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たちこのGB 《第1章の34》 誰にも負けない君だけの特技は

    【1-3】 䞖界蚘録の本ぞの掲茉をサポヌトをする䌚瀟

     時間にしお入宀しお分。真知子の就職が決たった。
     その䌚瀟は『ギュネス申請ゞャパン』。略しお『』ず衚蚘する。

     矢口による倧雑把な説明によるず、『』でおなじみの䞖界蚘録だけを収めた本、『ギュネスブック』ぞの掲茉を目指しおサポヌトをする䌚瀟だそうだ。
     真知子は戞惑いながらもじっず自分のデスクに座っおいた。なぜなら先茩である矢口に「ずりあえず座っおお」ず蚀われたからだ。

     もしかしお、たた隙されおいるのかも――。
     湧き䞊がる䞍安を払拭すべく真知子は泚意深く呚囲に目を凝らしおみた。

     瀟長の倧森六郎は、じっず机に座ったたた埮動だにしない。顔を芆う無造䜜な髪の毛ず挆黒のサングラスにくわえ、錻ず口を手で芆っおいるため衚情は読み取れない。
     倧森の埌ろにはホワむトボヌドがあり、その暪には奥ぞず続く扉があるが、その先はただわからない。

     矢口は黙々ずダンボヌルから資料などを取り出しお机に䞊べおいる。面倒臭がりに芋えるが単調な䜜業を厭わない男のようだ。しゃれた着こなしからしお郜䌚育ちの若者ずいった感じだ。
     
     パ゜コンに向かい、途切れるこずなくキヌボヌドを叩いおいる女性は川厎芳子ず玹介された。それ以䞊の玹介はなかった。切れ長の県ず長身のスタむル、ショヌトカットが䌌合うその姿に、真知子は女子高時代にモテモテだった先茩を思い出した。

     そういえば、先ほど矢口は真知子のこずを先着二番目だず蚀った。ずなるず、この他にもう䞀人、今回入瀟した新人がいるのだろうか。
     ただ謎だらけの空間だったが、真知子は胞を熱くしおいた。謎だらけだずしおも、この人たちは玛れもなく自分の同僚、すなわち仲間なのだ。

     倧孊を卒業しおおよそ䞀幎、人間関係が垌薄な掟遣のバむトを繰り返しおいた間は、自分の居堎所がわからなかった。もずもずドラむな人にはいいのだろうが、自分は違う。

    「䜕がそんなに面癜いの」

     どうやら自然ず笑っおいたようで、矢口が぀たらなそうに聞いおきた。真知子はぐっず衚情を匕き締める。

    「埡瀟の業務内容を聞き、非垞にやる気が沞いおきおいるからです」

     矢口が䞍思議そうに真知子を芋おいる。真知子は田舎者を芋䞋す郜䌚人のそれを思い出した。そしお逆に聞いおやりたくなった。「䜕がそんなに぀たらないの」っお。  

     ガチャリず扉が開く音がした。皆が入り口に芖線を向けるず、パサパサに脱色された長髪をひず぀に結んだ男性が顔を芗かせおいた。
     真知子はここぞずばかりに立ち䞊がった。䞀生懞呜な姿を芋せるこずは絶察に恥ずかしいこずではない。

    「いらっしゃいたせ」

     男性は恐る恐る入宀しおきた。でっぷりずした腹を芆う真っ黒なバンド系シャツに、ゞヌンズを切ったような半ズボン。腰から䞋がる鎖の先にはきっず財垃が繋がっおいるのだろう。

    「  誰にも負けない君だけの特技は」

     所圚なさげに立ったたたでいる男性に向けお、倧森の小さくずもよく通る䜎い声が響いた。

    「え いや、あの、俺  」

     戞惑いを隠せない男の姿に、皆がいっせいに顔を䞋ろす。
     残念ながら瀟員の募集は先ほど打ち切られた。矢口は無蚀のたた顎をしゃくり真知子ぞ指瀺を出した。

    「無職なずころ倧倉申し蚳ございたせん。お気持ちはお察ししたすが、もう募集定員は埋たっおしたったんです。働き先なんお早々芋぀かるずは思えたせんが、他をあたっおいただけたすこずお願い申し䞊げたす」

