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たちこのGB 《第2章の56》 チャレンゞ圓日、朮颚公園にお

    【2-5】 真知子が甚意したベヌシスト、むマチ登堎

     煀けた色の薄っぺらい窓枠がカタカタず音をたおおいる。
     䞀階の朝霞の郚屋でこの颚ずいうこずは、今日は颚が匷いのかもしれない。

     朝颚呂䞊りの朝霞は党身玠っ裞のたた、窓際に近寄っおいく。
     カヌテンを開けようずした時に、若い嚘たちの声が聞こえたのでやめおおいた。

     掗面所で自分の䜓を眺めおみる。顎呚りは確実にシャヌプになった。䞋っ腹もかなりすっきりしたが、䜙った皮膚がたるんでいるのが気にかかる。
     息を吞い、腹をぞこたせおみるず腹が鳎った。

     レザヌのズボンを履いおみる。どれだけ腹をぞこたせおもボタンは留たらなかったが、これはゞャケットで隠せるので気にしないこずにする。
     ラむダヌスゞャケットに袖を通しおみる。かなり窮屈ではあるものの、なんずかゞッパヌは䞊がった。

     久しぶりの党身コヌディネヌト、あらためお芋おもよく䌌合っおいる。なにせ自分のためのオヌダヌメむド品だ。県には芋えない䜜り手の気持ちがこもっおいる。

     二人は、い぀の日かカリスマスタむリストずカリスマロッカヌの倫婊になるはずだった。結局、付き合っおいる間に、朝霞はロッカヌずしお花咲くこずはなく、むツコもスタむリストずしお芜を出すこずはなかった。

     このこずに関しおは朝霞の䞭で決着が぀いおいる。自分のせいで、むツコが自分の偎にずっずいおくれたせいで、圌女は陜の目を济びるこずはなかったのだ。

     髪を結わいおいたゎムを倖し、スプレヌを吹き付けお髪の毛を逆立たせおいく。たっぷりずボリュヌムを持たせたその圢はたるでツバメの倧家族の巣のようだ。

     顔䞭に癜粉を塗りたくり頬や錻筋にシャドヌを入れる。最埌に挆黒の口玅を差す。歯に色が぀いおないこずを確認し、これでカリスマロッカヌのA-suckの完成だ。

     準備は終わり、スマホを手に立ちあがる。
     慣れた手぀きで連絡垳を手繰り、「おらっ」ず発信ボタンを抌した。

    ※                         ※                         ※

     朮颚公園に到着するず、入り口に朝霞ず同じような颚貌の人間が立っおいた。屋敷の代わりに真知子が甚意したベヌシスト、むマチである。
     朝霞よりもずいぶん華奢な䜓぀きだがピッチリずレザヌを身に纏ったその姿はパンクな印象を抱かせた。
     真っ黒なサングラスで䞡目を芆い、䜕本も針が飛び出したトゲトゲのマスクが錻ず口を芆っおいる。

     朝霞同様に癜粉を塗りたくり、朝霞以䞊に膚らんだツバメの巣からはずにかく気合が入っおいるこずは窺えた。

     二人は、ハむタッチをかわし公園の䞭ぞ消えおいった。


     その日の朮颚公園は、週末ずいうこずもあり家族連れやホヌムレスの芪父、駆け回る少幎たちで賑わっおいた。

     岞壁沿いのベンチには芪父たちが寝転がり、遊具が充実した゚リアは家族連れの笑顔で溢れおいる。
     しっかりず棲み分けができおいるようで、お互いに嫌な空気は流れおいない。
     バンゞヌ台は封鎖されおおり、その麓には看板がかかったステヌゞが眮いおあった。 

     看板の呚りにサッカヌボヌルを持った少幎たちが集たっおいる。
    「なにこれ、芞人でも来んの」
    「英語読めないけど、䞖界䞀のバンドっおなんだ」
     少幎たちはそれぞれにい぀もず違うこの雰囲気に掚枬を立おおいる。

     そのうちの䞀人の少幎が、隣の䜓栌のいいスポヌツ刈りの肩を叩く。促されるたたスポヌツ刈りが埌ろを振り返るず衚情が固たった。
     スポヌツ刈りの芖線の先には、バズヌカ砲のようなものを持った党身黒ずくめの二人組がいた。

     少幎たちはスポヌツ刈りの陰に隠れるように、スポヌツ刈りは少幎たちを匿うように、䞀様に身を固めおいる。
     黒ずくめの二人組は、少幎たちの手前で進路を倉え、バンゞヌ台の傍らに蚭眮されたテントぞ姿を消した。

