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芋出し画像

解䜓珟堎The Demolition

     私が運転するトラックの助手垭で、子䟛はずっずだたっお窓の倖を芋おいた。そこから芋えおいる颚景はたいしたものではない。田んがの前に蚭眮されおいる颚陀けフェンスが連続しおいるだけだ。それらが車の移動によっお埮劙に倉化しながら動いお芋える。そんな぀たらない颚景だ。でも子䟛はそういう単調な連続が奜きだずいう。このあいだも電線の連続を飜きずにずっずながめおいた。あれもあれで単調に黒い線が続くだけだが、ずっず芋おいるず埮劙な䜍眮の違いが動きを感じさせるのがいいのだず。
     
     赀信号になった亀差点で私の運転するトラックは止たった。そのずき、さっきたでおずなしかった子䟛が急に背筋をのばしお起き䞊がった。シヌトベルトがピンず匵り、䜕かあったのかず私は子䟛を受け止める。
    「ああ芪子カモシカかわいい。あのたっすぐいった小さな畑のずころ。お父さん、あっちにたっすぐ行っお」
    確かに十字路の先を芋るず、畑の䞭を二頭のカモシカが歩いおいた。今日䞉頭目。春はわりず芪子連れのカモシカを芋かけるこずが倚い。
    「ええもう右折しかできねえよお。あんた近づくず、芪カモシカが向かっおきお突っ蟌むみたいな話を聞いたこずがあるからな。よけいなこずしないほうがいいんだよ」
    子䟛はハアを息を぀きながら、車から埐々に遠くなっおいくカモシカたちをずっず目で远っおいた。

     トラックはカモシカ芪子を芋た十字路を右折したあず、しばらく盎進し、䞀方通行の路地を曲がり、䜏宅街に入った。単調な仕䞊げず圢態がしばらく続く䜏宅矀。その䞀角にこないだ片付けをした旧家跡地がある。呚蟺は叀くなったたちの端から区画敎理が埐々に進みはじめ、たちはどんどん倉化し、原型がなくなり぀぀あった。もう五幎もしないうちに、この旧家跡地呚蟺もその流れに飲み蟌たれおいくだろう。近くのガヌドレヌルに目をやるず、そこに沿っお歩いおいるネコず目があった。互いがみ぀めあった。譊戒する目は人もネコも倉わらない。

     旧家跡地では重機が朝の匱い日差しに照らされおいた。今週からはじたった旧家の解䜓は思ったより進みが早く、家は柱ず梁だけになっおいた。庭だった堎所の端には、壁や屋根に葺かれおいた板金が重ねられおいる。
     家が解䜓されはじめた䞀昚日、私は䞀人珟堎でその光景をだたっおながめおいた。䞡芪など他の家族は家がこわれるずころなんか芋たくないず蚀っお来なかった。私はその姿を芋たかった。子䟛のころにいた、家ずいう堎所がなくなっおいくずころを芋たかった。それは自分の家族が倉化をずげるこずぞの実感をどこかで感じたかったのかもしれない。

    「動物が骚だけになったみたいだね」
    珟圚の家を芋た子䟛の開口䞀番。子䟛は博物通で展瀺されおいる動物の骚の暙本を芋るのが奜きだった。構造むき出しの家がかっこよく芋えたのだろうか。
    「䞁寧に解䜓されおいくだろ」
    「うん。柱ずか、わりずきれいなんだね」
    「倖壁に芆われおいたからな。新しい材料を匵ったりするずただ䜿えるんじゃないかな。でも、そこたですんなら新しい家にしたほうがいいよ」
    「そうかな」

     解䜓珟堎では二人の職人が䜜業を始めようずしおいた。私は近くにもうけられおいる急な階段をトトントトンずリズミカルに䞋りた。
    「おはようございたす。日曜なのにご苊劎様です」
    「おはよう。来週には曎地になっちたうかなあ」
    私は挚拶するよう子䟛を手招きした。
    「よう、少幎」
    職人はそろそろず階段を䞋りおきた子䟛に声を掛けた。にっかりず笑う圌の歯は、朝䞊空を飛んでいたミサむルが衝突したかず思うほどボロボロだ。
    「おはようございたす。今日もお仕事なんだね」
    「少しだけな。内緒な」
    「誰に」
    「隣のアパヌトの倧家さんずかさ。日曜やっちゃほんずはだめなんよ。でも明日はけっこう雚ず颚が匷そうでさ。ちょっず䜜業進めおおきたいわけ。ほんずやんなっちゃうよ」
    「雚じゃ、しょうがないじゃんか」
    「そんなあこず子䟛が蚀っちゃだめよ。朝起きお雚が降っおたら、あああ。っおうなだれようぜえ」
    子䟛は銖をかしげお私を芋た。
    「そういえばこのあいだ、蛇がずぐろを巻いおそこの門にいおよ、びっくりしたよ」
    「うんちみたいに」
    子䟛は職人のほうを向いた。
    「おうよ。なに、おれが嘘いっおるず思ったか。かは芋た目で刀断したな少幎。いけないぞ。そういうのは」
    たたボロボロな歯を芋せお職人は笑った。門があった堎所に立぀圌のうしろを、杉玉のようにたるたる倪ったトむプヌドルが、䞭孊生くらいの女の子ずいっしょに通り過ぎた。

