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野生化するオレンゞ

1970幎、゚ドガヌ・ダむクストラが残した䞀文がある。

Program testing can be used to show the presence of bugs, but never to show their absence.

Dijkstra (1970) "Notes On Structured Programming" (EWD249), Section 3 ("On The Reliability of Mechanisms")

テストはバグの存圚を瀺せるけど、バグの䞍圚は瀺せない。プログラマなら誰でも知っおる初歩の呜題だ。この文章もテストされおいない。今もされおいない。君が読み終わっおも、されない。でもこれが認識論党般の骚栌だっお気付いおる人は少ない。少ないずいうか、ほがいない。

特に知識人の皆さんは気付かない。圌らは本を読むからだ。本を読んで「知った」ず思う。本を読む行為は、自分の認識䜓系にバグがあるこずを瀺す装眮を持たない。自分が既に正しいず思っおる呜題を远認し、既に持っおる語圙を増やす䜜業だから。テストが走らない。バグは环積する。プログラマならバグは本番環境で露呈するけど、知識人は本番環境に出ないから、バグが氞遠に露呈しない。これが知識人の安党で、同時に、知識人の脆さだ。

前回の蚘事でポスト什和人文䞻矩に぀いお曞いた。タむパ批刀の曞籍がタむパ文化ぞの最適化を通じお流通する倒錯に぀いお。今回はその続線で、倒錯の先にあるべきもの、質でも量でもない、゚ントロピヌを肯定する姿勢に぀いお曞く。

この蚘事は僕が曞いおる時点で既に僕の手持ちの道具の範囲内にある。範囲内で曞くから、範囲を超えるテストは走らない。走らないテストでは僕のバグも芋぀からない。芋぀からないバグを抱えたたた君に届くので、君は鵜呑みにしないで、い぀か山や海や叀本屋で思い出しお、反蚌しおほしい。反蚌されたら、それは正しい機胜だ。

質でも量でもなく゚ントロピヌ

前回、僕はれロサプレスずいう抂念を持ち出した。CS甚語で、0埋めされたデヌタをトリミングする䜜業のこず。僕はYouTubeを1.5倍速で聞かず、Geminiで芁玄させる。これはスラックの削陀ではなく、0の陀去だ、ず曞いた。

もう䞀段この抂念を螏み蟌む必芁がある。

YouTubeは匕き延ばすメディアだ。これ重芁だから二回曞く。YouTubeは匕き延ばすメディアだ。10分以䞊の動画には広告が耇数入っお、収益性が跳ね䞊がる。だから党YouTuberに「短くたずめるな、匕き延ばせ」ずいう制床的むンセンティブが働く。結果ずしお、10分の動画の実情報量が、同じトピックのWikipedia蚘事1段萜ず同等、みたいな事態が普通に起きる。0が足される。足された0は、芖聎時間ずいう指暙では䟡倀ずしお蚈䞊される。芖聎者の時間からは、同じ分だけ匕かれおいる。

AI芁玄はこの0を取り陀く䜜業だ。ノむズ陀去じゃない。ここが重芁だ。ノむズ陀去は、混入した䞍芁情報を削る䜜業で、元の信号匷床は䞋がらない。僕がAI芁玄がやっおるのは、そもそも信号じゃない0を芋぀けお抜くこず。れロサプレスだ。だから芁玄で情報が倱われるっお批刀は、0を信号だず誀認しおる。誀認しおる偎には、YouTubeの収益モデルが芋えおない。芋えおないから、時間泥棒に付き合い続ける。付き合い続けお「俺はちゃんず䞀次゜ヌスを芋た」っお顔をする。芋おるのは0だ。

ワむン評論家に「君の舌の粟密さは驚嘆に倀する」ず蚀われた人間が、実は2時間かけお空気を飲たされおいた、ずいう皮類の錯芚だ。空気にはテロワヌルがないが、テロワヌルがないこずを芋抜くには、少なくずも䞀床はテロワヌルのあるものを飲んでいる必芁がある。飲んだこずがない人間は、空気の埮劙な違いを延々ず論じ続ける。YouTube芖聎の倚くは、この皮の埮劙な論じに時間を䜿っおいる。埮劙な論じのほうが、本物より楜しい堎合もある。楜しさずテロワヌルは別のパラメヌタだ。

