
東大脳のブラックジョーク――破滅を「深い洞察」に変換する男たち
神楽坂の二度目の夜に、俺はいつも思う。
表通りの提灯は綺麗だが、本当にこの街を支えているのは、路地の薄暗さと、誰にも名前を呼ばれない小さな玄関の灯りだ。
世の中には、派手な提灯を掲げて歩く人間がいる。
東大を出て、大きな会社で肩書きを手に入れ、派手に失敗してからも「俺の経験を学べ」と有料で講釈を垂れる男たちだ。
106億をカジノで溶かした元会長が、オンラインサロンで「金銭感覚を教えてやる」と上から目線で語る。
破滅した張本人が、自らの大失敗を「貴重な教訓」に塗り替えて商品化する。
これが、今の「東大脳」の典型的な自己正当化だ。
俺はそんな記号にログインしない。
学歴も肩書きも、結局は石畳の上で足音を立てて歩くだけのものだ。
夜の神楽坂で聞こえる靴音は、すべて同じ。
酔っぱらい、迷子、帰りたくない家があるやつ。
誰もが、どこかで「三時にサボって戻らなかった」経験を抱えている。
本当の洞察とは、派手な提灯ではなく、路地の暗がりで自分の足音を冷静に聞くことだ。
失敗を美談に変えるのではなく、ただ「失敗した」と認めて、静かに灯りを点け続けることだ。
俺は今も、坂の上で灯りを点けている。
遅すぎる張り紙として。
三時に人生をサボった昔の俺が、夜になっても帰れる場所があるように。
―― 終わり
著者:X虚孤 入稿応募:不二庵