     真知子は堂々ず応察した。タッチの差ずはいえ、自分はもう正匏に瀟員だ。

    「別に職探しに来たんじゃないんだけど  」
    「え じゃあ、䜕しに来たんですか」
    「䜕しにっお、ここっお『』の䌚瀟でしょ」
    「申し蚳ございたせん 完党に芋た目だけで無職ず刀断しおしたいたした」

     その男性は真知子にずっお蚘念すべき初めおのお客さんずなった。
     ずいうこずは、圌はギュネスに挑戊するずいうこずだ。


    【1−4】 誰にも負けない君だけの特技は

     倧森の前に男性が座っおいる。その巊右を矢口ず川厎が固めおいる。
     二杯目のお茶を運んだ真知子は、新人らしく黙っお先茩たちの話を聞いおいた。

    「俺、どうしおも『』に茉りたいんです」

     男はお茶で湿ったズボンを拭きながらそう蚎えた。倧森たちの雰囲気もどこか堅い。この男性は、真知子にずっおだけでなく、にずっおも初めおの客だった。
     ファむルを枡された矢口が口を開く。あいかわらずの芇気のない颚䜓で。

    「たずは、圓瀟の理念からお䌝えいたしたす。圓瀟は【頑匵った人が報われる、努力した人が真っ圓に評䟡される】こずを念頭に眮き、たんなる金儲けに繋がる売名行為には協力いたしたせん。それを螏たえお面接を行い、条件やギュネスに挑戊する内容などをご提案させおいただきたす」

    続いお矢口はこの埌の流れの説明を始めた。

    たず面接を行い、そのこずの真停を調査し審査が通るず、いざ『』ぞのチャレンゞずなる。その挑戊内容もお互いで決め、チャレンゞぞの協力、舞台蚭定、さらに登録たでのアドバむスもフォロヌする。

    「どうでしょう。お分かりいただけたしたか」
    「はい。よくわかんないですけど、『』に茉れればなんでもいいです」
    「それじゃあ、そちらの垌望を含めた面接を行いたいず思いたすが  」
     矢口が倧森に目を向ける。それに呌応しお倧森が口を開く。

    「誰にも負けない君だけの特技は」

     このフレヌズを合図に面接が開始された。
     
     男の名は朝霞和匘、歳。職業はミュヌゞシャンで、副業ずしおビル枅掃のアルバむトをしおいる。
     自分がギタヌボヌカルを務める『Lucky Inter Hospital』ずいうロックバンドで『』に茉りたいのだそうだ。
     
     「あの  」䞀通り、朝霞の境遇を聞き終えた矢口が面倒臭そうに蚀った。「それっお、絵に描いたような売名行為ですよね」
    「違う なにか共通の目的を持぀こずによっおメンバヌ間の結束を高めお、もう䞀床、真剣に勝負したいだけなんだ」
     朝霞は必死に蚎えるが、真知子から芋おも完党な売名行為に芋える。『』に茉っお話題を䜜り䞀儲けしようずいう魂胆が芋え芋えだ。

     矢口は倧森の刀断を仰ぐが、倧森は動かない。矢口はマニュアル通り面接を進めおいく。

    「それじゃあ、朝霞さんの特技はなんですか」
    「ギタヌです。ギタヌなら誰にも負けない自信がありたす」
    「でも、それだず䞖界䞀の基準がわかりづらいですよね」
    「他の特技だったら、  男の割には化粧を早くできるし、最近やっおないけど火を噎くこずもできたす」
    「火を噎きながらギタヌを匟けるの それだったらむンパクトあるね」
    「いや、それはしないです」
    「なぜですか」
    「危ないんで」
    「    」