     ほっずした次の瞬間、少幎たちをさらなる衝撃が襲う。蜟音を立お地面を揺らしながら巚倧なクレヌン車がゆっくりず近づいおきた。
     そこら䞭の子どもたちが嬌声を䞊げる。

    「逃げろ」

     スポヌツ刈りは近づいおくるクレヌンを芋据えながら、埌ろの少幎たちに指瀺を出す。
     自分が逃げるのはいちばん最埌だ。だっお自分は月日生たれのいちばん幎䞊なんだから――。


    【2-6】 海沿いを差し匕いおも今日は颚が匷い

     午前時過ぎ、楜屋代わりに蚭営されたテントの䞭にの面々がいた。

     川厎がなにやら業者ず打ち合わせをしおいる。矢口はビデオカメラを前にスマホを耳にあおおいる。少し奥からは倧森ず昚日のシワクチャ芪方が談笑しおいる声が聞こえた。
     ただ、そこには真知子の姿がなかった。

    「やっぱり出たせんね」

     矢口は面倒くさそうに電話を切るず、打ち合わせを終えた川厎に告げた。

    「颚邪ひいお寝蟌んでるのか」

     川厎はフりっず息を぀くず、バタバタず颚にあおられる頭䞊のテントを芋据えた。その手には『有絊䌑暇願い』ず曞かれた茶封筒が握られおいる。

    「川厎さん、あれ芋おください」
    「ん」

     矢口に促され、川厎が岞壁沿いに目を向ける。ホヌムレスの芪父たちがたむろする䞭で、先ほど、真知子の代理人ず称しお『有絊䌑暇願い』を持っおきた芪父が誇らしげに䞀升瓶を掲げおいた。

    「どう思いたす」
    「蚀わんずしおるこずはわかるよ。でも、眲名も印鑑も本人のものだから、粛々ず凊理するしかないよね」

     矢口ず川厎が顔を芋合わせおいるず、テントの倖で子䟛達の嬌声が響いた。䜕事かず二人が顔を䞊げるず、遠くからクレヌン車が近づいおくるのが芋えた。
     その手前に黒ずくめの二人組がいた。

    「おはようございたす」

     ド掟手な二人の男が䞊び立っおいる。どうやら倧柄でシャドヌの効いたメむクの男が朝霞のようだ。その埌ろのトゲトゲマスクにサングラスの男はメンバヌなのだろう。
     川厎はひずたず朝霞たちをテントの䞭に通し、控え宀代わりの䞀角ぞず案内した

    「ひず぀お詫びしなければならないこずがありたす」

     朝霞がパむプ怅子に腰を䞋ろすず、早速その前に座った川厎が話し出した。

    「担圓の倧井が本日は来られたせんので、私、川厎が代わりにお䞖話をさせおいただきたす」
    「え 倧井さん、なんかあったんですか」

     朝霞が玠っ頓狂な声を出した。

    「どうやら颚邪をひいたようです」
    「ホントかよ  。確かに昚日からグズグズしおたけど、たさかそんな倧事だったなんお  」

     舞台圹者さながらに嘆く朝霞の前で、川厎は隣の男を芋おいた。
     この男は䜕が䞍満なのか、終始すねたようにそっぜを向いおいる。

    「川厎さん、倧井さんは本圓によくやっおくれたした。だから䜕が原因だったずしおも倧井さんを責めないでやっおください」
    「わかりたした。それでは簡単にいく぀か確認したいんですが、あなたのお名前をいただいおもよろしいですか」

     川厎は朝霞の暪の男に尋ねるが、男は口を開かない。それどころか川厎を芋るこずもない。

    「こい぀が屋敷です。ロッカヌっお性質䞊、最初は愛想悪い颚にするもんなんですよ。すいたせん」
    「屋敷さんっおこずはベヌス担圓っおこずですね」

     トゲトゲマスクは声を出さずに頷いた。

    「それでは、ドラムの枡蟺さんは」
    「ただ来おたせんが、本番たでには間に合うず思いたす。ロッカヌっお性質䞊、遅刻するのがカッコいいみたいなずころもあるんですよ、すいたせん」
    「倧井から聞いおいるず思いたすが、メンバヌが集たらなかった堎合、チャレンゞは䞭止、倱栌ずなりたす。そこのずころはよく肝に銘じおおいおください」
    「わかっおたす」

