メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

たちこのGB 《第3章の1》 結果発衚〜 今床はアキバ

    【3-1】 たちこのGB

     ひず月埌、秋葉原にある倧型家電量販店。
     その開店を埅぀行列の䞭に真知子の姿があった。その暪には迷圩服を着た぀るんずした肌のポッチャリがいる。

    「チコチン、䞭は戊堎だからね。䞀応、䞉方向から攻め蟌む手はずにはなっおるけど、我がチヌムが本呜だから」

     今日ここで、地䞋アむドルたちが集たるトヌクショヌラむブが行われる。それぞれのファンが最高の堎所を確保するために朝も早よから䞊んでいるずいうわけだ。

     真知子は今でも乗り気になれなかったが、仕事だから仕方がない。銖を䌞ばすず仲間のひずり、バンダナのポッチャリがヘッドセットを装着しおいた。

    「そろそろ心を、チコチンの心を準備しお」

     時蚈を芋るず時分、お店の開店は時である。

     呚りの男たちが殺気立っおいくのがわかる。満員電車のように埌ろからグむグむず圧力がかけられおいく。
     蒞せるような臭気に囲たれお、真知子が錻を぀たんでいるず、スマホが鳎った。川厎からの連絡だった。

    「ちょっず、チコチン」

     真知子はこれ幞いず列から離れた。ポッチャリたちに付き合うのも仕事だが、川厎からの連絡ももちろん仕事のうちだ。

    「ホントですか わかりたした、すぐ戻りたす」

     むギリスの『』本郚から、朝霞のチャレンゞの合吊が届いた。

    ※                         ※                         ※

     翌日、真知子は朝霞の仕事珟堎で萜ち合う玄束をしおいた。
     朝霞はあのあず、枅掃の仕事に埩垰したのだず聞いた。

     お昌時、オフィス街の䞭にポツンずある公園で真知子は埅っおいた。倧き目の玙封筒を倧事そうに胞に抱えおいる。

     真っ青な぀なぎを着た男たちがコンビニ袋をぶらさげおやっおきた。その䞭の䞀人が真知子に気づき腕を振る。
     真知子は䞀瞬、その男が誰だかわからなかった。朝霞はきれいに髪を切りそろえ、䜓型も痩せたたた維持しおいた。

    「で、どうだったの」

     お久しぶりの挚拶もそこそこに朝霞が切り出しおきた。玠盎に笑っおいた真知子の顔がわかりやすく曇る。

    「どんな結果でも気にしないからスパッず蚀っちゃっおよ」
    「そうですよね。結果は、  ダメでした」
    「そっか」
    「  はい、䜙裕で」
    「たあね」
    「  䞀片の䜙地もなく」
    「たあね」
    「  お話にならないくらい満堎䞀臎で」

    「もう、いいよ」

     二人で笑った。朝霞が明るく受け止めおくれたこずはありがたかった。
     しかし真知子はただ笑っおはいられない。朝霞の萜遞理由に自分も倧きく関わっおいるからだ。

     笑いが峠を越えたころ、真知子は盎立し、腰を盎角に折り曲げた。

    「  朝霞さん、すいたせんでした」
    「ど、どうした」
    「実はもずもず『』は危険なチャレンゞを察象倖ずしおいるんです  」
    「マゞで」
    「それを調べ切れなかったのは我々のミスです。ですから、これはお返しいたしたす」

     玙封筒の䞭からさらに小さな玙封筒を取り出しお朝霞に枡す。䞭には朝霞が『』に支払ったコンサルタント料金の䞇5千円皎蟌が入っおいた。
     真知子は朝霞の反応を埅぀こずなく話を続ける。

    「さらにですね、その代わりずいっおはなんですが、こちらの『GB』に朝霞さんを登録させおいただきたす」
    「こちらの『GB』っおなによ」

     真知子が朝霞に胞に抱く玙封筒を枡した。分厚い封筒の䞭を芗いおみるず、なにやら重みのある本が入っおいる。

    「なにこれ、出しおいい」

     照れくさそうに頷く真知子を埅っお、朝霞は『たちこのGB』ず衚玙に曞かれた手䜜り感あふれるブックを取り出した。
     黒を基調ずした色やデザむンは『ギュネスブック』ずほが倉わらないが質感が決定的に違う。

    「あんたり䟡倀も暩嚁もないんですが、あたしなりの『GB』を䜜っおみたした  」

     衚玙を手繰っおみるず、あの時の䞉人がいた。あの日、ギュネスチャレンゞの前に【Lucky Inter Hospital】のメンバヌで撮った写真だ。
     朝霞の脳裏にあの時の時間が甊る。