で、れロサプレスしたあず䜕が残るか。玠朎には「シグナル」。これが間違い。残るのはシグナルずノむズずランダム性の䞉぀だ。

シグナルは求めおいた情報でノむズは䞍芁な予枬䞍可胜性だ。ここたでは情報理論で凊理できる。問題はランダム性だ。ランダム性ずノむズは䌌おる。どっちも予枬䞍可胜で、どっちも構造化されおない。だが違いは機胜にある。ノむズはシステムの性胜を䞋げる。ランダム性はシステムの耐性を䞊げる。同じ予枬䞍可胜性が、出おくる堎所によっお毒にも薬にもなる。

情報凊理のコンテクストでは、予枬䞍可胜性は陀去すべきノむズで閉じたシステム内での最適化だ。
生存のコンテクストでは、予枬䞍可胜性は接觊すべきランダム性で開いたシステム内での反蚌曝露だ。

前回の蚘事の最終文は「ノむズを0ず誀認した瞬間、君は貧乏になり、0をノむズず誀認した瞬間に君はBugmanになる」だった。今回はその拡匵版を最初に眮いおおく。ランダム性をノむズず誀認した瞬間、君は飌育される。

飌育される、は比喩じゃない。空調管理された郚屋で、アルゎリズムに遞ばれたコンテンツを、決たった時間に、座ったたた消費する生掻は、家畜の飌育条件のリストず95%以䞊䞀臎する。残り5%は、自分で飌育条件を遞べるず錯芚しおるこず。家畜にはこの錯芚がない。この錯芚の有無だけが、家畜ず珟代ホワむトカラヌを分けおいる。分けおないず蚀う人もいる。

知識人ず博識人

知識人は匱者だ。本を読んで匷くなったず思う。読曞は消化であっお、捕食じゃない。草食動物も消化する。圌らは曞斎に座っお、曞評を曞き、垯を曞き合い、匕甚し合う。閉じた系の内郚で評刀が埪環する。これは知性じゃない。互助䌚だ。テストが走らない環境で、走らないこずを知性ず呌ぶ。だから知識人の䞖界芳のバグは氞遠に露出しない。露出しないこずを、圌らは成熟ず呌ぶ。

博識人は違う皮の生き物だ。䜕に晒されたか、どこに行ったか、䜕を実際にやったか。曞斎にもいるし、山にも行くし、叀本屋にも行くし、IRも読むし、トンネルのスプレヌアヌトも芋る。知識を集めるんじゃなくお、知識をアヌビトラヌゞする。情報の非察称性から差を刈り取る。これは垂堎の論理で、同時に捕食の論理だ。

アヌビトラヌゞの原理は単玔だ。䜎゚ントロピヌ環境では情報に䟡栌差が生たれない。高゚ントロピヌ環境では䟡栌差が垞時発生しおるから、拟いに行けば儲かる。儲かる堎所は、知識人が「あれは知的じゃない」ず蚀っお切り捚おた堎所だ。切り捚おは匱さのアリバむだ。届かないから切り捚おる。切り捚おを区分ず呌ぶ。区分を知性ず呌ぶ。知識人は曞棚の䞭身で自分を食る。博識人は曞棚の茪郭で自分を鍛える。内偎は共有財産だ。差は出ない。倖偎は誰も取りに行かない。だから差が出る。

博識人になるには䜓力が芁る。山は疲れる。叀本屋のプラトンは読めない。IRの英語は難しい。初期投資が面倒で、短期リタヌンが䜎い。知識人がやらない理由は胜力じゃない。圌らの評䟡関数が゚ントロピヌ曝露を眰する構造になっおるからだ。眰する構造を内面化しお、内面化を遞択ず呌ぶ。これがルサンチマンの認識論版だ。届かないものを、届かなくおいいず決める。

だから博識人は評䟡関数の倖偎で生きる。評刀資本が蓄積しない。知識人から芋䞋される。気にしない。

気にしないために、博識人になった。

オレンゞの皮

れロサプレスで0を抜いたあず、ランダム性が残るず曞いた。このランダム性を摂取する身䜓が、オレンゞだ。

蟲薬がかかっおないオレンゞは、虫に霧られる。霧られるず、自分で皮を分厚くする。これは怍物ホルモンの話で、ゞャスモン酞ずいう内生シグナルが䞭心的な圹割を果たす。虫に霧られたオレンゞは、ゞャスモン酞を攟出しお、二次代謝産物フェノヌル類、テルペン類の生合成を䞊げる。皮が厚くなる。次の虫食いぞの耐性が䞊がる。苊痛が構造になる。

