いがあるから、「duで呼びあいませんか?」と提案しても、「いや、Sieでこれからも呼び合いましょう」と言われることもあるそうです🤭*
ところで、現代の英語を見渡すと、親称も敬称もすべて「you」という一つの言葉にまとめられていますね。
しかし歴史のページをめくってみると、英語にもかつて「thou」 (ザウ) という親称が存在し、相手を thou と呼ぶ「thou」いう動詞すら存在していました。
シェイクスピアの時代には、誰を「you」で呼び、誰を「thou」と呼ぶかに人々は心を砕いていたのでしょう。
ではなぜ、英語からその区別が消えてしまったのでしょうか?
ひとつには、人々が「より丁寧に接しよう」とした結果として、誰もが敬称である「you」 ばかりを使うようになり、親称の「thou」が姿を消していったという歴史があります。つまり英語は、全員を敬称で呼ぶことを選んだ言語と言えるでしょう。
あるいは、あくまでも仮説ですが、英語が話されている地域に、さまざまな人々が入って来た結果として、「ピジン」が生まれ、世代を超えて「クレオール化」したのかもしれませんね。
話しは少し変わりますが (On a slightly different note)、ある言語は、その他の言語との接触が多いときに、簡略化されるのではないかと思っています。
古い英語が使われていた地域は、他の民族との接触が多かったのでしょうね。お互いに相手の話す言語を知らなければ、互いに何となくでも分かり合える言葉を使うでしょう。そのような「有り合わせの言葉」で生まれる言葉を「ピジン」と言いますが、ほとんど単語だけの会話になりますね。複雑な語尾変化は、意思疎通の面では、とりあえずどうでもよいことです。
そして、そのような「ピジン」を使っているうちに定着してくると、「ピジン」しか知らない新たな世代が生まれます。すると、いくつかの言語が混じりあい、文法が簡略化された「クレオール」という言葉になります。
現在では、英語をさして「クレオール」とはあまり言いませんが、複雑な言語が混じり合った結果として、英文法が簡略化されたのではないでしょうか?
英語に比べると、日本語には、一人称(私、俺、拙者、我輩など)や二人称(あなた、おまえ、汝、貴様など)が多いですし、動詞の変化も複雑です。日本語には、英語に比べると、ほとんど侵略の歴史はありませんから、文法が複雑化したのではないか?、と私は思っています。
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