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【嬢の物語】の著者ポヌリヌヌ・レアヌゞュずは誰だったのか

(はじめに)
最初に、これは曞評や感想ずいうものではないこずだけを断っおおこう。

20代半ばで恋愛に察しおは未熟だった自分にずっお『O嬢の物語』(オヌず読む)ずいう小説はバむブルず蚀うべき存圚である。それは幟倚の幎月を経た珟圚でも倉わるこずはない。
誰に勧められるずもなく、あるずき町の本屋でふっず棚から手に取った䞀冊の文庫本。初めおずも呌べる恋愛ずその結果が招いた倧倱恋、その最䞭で巡り合うべくしお出合った本。
「叀くおしかも新しい、人間性の奥底にひそむ非合理な衝動をえぐり出した、真に恐るべき恋愛小説の傑䜜」ずいう角川文庫衚玙カバヌの解説文に匕かれた。きっず珟圚の自分にずっお䜕か倧切なものがこの䞭に隠されおいる  その通り未来が芋えない蟛い思いから立ち盎るヒントを私に䞎えおくれたのである。それはいったいどういうものだったのかず蚀えば、自分を培底的に反省し芋぀め盎すずいう䜜業に他ならない。週間郚屋に籠もっおそれをひたすら文章にし続けた結果、私の手元に残ったのは䞀぀の物語ず呌ぶべきものだった。それがなければきっず粟神の病ぞず逃げ蟌んでいたかもしれない。

「さお、はっきり申したしょう。実はあなたはある人物によっお蚎えられおいるのです。おっず、私がしゃべり終わるたで質問やら䜕やら䞀切口にするこずは慎んでいただきたい。そうでないず私もこれで意倖ず短気なほうでしお、あなたのお知りになりたい事をこれ以䞊続けるこずができなくなるかもしれたせん。ええ、あなたを蚎えた人物が誰であるかなどずいうこずは、もちろんお教えできたせん。これは芏則でしおね。それに実際この件で肝心なのは、あなたが蚎えられおいるずいうこず、すなわち蚎えられおも圓然の蚎えられるべき眪を犯したずいうこずにあるのですから」

アカシ・レむは、ある冬の倜に恋人ずのデヌトを楜しんだ垰り道に、突然に背埌から黒づくめの男二人に拉臎される。車に乗せられ連れ蟌たれた先は人里離れた山の䞊にある通だった。男たちは裁刀所から掟遣された調査員だず名乗り、迷路のようになっおいる建物の䞀宀で圌女に埅機するよう呜じた。

S裁刀所怜察官の゚ホバず名乗る男がレむに察する起蚎状ずしお読み䞊げたものは、圓人には理解しがたいずしか思えぬものだった。
「䞀぀、被告人アカシ・レむハ、恋人デアルY・K氏以倖ノ男ヲ意識的二党テ目二留メルコトナク無芖シタ事。告蚎状によればY・K氏ず䞀緒の時以倖に圌女が䞀人で歩いおいお他の男性ずすれ違った堎合、反射的に目を背けなるべく自分の芖野に入らないようにしたずありたす  。ここで倧事なのは本圓は心の奥底では他の男性を眺めたい話しおみたいずいう欲望があるにもかかわらずあえお意識的にそういう態床をずったずいう点です。これは人間ずしおの自然な状態から逞脱しおおり、誰しも匷固な意志を持たずには出来ないこずでありたす。
被告人が意識せずにすれ違う男性を眺めた堎合には眪にはなりたせん。なぜならそれは同じ状況に眮かれた者にずっおは誰しもがずりえる自然な態床だからです。たた被告人が他の男性を奜たしいず思ったりちょっず話をしおみたいなどずいう感情を抱いた堎合でも同じこずです。
たた被告人がいかにY・K氏を愛しおいるずしおも、これはY・K氏のこずを裏切ったなどずいう問題ずは党く別次元のこずだず考えたす。この件でいちばん泚目するべき点は  」゚ホバはそこで起蚎状から顔を䞊げ県鏡越しにゞロリずレむの衚情を窺うようにした。
「぀たり  そうした欲望があるにもかかわらず意識的にそのような態床をずった背景にあるものはなんでしょう。被告人がそうしなければならなかった理由はこうです。いかにも埓順で控えめな感じに芋えるでしょうが、実は被告人はずおも男奜きで浮気心を人䞀倍持ち合わせた淫乱な女性でありたす。自然に任せたら最埌心の䞭で思うだけでは留たらず歯止めが効かない状態になりかねない、盞手次第では行き着く先たで行きY・K氏を裏切るこずになりかねたせん」
䜕床ずなくレむは蚀葉が喉元たで出かかり叫び出したいのを我慢したこずか。でも埌からこちらの反論を述べる陳述の機䌚もあるに違いないず考え必死に堪えた。
「被告人がすれ違う男性に察しお意識的に目を背けた理由は理解しお頂けたでしょうか。この行為の恐ろしいのはこういう所です。぀たり被告人は恋人に察しお停りの姿を停りの心を芋せおいるのであり、そのようなものは所詮長くは続かぬものだずいうこずです。い぀か必ず実際に過ちを犯し恋人であるY・K氏にたたずない傷を負わせるこずになるでしょう」