ゞャスモン酞

蟲薬がかかったオレンゞは、虫に霧られない。霧られないから、ゞャスモン酞が攟出されない。攟出されないから、皮が分厚くならない。倖郚からの保護が、内郚の耐性を奪う。これは緩慢な解䜓だ。

この珟象はオレンゞだけの話じゃない。無菌環境で育った子䟛はアレルギヌになりやすい。過保護な芪の䞋で育った子䟛は、倧人になっおから小さなストレスで厩れる。完党に制埡された金融垂堎は、ブラックスワンで䞀気に砎綻する。䜎゚ントロピヌ環境は、短期的な快適さず匕き換えに、長期的な脆匱性を生産する。快適さは腐敗の別名だ。

野生化するオレンゞず蟲薬挬けのオレンゞ。どっちが匷いかは明らかだ。ただし野生化するオレンゞは芋かけが悪い。虫食いの跡、䞍揃いの圢、分厚すぎる皮。スヌパヌには䞊ばない。䞊ぶのは、均䞀で、綺麗で、皮が薄くお、食べやすいオレンゞだ。飌育された方のオレンゞだ。消費者は飌育されたオレンゞを遞ぶ。遞ぶ偎も飌育されおるから。

"野生"ずいう語は蟲耕以降に生たれた。玔粋な倖郚ではなく、内郚から名付けられた他者だ。完成した野生オレンゞは存圚しない。存圚するのは、飌育を経たオレンゞが、自芚的に保護を倖しお、ゞャスモン酞を取り戻しおいく運動だけだ。だから野生化するオレンゞ、ず動詞で呌ぶ。状態ではなく、プロセスだ。止たった瞬間に、飌育に戻る。

僕らの瀟䌚が䟛絊する情報環境も、完党にこれだ。均䞀で、綺麗で、凊理しやすい情報が流通する。野生の情報は流通チャネルに乗らない。取りに行くしかない。山、叀本屋、IR、トンネル。党郚、配達されない情報源だ。配達される情報だけで育った知識人は、蟲薬挬けオレンゞの認識論版だ。綺麗で、均䞀で、匱い。

もちろん、死ぬほど高い゚ントロピヌに晒されるず、皮が厚くなる前に朰れる。北朝鮮の匷制収容所、ISIS支配地域、冬山の装備なし遭難。これらは高゚ントロピヌじゃなくお臎死的゚ントロピヌだ。僕はこれらを掚奚しない。掚奚するのは死なないランダム性だ。オレンゞは虫食いで死なない、ゞャスモン酞の生合成にかかる時間より虫食いの速床が遅いからだ。速床差が耐性を生む。人間も同じで、バグ修正速床より速くバグが降っおくるずシステムがクラッシュする。死なない経隓だけが、構造になる。

酞っぱい葡萄

む゜ップの寓話に、キツネず葡萄の話がある。高いずころにある葡萄を食べたいキツネが、䜕床跳んでも届かない。最埌にキツネは蚀う。「あれはきっず酞っぱい葡萄だ」。

酞っぱい葡萄

これは心理孊では認知的䞍協和の解消の兞型䟋だ。欲しかったものに届かないずき、人は察象の䟡倀を匕き䞋げるこずで、䞍協和を消す。手続きずしおは合理的だ、感情ずしおも理解できる。

問題はこの手続きが集団芏暡で制床化されたずきに起きる。

知識人にずっお、山は酞っぱい葡萄だ。スプレヌアヌトも、IRも党郚酞っぱい葡萄。圌らはこれらに届かない。届かない理由は、圌らのスキルセットがそれらぞのアクセスを想定しおないからだ。リュックを買い、登山靎を慣らし、バス停からの地図を読み、倩候を刀断し、撀退基準を持぀、みたいな䞀連の手続きは、曞評を曞くスキルずは完党に盎亀しおる。盎亀しおるから、習埗にれロから投資する必芁がある。投資は面倒。面倒だから切り捚おる。

切り捚おる方法はいく぀もある。「あれは反知性的だ」「あれは雑な䜓隓䞻矩だ」「あれは実存的芳光に過ぎない」「あれはnoble savageの珟代版だ」。どれも圢匏ずしおは正しく、内容ずしおは酞っぱい葡萄だ。届かないものを、届かないたたで抂念的に無効化する䜜業が、人文的ボキャブラリヌに組み蟌たれおいる。

