
【ぴよぽむっ ~弟なんていりません~】第七話「ちょっとだけ。」
ト書き:
昼下がりのリビング。
キャットタワーの近くに、細い猫じゃらしと小さなおもちゃが転がっている。
ぴよは窓際でくつろいでいる。
少し離れた場所では、ドビーがおもちゃを見つけて遊び始めた。
ドビーは猫じゃらしに前足を伸ばす。
転がる。
飛びつく。
追いかける。
また飛びつく。
部屋中を使って夢中になって遊んでいる。
――――――――――
ぴよ
(……元気だなぁ)
母は微笑みながら、その様子を眺めている。
ドビー
「これ、たのしい!」
「ぴーちゃんもやってみない?」
ト書き:
ぴよは返事をしない。
そのまま窓の外を見る。
――――――――――
ト書き:
しばらくして。
ドビーは満足したのか、少し離れた場所で毛づくろいを始めた。
おもちゃだけが床に残る。
ぴよは、おもちゃを見る。
少し考える。
ぴよ
(……何がそんなに楽しいんだろ)
周りを見る。
ドビーはこちらを見ていない。
母も静かにしている。
ぴよ
(ちょっとだけ)
ト書き:
ゆっくり前足を伸ばす。
そっと触れる。
おもちゃが小さく転がる。
ぴよ
(あ)
ト書き:
もう一度。
今度は少しだけ強く。
ころん。
また転がる。
――――――――――
その音に気づいた母が振り返る。
母
「……えっ?」
ト書き:
ぴよは気づかない。
夢中で前足を伸ばしている。
母
「えっ!? ぴよが遊んでる!?」
「カメラ! カメラ!」
ト書き:
慌ててスマホを探し始める。
その声でドビーが振り返る。
ドビーは目を丸くする。
そして、嬉しそうにぴよを見る。
ドビー
「ぴーちゃん!」
ト書き:
ぴよは一瞬だけ動きを止める。
我に返る。
ぴよ
(ち、違う)
(あたしが遊びたいんじゃない)
(ドビーが見せつけてくるから)
ト書き:
そう思いながらも、
前足はもう一度おもちゃに伸びていた。
ドビーはゆっくり近づく。
勢いよく飛び込むことはしない。
少し距離を空けたまま座る。
ドビー
「おれとも遊ぶ?」
ぴよ
「今これしてるから、待ってて」
ドビー
「うん!」
ト書き:
嬉しそうに座って待つ。
ぴよが遊び終わるまで、決して横取りはしない。
母はその光景を見つめながら、小さく笑う。
――――――――――
母
「ぴよママに報告しなきゃ」
ト書き:
ぴよは何も知らず、
もう一度だけおもちゃに前足を伸ばした。
ぴよ
(……楽しい)
ト書き:
その気持ちに気づいた瞬間、
ぴよは小さく首を振る。
ぴよ
(違う)
(あたしが遊びたいわけじゃない)
(ドビーが誘ってくるから)
(しぶしぶなんだから)
ト書き:
その横で、ドビーは満足そうに見守っている。
自分のおもちゃを取られたとは、一度も思わない。
ぴーちゃんが楽しそうなら、それでいい。
そんな顔をしていた。
――――――――――
【ぴよ・モノローグ】
変な子だった。
でも。
あの子が来てから、あたしは思い出した。
夢中になって、何かを追いかける時間を。
子猫の頃には、きっと知っていたはずの時間を。
忘れていただけなのかもしれない。
――――――――――
ぴよ
(でも、それは絶対に言わない)
(ドビーが誘ってくるから)
(本当に、それだけなんだから)
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【第8話へ続く】