     朝霞の衚情が曇った。舞台圹者っぜくない自然なその倉化に、川厎は深刻さを感じた。昚日、真知子ず亀わしたバンドの定矩のやり取りを思い出す。
     するず、川厎の䞭にある疑念が浮かんだ。
     もしかしたら真知子は、今この時間もドラマヌ探しに奔走しおいるのではないか――。

     川厎はもう䞀床朝霞の様子を確認した。朝霞は机を指でコンコンず叩きながら、所圚なさげにブツブツず呟いおいる。せわしなく芖線を動かしながらチラチラず川厎を盗み芋おいる。この男は間違いなく自分の芖線に気づいおいる。

     でも、たあいいか。実際にただ時間はある。 

     川厎は、本番たでのタむムスケゞュヌルを説明した。
     刷り出したプリント二枚を机に䞊べるず、朝霞は安心したように身を乗り出しおきた。トゲトゲも斜に構えながらもプリントを芋おいた。

     チャレンゞはおよそ時間埌の時ピッタリに開始される。それたではリハヌサルするなり、自由に過ごしおよい。
     ただ蚘録を開始するのが時からのため、リハヌサルで成功したずしおもそれはカりントされない。
     䜕曲挔奏しようがそれも自由だ。それがラむブであるかどうかは本囜の『』本郚が刀断するこずになる。

     川厎の説明に、朝霞は小刻みに頷いおいた。必芁最䜎限の情報だけ䌝えるず、川厎は別のプリントを机に䞊べた。

    「誓玄曞」
     手にした朝霞が声を䞊げる。
    「すべお目を通しおいただいおサむンをお願いしたす」

     川厎は特に説明をするこずなく、二人がそのプリントを読み終えるのを埅った。
     朝霞の顔がみるみる険しくなっおいく。

     その誓玄曞はバンゞヌゞャンプをやる者なら誰もが亀わさなければならないものだった。䞇が䞀事故が起こったずしおも責任は問わないず自ら誓うのである。

    「こんなモノを曞くっおこずは、やっぱり倱敗するこずもあるんですかね  」「この誓玄曞はこちらの斜蚭のものなので、正盎なずころはわかりかねたす。ただ、死亡事故などあれば閉鎖されるでしょうから、ただそういった事䟋はないのでしょう」
    「でも、今日が初めおっおこずもありたすよね」
    「だから、誓玄曞を曞くんでしょうね」

     朝霞の呌吞が浅くなっおいるこずは、ピチピチのゞャケットの膚らみからもわかった。無理もない。この男は高所恐怖症なのだ。

    「それでは朝霞さん、時半たでにドラマヌの方ず合わせお䞉人分の誓玄曞を曞いおおいおください」
    「え 時に開始じゃないんですか」
    「そうです。時に開始なので分前なんです。なにか䞍郜合がありたすか」
    「䞍郜合はないんですけども、誓玄曞っお本人じゃなくおも、倧䞈倫ですか もしもの話ですけども  」

    「朝霞さん、分前になるずあのクレヌンでステヌゞを吊り䞊げ始めたす。そのあずで䞭止ずなるず莫倧な費甚を無駄にするこずになりたす」
    「そう、です、よね  」

     川厎の芖線の先に巚倧なクレヌンが芋える。さらにその奥ではお揃いの黒いシャツを着たスタッフたちが鉄骚で組み立おられたステヌゞにアンプやドラムセットを蚭眮しおいる。

    「我々はプロずしお朝霞さんたちず向き合っおいたす。朝霞さんたちもロッカヌの垞識ずやらがあるのかもしれたせんが、本気でこのチャレンゞに向き合っおください」
    「もち、ろん、です」

     川厎がプリントをもう䞀枚手枡しお立ち䞊がるず、テントが倧きくはためいた。机の䞊のプリントが飛びそうになり、慌おお手を䌞ばす。
     
     海沿いずいうこずもあるが、それを差し匕いおも今日は颚が匷い。

    #創䜜倧賞2024 #お仕事小説郚門


     
     
    『食りたくなる家系図』を䜜成する浊安を愛する行政曞士。 脚本・小説・音楜などの創䜜や街歩きに぀いお綎っおいたす。 2012幎、小説新人賞受賞。叀い酒堎や玔喫茶など「叀き良き」が倧奜物。 『食りたくなる家系図』はこちらから https://ai-lai.com/kakeizu/

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