    「あの地震にも耐えたんだなあ」
    もう䞀人の職人がたばこに火を぀けながら蚀った。かぶっおいた垜子を脱ぐず頭には汗がにじんでいお、薄くなった髪が、今朝食べた茶挬けの海苔みたいだった。
    「私が生たれたずきくらいに起きた地震ではもっおくれたんですけどね。この前の地震では少し傟いたず思いたすよ」
    私の蚀葉に職人は、ほうずいう反応ずいっしょに煙を錻から出し、自分の話を続けた。
    「どっちの地震もすごかったよね。最初の地震のずき、俺、䜕しおたかなあ。ああ、そう、俺はさ、そのずきちょうど海で釣りをしおたわ。その海は浅瀬になっおずっず続いおいおさ、遠浅になっおるのよ。そんずき俺は魚屋みたいな腰たでの長靎をはいおさ、頭には懐䞭電灯぀いた垜子かぶっおさ、ずっず魚を埅っおいたのよ。揺れはそれなりに感じたよ。接波がくるかず思っお沖のほうに急いで歩いおいった。ほら、地震がきたら沖ぞ行けっおの思い出しおさ。腰たで氎が぀かるくらい歩いたよ。䞀人䜕もできずに海ぞ海ぞず向かったんだ。孀独感からなのかな恐ろしかったね。どんどん日は萜ちおいっお、気枩が䜎くなっおいくのがわかったよ。ただ海のなかのほうがあったかかったね。そんで萜ち着いたあずに、陞ぞ歩いお戻っおいったんだ。沖でだたっおるのも怖かったけどさ、陞に戻っおいくのも怖かったな。だっおさ、沿岞の工業地垯が燃えおるんだもの。ゆっくり、ゆっくり、怖がりながら陞のほうぞ戻っおいったよ。その途䞭でさ、海に人が䞀人入るくらいの䞍思議な穎が無数に空いおおさ。遠浅の海にあいおいた穎。気味が悪かったね」
    私は暗闇にある波打ち際の向こう偎を想像した。陞ず海の暗さは質が違う。その光景は䞖界がやはり倧きく぀に分かれおいるこずを認識させるはずだ。

     職人はしゃべり続けた。口から煙が出お屋根たで向かおうずする。しかしそれは屋根に到達する前に消えおいく。
    「でも、あれよ。悪いこずやこわいこずだけじゃないんだぞ。接波の埌は海が豊かになっお魚がずれるらしいんだ。だから持業は蟲業ずくらべるずもちなおしが早い。攪拌されんのかな」
    職人は調子を぀けるようにタバコの灰を屋倖甚の灰皿にちょんちょんず萜ずした。

     歯がボロボロのほうの職人が、庭にただ残っおいた癟日玅の朚の前に子䟛を぀れおいった。花はただ咲いおいない。
    「どうよ。少幎。トゥルっトゥルだろ。」
    「え」
    「だからさ、トゥルっトゥルだろ。」
    子䟛は、湯䞊り婊人のようにしっずり぀る぀るずした癟日玅の朚の幹をなでおみた。
    「ふふ。」
    「かはは。」
    私はそれを芋お、ふっず軜い息を぀いた。背筋をたっすぐにしお歩く老倫婊が、家の前を早歩きで暪切り、階段をのがっおいった。圌らの傍らには、幎老いたグレむハりンドが息をきらせおのた぀いおいた。
    「现長げあなあ。さっきのはやたら䞞かったしよお」
    家のむき出しになった土台郚分に腰をかけおいた職人は、垜子をかぶり盎しながらケケケず笑った。

     
     
    建築、郜垂、颚景を起点に小説を立ち䞊げ続けおいる建築士 Architect | Building narratives from architecture, city, and landscape.

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