
梅花藻の季節 2人と1匹で過ごした景色
みーさんは、
お花を見るのが好きでした。
春になると花を探して、
季節が変わるたびに
「今は何が咲いてるかな」
と嬉しそうに話していました。
そんなみーさんが
とても気に入っていた場所があります。
滋賀県米原市醒井の、
地蔵川です。
そこには、
梅花藻(バイカモ)という
小さな白い花が咲いていました。
梅の花のような、
小さくて静かな花。
でも、
普通のお花とは少し違います。
川の中に咲くのです。
地蔵川の水は、
湧き出る清水で、
驚くほど澄んでいました。
夏でもひんやり冷たくて、
流れる水を見ているだけで
暑さを忘れてしまうような場所でした。
その透明な水の中で、
白い梅花藻がゆらゆら揺れていました。
みーさんは、
その景色を見るのが好きでした。
私も好きでした。
そして、
たぶん文太も好きだったと思います。
文太は車に乗るのが好きでした。
高速道路のトンネルに入ると、
窓の外を流れていくピカピカした光を、
じーっと見ていました。
私の膝で、
静かに景色を見ている姿を、
今でもよく覚えています。
あの頃は、
それがずっと続くような気がしていました。
みーさんがいて。
私がいて。
文太がいて。
ただ3人で、
同じ場所へ出かけて、
同じ景色を見ている時間。
今思うと、
文太はきっと、
あの時間そのものが好きだったのだと思います。
特別なことをしていたわけじゃないのに、
あの日の夏だけは、
今でも不思議なくらい
やさしく思い出せます。
澄んだ水の音と、
白い梅花藻と、
私の膝の上の文太。
遠い夏なのに、
ときどき今でも、
あの川の冷たさを思い出します。🌿🐶