セミになりたくなる午後
晴れていて、少しだけ風がある午後に、たまに壁や柱にくっつきたくなる。
理由を聞かれても、うまく説明はできない。ただ、触れたい、と思う。冷たさを確かめたいのか、そこにちゃんと自分がいることを知りたいのか、自分でもよく分からない。
そのまま額を預けたり、腕をつけたりしていると、なんとなく安心する時がある。
たまに、その延長で「みーん、みんみんみん」とか言ってしまう。完全にセミである。
自分でも何をしているんだろうと思うけれど、その瞬間だけはかなり真剣だ。人に見られたら少し困る。でも、晴れていて暖かい穏やかな日ほど、そうなりやすい。
コアラになりたい時もあるけれど、やっぱりセミが一番しっくりくる。
セミは短い時間を全力で鳴いて、木にしがみついて、生きていることをちゃんと外に出している気がする。私はあそこまで素直じゃないから、代わりに柱にくっついて、少しだけ真似をしているのかもしれない。
のどかな午後ほど、人は変なことをしたくなる。
たぶん、ちゃんと平和だからだ。