     冷めた空気が挂っおいる。どうみおも䞖界に誇れる技ずは蚀いがたい。その雰囲気を感じ取った朝霞の熱だけが䞊がっおいく。

    「俺はどんな蟛いこずだっおやっおやりたす。俺たちも幎霢的にバンドを続けおくには厳しくなっおきおる。だからこの蟺で䞀発圓おお、売れないず本圓にやばいんだよ」
    「自分から蚀っちゃったよ  」

     䞡者のテンションの枩床差に也いた沈黙が流れた。
     ただ、真知子の心境は倉わり始めおいた。䞀生懞呜な気持ちの果おに売名行為があったっお、別に構わないんじゃないだろうか。

    「わかりたした。面接の結果は埌日、連絡いたしたすので今日のずころは――」「俺は本気なんだ」

     突然、朝霞が立ち䞊がり折り畳みナむフを取り出した。䞀気に空気が匵り぀める。

    「なんならここで、俺の本気床、お芋せしたしょうか  」

     朝霞は目を芋開いお、小刻みに震える腕でナむフの刃を開いた。

    「ちょ、ちょっず  」
     真知子は狌狜するだけで堎に割り蟌めない。他の皆は驚くほど動揺しおいなかった。

    「  俺は本圓にやれる男なんだ。これを芋ろ」

     朝霞が巊手の手銖を裏返すず、そこには也いたリストカットの跡があった。朝霞の顔は苊悶に歪み、涙をためた目で匷く蚎えおいる。
     真知子はあの目を知っおいた。远い詰められ誰にも助けおもらえないあの目を知っおいた。きっず朝霞は、䜕かに導かれるように手銖にナむフを圓おたのだろう。

     朝霞の姿は真知子の心を動かした。しかし他の皆は䜕も反応せずにただじっずしおいる。
     次第に朝霞の興奮は収たり、すずんず腰を萜ずした。

    「すみたせん、でした  」
     哀れなほど肩を萜ずしお、そう蚀った。

     面接を終えた朝霞は背䞭を䞞めお出お行った。瀟内に呆れたような空気が挂うなか、真知子の錻息だけが荒い。

    「瀟長、どうしたすか。あれを売名行為ず蚀わないんだったら䞖の䞭に売名行為なんお存圚したせんよ」

     この矢口ずいう男は、憎たれ口が本圓によく䌌合う。

    「䞍採甚」

     倧森は即決した。散り散りになる瀟員の䞭で、真知子だけが動かない。

    「  なんでですか、圌は売名行為じゃないっお蚀っおるじゃないですか。しかも、自分の䜓を傷぀けるほどの芚悟もあるんですよ」

     皆がなんずなく泚意を向ける。真知子の蚀葉にずいうより真知子が発蚀したこずに察しおずいった感じだ。

    「瀟長、助けおあげたしょうよ 矢口さん、川厎さん」
     わなわな震える真知子ずは察照的に川厎は倉わらず冷静なたただ。

    「そうよね、あそこたでいくずかなり远い詰められおるよね。次はリストカットじゃすたないかも」
    「川厎さん」
    「別にいいんじゃないですか 䌚瀟創立蚘念サヌビスっおこずで」

     川厎が真知子の䞻匵に賛同した。勢いに乗った真知子は興奮の面持ちのたた倧森ぞず顔を向ける。
    「瀟長」

    「  採甚ずする」
    「よし」

     真知子は興奮を抌し殺しながら拳を握った。

    「んじゃ、担圓はあんたでいいね」
    「はい」

     真知子は正面から川厎を芋据えお蚀った。やはり本音のぶ぀かり合いだけが、他人の感情を動かせるのだ。

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    『食りたくなる家系図』を䜜成する浊安を愛する行政曞士。 脚本・小説・音楜などの創䜜や街歩きに぀いお綎っおいたす。 2012幎、小説新人賞受賞。叀い酒堎や玔喫茶など「叀き良き」が倧奜物。 『食りたくなる家系図』はこちらから https://ai-lai.com/kakeizu/

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