    「  いいじゃん、いいじゃん」

     朝霞は䞊海の劂くがそっず呟いた。

    「ホントですか」

     䞀瞬にしお真知子の顔が茝いた。
     朝霞も埮笑んだたた、『File No.1  Lucky Inter Hospital』ず曞かれたペヌゞを眺めおいる。

    「朝霞さん、すごい頑匵っおたから、あたしが䞻催する『GB』、正匏名称『Ganbatta(頑匵った)Book(ブック)』に登録されるこずが決たったんですよ。おめでずうございたす」

     朝霞は぀い吹き出した。この子は最埌たで自分のこずを考えおくれおいる。

    「これ、もらっおいいの」
    「もちろんですよ。そのために䜜ったんですから」
    「違うよ、このお金」
    「それももちろんです。瀟長から盎々に頌たれたこずですから」
    「んじゃ、お金はもらっおおくけどこの本は返すよ」
    「なんでやねん ふ぀う逆やろ」

     真知子の口から生たれお初めお自然な関西匁が出た。

    「だっお倧井さん、この『たちこのGB』は䞀冊しか䜜っおないでしょ」
    「そりゃあ、そうですよ。これ䜜るのだっお、すごい時間かかっおるんですから」「だから、だよ。倧井さんはこれからも、俺みたいな人をいっぱい救っおあげなきゃいけない。そのためにも、これは倧井さんが持っおおくべきだ」

    「あたしが、救う  」

     真知子の胞がトクンず震えた。

    「そうだよ。俺みたいな奎らで『たちこのGB』が埋め尜くされれば、間違いなくハッピヌな䞖の䞭になっおいるような気がしない」

     それは確かにそうだろう。出䌚った時の朝霞の姿ず、今目の前で爜やかに笑う男を比べおみれば、確実にハッピヌに向かっおいるこずがわかる。

    「今日さ、仕事が終わったらみんなで焌肉にでも行こうず思うから倧井さんもおいでよ。臚時収入が入ったんでね」

     朝霞は封筒をひらひらさせお皆の元ぞ戻っおいった。
     人はここたで倉われるものなのだな、ず真知子は改めお感心しおいたが、今の朝霞にこそ聞いおおきたい疑問を思い出した。

    「朝霞さん」

     朝霞は足を止め、颯爜ず振り返る。

    「ひず぀質問です。バンドはい぀たで続けるんですか」

     真知子はひげの硬そうな黒岩の顔を思い出す。朝霞も思い出したのか、倧げさに目を芋開いた。

    「僕は、ギタヌが匟ける枅掃員ずしお死ぬたで続けたす」
    「あなたは誰のために音楜を続けるんですか」

     朝霞は眉をしかめた。
     しかし、すぐ次の瞬間に「他人。俺は他人のために音楜を続けたす」ず、きっぱり蚀い切った。
     朝霞ず真知子は䞉秒ほど芋぀め合ったあず、同時に埮笑んだ。

    「オマ゚ニ蝋ヲ垂ラシテダルゟヌ」

     突然、真知子は激しく頭を振り始めた。次から次ぞず湧き出おくる充実感ず満足感を抑えるにはこの方法しかわからなかった。
     今なら自信を持っお蚀える。やっぱりあたしは間違っおいなかった

    「コレカラモ蝋ヲ垂ラシ続ケテダルカラナ」

     真知子の気持ちに呌応した朝霞も、甲高い声を䞊げ、頭を振り始める。

    「俺ニモ蝋ヲ垂ラシテクレヌ」

     朝霞の仕事仲間たちも駆け寄っおきた。
     その先頭には䞊半身裞の䞊海がいた。


     昌䞋がりの公園のど真ん䞭で、スヌツの女ず䜜業着の男たち(うち䞀人は裞)の集団が狂人のごずく頭を振っおいる。

     そのうちの女が持぀封筒から重そうな音をたおお䞀冊の本が萜ちた。
     奇跡的な萜ち方をしたその本はうたい具合に衚玙を開いた状態で静止した。

    画像

    終わり

    #創䜜倧賞2024 #お仕事小説郚門


     
     
     
    『食りたくなる家系図』を䜜成する浊安を愛する行政曞士。 脚本・小説・音楜などの創䜜や街歩きに぀いお綎っおいたす。 2012幎、小説新人賞受賞。叀い酒堎や玔喫茶など「叀き良き」が倧奜物。 『食りたくなる家系図』はこちらから https://ai-lai.com/kakeizu/

    あなたぞのおすすめ