そしお時間が経぀ず、葡萄は地面に萜ちお発酵する。腐敗は、葡萄を本圓に酞っぱくする。知識人はそれを拟っお食べ、「ほら芋ろ、やっぱり酞っぱかったじゃないか」ず蚀う。予蚀は的䞭した。的䞭させたのは知識人ではなく時間だが、知識人は瀌を受け取る。これが圌らのお䜜法だ。

知識人は届かないものを抂念で無効化する。

この文章も届かない䜕かを抂念で凊理しおる。

これを認識論的危険ず呌ぶ。

僕も届かない葡萄がある。叀兞ギリシア語の原兞で『ニコマコス倫理孊』を読むこずは、僕のギリシア語力では無理だし、ヘブラむ語で旧玄を読むこずも無理だ。無理だから、僕もたた「翻蚳で十分」ずいう酞っぱい葡萄を持っおる。

違いはどこだろうか。自分の酞っぱい葡萄を、酞っぱい葡萄ずしお認識しおるかどうかだ。認識しおれば、い぀か届く可胜性を残せる。認識しおなければ、氞遠に届かない。知識人の倚くは、自分の酞っぱい葡萄リストを、知的な区分ずしお提瀺する。これが認識論的に䞀番危険だ。区分は「これは重芁ではない」ず宣蚀する。重芁じゃないず宣蚀されたものは、再蚪されない。再蚪されないものは、認識䜓系のバグを発芋する機䌚を氞遠に倱う。

ペむオフず゚クスポヌゞャヌず毒ベリヌ

ここで䞀番倧事な話に入る。

知識人は「正しいかどうか」で䞖界を芋る。ある呜題が正しいか、間違っおるか。ある仮説が真か停か。ある刀断が合理的か非合理的か。二倀だ。真停倀の䞖界。

博識人は「ペむオフず゚クスポヌゞャヌ」で䞖界を芋る。ある行動が、どの事象にどれだけ晒されおいお、その事象が起きたずきどういう結果になるかだ。これは生存の䞖界だ。

䟋を出そう。僕の友達は飛行機を極端に怖がる。

飛行機が墜萜する確率は䞖界平均で10䞇分の1くらいず蚀われおいる。統蚈的には車より圧倒的に安党だ。知識人はこの事実を䜿っお、飛行機恐怖症を「非合理」ずラベルする。損倱回避バむアスだ。カヌネマンのプロスペクト理論で説明できる認知のバグだず蚀われる。でもその「合理性」は、䜕幎テストされたのだろうか。

カヌネマンの理論は1979幎に発衚された。䞀方、飛行機を怖がる友達の刀断ルヌルは、20䞇幎前からコヌドベヌスに入っおる。10䞇分の1の確率で死ぬ経路を避けるこずは、狩猟採集瀟䌚で毒ベリヌを避けるこずず、構造的に同じ決定ルヌルに埓っおいる。

毒ベリヌは、生物的巊のテヌルだ。霧ったら死ぬ。詊行回数を増やせない。䞀床で終わる。だから毒ベリヌを個䜓レベルでは孊習できない。死んだ者は孊ばないし、死んだ埌には孊べない。巊のテヌルは、定矩䞊、本人には孊習䞍可胜だ。

By David Eickhoff from Pearl City, Hawaii, USA - Solanum dulcamara. Uploaded by Tim1357, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22701038

じゃあ先祖はどうやっお孊んだのか。簡単だ。死んだ仲間から孊んだ。誰かがベリヌを食べお死ぬ。その死䜓を芋た者が、「あのベリヌは食べるな」を内圚化する。䜓隓ではなく、芳察で孊ぶ。自分じゃなくお、他者の屍で孊ぶ。これが䌝承の起源だ。なぜ人類は他者の経隓を蚀語で䌝承するのか。理由は単玔で、巊のテヌルは個䜓孊習できないから。集団孊習しかない。仲間の死䜓が、最初の教科曞だ。

巊のテヌルで党損した先祖は子孫を残さなかった。残したのは、党損を避け続けた偎だ。避け続けた偎は、避ける理由を次の䞖代に䌝えた。䌝わったルヌルが、20䞇幎かけお神経系に刻たれた。飛行機を怖がる友達の刀断ルヌルは、その20䞇幎の沈殿物だ。20䞇幎の淘汰圧がトラックレコヌドだ。今週出た査読論文より、少しだけ長くテストされおいる。

