あったらいいな〜大きな病院の中に図室コーナー〜
あったらいいな大きな病院の中にある
「空想図書コーナー」
これはまだ頭の中にある話
長い治療が必要な病気にかかってから、大きな病院へ通うことが多くなった。
診療科ごとの待合室には、それぞれの時間が流れている。 診察を待つ人、付き添いの人、検査結果を待つ人。 どの人も長い待ち時間を過ごしていて、どこか空気は重たい。
そんな時間に、ほんの少しだけ日常を思い出せる本があったらどうだろう。
実際にはないけれど、この病院の片隅に、私は空想の図書コーナーを作ってみることにした。
1 文章を読むのがつらい日
病気になると、本を読む気力さえなくなる日がある。 そんな日は、文字の少ない絵本がいい。
私なら、『白いぼうし』をそっと置いてみる。
小学生の頃、国語の教科書で読んだ、夏のはじまりの物語。
迷子になったちょうちょの子どもを、タクシーの運転手・松井さんが助ける。
夏みかんの香りがふわりと漂ってきそうな景色。 そして、再会した親子が交わす、
「よかったね。」 「よかったよ。」
その短いやり取りが、今読んでもなんとも愛らしい。
病院の待合室でも、読み終えた人がほんの少しだけ肩の力を抜けたらいいなと思う。
2 眠れない夜には
治療が続くと、眠れない夜がある。
そんな夜には、荒井良二さんの『シンデレラ』を置いてみたい。
優しい色合いの絵を眺めているだけで、子どもの頃の物語の世界へ連れて行ってくれる。
知っているはずのお話なのに、絵が変わるだけで見える景色も少し変わる。 「シンデレラって、こんな世界だったんだ」 そんな新しい発見があるかもしれない。
もう一冊は、荒井良二さんの『ふしぎの国のポルカ』。
理由はうまく説明できないけれど、寂しい気持ちを少し軽くしてくれる一冊だと思う。
眠れない夜に、ほんの少し心がほどけますように。
3 付き添いの人には
病院で頑張っているのは、患者さんだけではない。
待合室で静かに待ち続ける付き添いの人も、きっと心は張りつめている。
そんな人には、『いぬのことば辞典』をおすすめしたい。
男の子と、かわいい犬のイラスト。 犬の目線でつづられる何気ない毎日に、思わずくすっと笑ってしまう。
笑うことは、案外大切だと思う。
心配ばかりしていると、自分まで疲れてしまうから。
少し笑って、「よし、もう少し付き添おう」と思えたら、それだけでも本の役目は果たしている気がする。
4 病院で働く人にも
待合室にいるのは患者さんだけではない。
先生も、看護師さんも、受付の人も、検査技師さんも、毎日たくさんの人と向き合っている。
もし空想図書コーナーがあるなら、働く人にも一冊貸し出したい。
「いつもありがとうございます。」
そんな気持ちを込めて。
ヨシタケシンスケさんと又吉さんとの共同作
「その本は」
ふまじめなようでまじめなくすっとできる本。
いつも病院で気を配ってくれる看護婦さんや
先生に、ほっと休憩してもらえたらと思う。
こんな風に空想図書コーナーを作っていると
いつも長い待ち時間が少し短く感じた。
病院は居心地があまりよくないけど
お気に入りの本があれば待っている時間も
少し穏やかな空気が流れると思う。