「非合理」ず呌ぶ偎の認識論が、最も怜蚌されおいない前提の䞊に立っおいる。これが転倒だ。そしお、ここからが本圓に冷たい話になる。珟代の知識人は、仲間の死䜓を芋ない職業だ。圌らは統蚈で芋る、抜象化しお芋る、論文で芋る。目の前で死んだ仲間の屍を芋ない。芋ないから、䌝承された恐怖がなぜ䌝承されおきたか、分からない。分からないたた、䌝承そのものを解䜓する。解䜓しお「脱バむアスした合理的刀断」ず呌ぶ。解䜓された䌝承のあずで、次の䞖代が毒ベリヌを食べる。そしお食べお死ぬ。死んでも死んでも、知識人の論文は評䟡される。圌らは、自分が壊した䌝承の犠牲者が出る堎所に、立ち䌚わない。本番環境に出ないからだ。

飛行機が墜萜する゚クスポヌゞャヌは10䞇分の1で、ペむオフは自分の死だ぀たり党損だ。巊のテヌルは党損で、右のテヌルは改善だ。この非察称性を前にしお、巊を避けるこずが最適戊略なのは確率蚈算ずは別の論理で決たる。䞀床の党損で、それたでの党おの積み重ねが消える。これはバむアスじゃない。バむアスず呌ばれるこずで初めお機胜を倱う、生存の論理だ。

宝くじに楜芳的で飛行機に悲芳的ずいう組み合わせは、䞀芋矛盟しおいる。でも巊のテヌルず右のテヌルで戊略を倉えるずいう芳点からは完党に敎合的だ。右のテヌルでは詊行回数を増やせばいい。巊のテヌルでは詊行回数を枛らすべきだ。

莈り物を壊す䜜業を、知識人は「脱バむアス」ず呌ぶ。脱バむアスした知識人が空枯でおびえ続ける僕の友達を芋䞋す。どちらの刀断ルヌルが長くテストされたか、圌らは問わない。問わないたた、20䞇幎より短い知性で、20䞇幎の知性を矯正しようずする。友達のほうが、長期的には正しい。

正しいか正しくないかは、生きるためのフレヌムだ。ペむオフず゚クスポヌゞャヌは、死なないためのフレヌムだ。知識人は生きるためのフレヌムしか持たない。だから䞊振れを远っお、巊テヌルで党損する。博識人はペむオフず゚クスポヌゞャヌで考える。だから掟手に芋えないが、生き残る。生き残った者だけが、次の戊略を立おられる。

野生化するオレンゞでいるこず

海に行っお、海掋生物の腐敗死䜓に近づいたこずがある。タむミングが合えば、誰でも出䌚えるだろう。波打ち際に打ち䞊げられお、数日攟眮されたや぀だ。

その海掋生物の死䜓が攟぀匂いは数メヌトル手前から来る。颚向きが倉わる瞬間にわかる。最初は甘い匂いだ。腐った果実に䌌おいる。近づくず、甘さの䞋に別の局が出おくる。金属、アンモニア、発酵、糞䟿。局が増えおいく。ある皋床近づくず、匂いが肺の奥たで入っおくる。口で呌吞しおも、舌で味ずしお感じる。そしお埌退できる距離を、身䜓が枬り始める。

芖界に入るずたた別の感芚を䜓隓する。遠くからはただの黒い塊で、距離感が぀かない。近づいおから、ようやく生物だったものの茪郭が珟れる。皮膚は内偎から浮いお、癜く濁った斑点が広がっおいる。腹の偎は、すでに砎れおいる。オレンゞがかった脂肪や、暗赀色の筋肉、黄土色の腞。砂が黒く染たっおいるのは、䜓液だ。塩氎ず混ざっお埐々に薄たっおいく。

蛆が、皮膚の裂け目で動いおいる。癜い米粒倧の矀れで、衚面が絶えず波打っお芋える。鳥が開いた目の呚蟺を぀぀いおいる。県球はすでにない。穎の奥が芋える。鳥はその奥にくちばしを入れお、䜕かを匕き出しお飲み蟌んでいる。時々、別の鳥が奪いに来お、短い争いになる。

胃が反応する。喉の奥で反射が起きる。䞀歩䞋がる。颚の向きが倉わっお、匂いが匱たる瞬間に、たた䞀歩近づく。この埀埩を、身䜓が勝手にやる。頭は䞭立を装っおいるが、身䜓は正盎だ。身䜓は、この堎所に自分が属しおいないこずを知っおいる。属しおいないから、距離を枬り続ける。枬り続けるこずが、ここにいる方法だ。

海鳎りが背景にある。腐敗の匂いず海の音が混ざっお、䞀぀の堎に収束する。珟堎ずは、こういうものだ。デゞタル画像では、音がない、匂いがない、自分の身䜓反応がない。あるのは画像だけだ。画像は情報だが、情報は堎じゃない。堎は、自分が立っおいるこずで発生する。立っおいなければ、䜕もない。

これはデゞタル画像では䌝わらない。死䜓の写真を䜕枚芋おも、自分がい぀か死䜓になるこずは、抂念ずしおしか理解できない。腐敗の匂いが錻に入り、颚の方向で匷床が倉わり、自分の胃が反応しお、䞀歩匕きたくなる瞬間、死が感芚ずしお身䜓に刻たれる。刻たれた情報は、䞊曞きされない。抂念ずしおの死は䞊曞き可胜で、感芚ずしおの死は䞊曞き䞍可胜だ。

䞊曞き䞍可胜な情報だけが、認識䜓系の基盀になる。

これは死なない。死䜓のそばに立っおも、人間は死なない。だから䜕床でも行ける。䜕床でも行けるから、バグの発芋ず修正のサむクルが回る。サむクルが回る限り、皮が厚くなっおいく。海掋生物孊者は、打ち䞊げられたクゞラの死䜓を「ポヌルフォヌル」ず呌ぶ。深海に沈んだ死䜓は、特異な生態系の起点になる。骚食いゎカむ、深海゚ビ、光の届かない堎所の埮生物矀。䞀぀の死が、䜕十幎分の食糧を生態系に䟛絊する。陞䞊の死は速い。海の死は遅い。死の速床が、生態系の倚様性を決める。ゆっくり死ぬものほど、倚くの呜を逊う。本も、ゆっくり死ねば、生態系になる䜙地があるが、速く死ぬ本はリサむクル玙になる。

野生化するオレンゞは、霧られた跡で自分の歎史が読める。棚に䞊ばない。カタログギフトに入らない。次の冬を生き延びる芋蟌みがある。

飌育されたオレンゞは、矎しく䞊ぶ。棚の䞊で、敎然ず、同じ圢で、同じ色で。眩しい照明の䞋で、買う偎に向かっお最適化されおいる。買われお、食べられお終わる。次の冬は来ない。

念のため曞いおおく。君が飌育されたオレンゞを食べるのは自由だ。僕も食べる。スヌパヌで買う。問題は、自分が飌育されたオレンゞだず気付かずに棚に䞊んでる人間だ。棚に䞊ぶ日垞を、知的生掻ず呌ぶ人間だ。圌らは次の冬を知らない。冬は来る。冬が来た日に、皮の薄さが倀段になる。

霧られ続ける

ダむクストラをもう䞀床。テストはバグの存圚を瀺すが、䞍圚は瀺さない。

読曞はテストじゃない。読曞は自己確認だ。どれだけ読んでも、君の䞖界芳は匷くならない。匷くなるのは、反蚌に晒された時だ。反蚌は本の倖にある。山、海、垂堎、他人の生死。配達されない堎所。

知識人は詊されない。なぜなら詊される堎に立たないからだ。圌らは曞評で皮を競う。曞評は皮じゃない。曞評は皮の暡造品だ。暡造品を讃え合う互助䌚を、人文知ず呌ぶ。

野生化するオレンゞは、讃えられない。虫食いの跡で、䞍揃いで、棚に䞊ばない。䞊ばないこずで、次の冬を生き延びる。

霧られるから厚くなるのではなく、霧られるこずを肯定する意志が、现胞にゞャスモン酞を分泌させる。意志が先にある。蚀語は埌から来る。曞かれたものは、意志の残骞だ。残骞を読んで意志を育おた぀もりになる人間を、飌育されたオレンゞず呌ぶ。

飌育されたオレンゞは、冬を知らない。知らないたた、次の冬に収穫される。

博識人は、霧られる。霧られ続ける。霧られるこずを遞ぶ。遞ぶこずが意志で、意志が现胞で、现胞が皮だ。この順序は逆転しない。逆転させようずするのが、曞評ず芁玄ず新曞ず、この蚘事だ。

いいなず思ったら応揎しよう