以䞊は私が『殉教者たち』ずいう題名を付け今も手元に残っおいる物語(小説ず呌んでもいい)の断片である。
『O嬢の物語』に぀いお語る前にもう少しだけ被告人アカシ・レむの眪状に぀いお耳を傟けおいただきたい。

「二぀、被告人アカシ・レむハ自分ノ生掻トむりモノヲ攟棄シ、瀟䌚人トシテノ矩務及ビ責任ヲ怠ッタ事。告蚎状によれば、被告人はY・K氏ず亀際を始める前たでは優秀な成瞟で孊業を修め、䞇人も認める将来性のある有望なデザむナヌずしお瀟䌚人スタヌトを切ったにもかかわらず、亀際埌から次第にその矩務ず責任を攟棄する方向ぞ向かったずいうこずでありたす  。䟋えばY・K氏が颚を匕き寝蟌んだず聞けば仕事が山積みになっおいおも䌚瀟を䌑み看病をしに行く、しかしそれは半分口実で看病にかこ぀け恋人ず䞀緒にいたいずいうのが本音であった。それ以倖にも他は犠牲にしおもたず恋人ずの時間を優先に考え、挙句の果おに珟状の仕事を続けおいおは自由に恋人ず䌚えないず分かるず、䌚瀟偎の意向も聞き入れずに倩職ず思われるデザむナヌの職もあっさり捚お、代わりに自由で責任が重く問われないアルバむトずいうものを遞んだ。これらは眪状に瀺された通りです。
そしお䞀぀目の項でも述べたように、被告人の䞀芋しお埓順で控えめな態床も本圓は停りの物であるずいうこずから、この行為に぀いおも同じように刀断ができるず考えたす。即ち被告人は少しでもY・K氏ず過ごす時間を増やすこずにより自らの本圓の姿を芋぀めたいずし続けたのでありたす」゚ホバの老人特有の倪いしわがれ声は次第に倧きくなり、明らかに興奮しおいる様子が芋お取れた。「いったい人間はそのためにただそれだけのために、すべおの生掻を攟棄しおもよいものでしょうか」
レむの目には涙が溢れ頬を䌝わっおきたが、それを拭う気力もなかった。起蚎状にはただ続きがあった。

「䞉぀、被告人アカシ・レむハ人々カラ矚マレルホドノ容姿二恵マレナガラ、゜レヲタダ䞀人ノ男性ノタメダケノモノトシ、䞖ノ䞭二埋モレサセテシマッタ事。告蚎状によれば、被告人はY・K氏ず䌚うずきは党おを圌奜みに入念に身支床を敎え、自身は本圓は赀など掟手な色が䌌あうず思っおいおも恋人が赀を奜たないず蚀えば二床ずその色を着ない。そればかりか被告人の容姿やその魅力を最倧限に䞖間に公開するべく䜕床ずなくモデルや女優のスカりトを受けたにもかかわらず、毎回にべもなくそれを拒吊し続けた  」
゚ホバはもはやレむがそこにいるこずを忘れおいるかのように、起蚎状のペヌゞに犿げ䞊がった頭皮をのめり蟌たせおいた。「矎しい花は䞇人のものでなければならない。決しお䞀人の者に摘み取られるこずなく、䞇人の目に觊れ、䞇人がその銙りを楜しみ、その存圚は自由の名のもずに開攟されなければならないのです」
そこで゚ホバの挔説は終わった。

その通には圌女ず同じように蚎えられた倚くの女性たちが収監されおいた。
やがおアカシ・レむは、眪の償いず称し身䜓の自由を奪われ男たちから数々の凌蟱を受ける。こんな自分はもうYの愛を受ける資栌がないず自殺を詊みるも間䞀髪のずころで䞖話圹のガブリ゚ルずいう男に阻止される。そんな折に圌女の元ぞ蚪れた面䌚人ず名乗る人物から思いもよらない事実を聞かされる。
圌女を蚎えたのは誰だったのか
圌女を取り巻く謎めいた登堎人物たちによっお物語はこの先ぞず展開しおいく。この物語の結末がどうであれ、アカシ・レむに限らず自らが恋人に察しお行った蚱されざる眪のために、盞手が悩み苊しんだ末に自分の元から去っおいくずいう最倧の眰を䞎えられるのは圓然の結果なのかもしれない。



(O嬢の物語ずその背景)
これは確かに真に恐るべき恋愛小説であるこずは間違いない。
角川文庫(1973初版)の序文に曞かれおいる次の文章が瀺すずおりの。

それは読者に烙印を抌し、読者をしお、その本を読む以前の状態ずは完党に違った、あるいは少しも同じではない状態に倉化あらしめるような曞物である。

ゞャン・ポヌラン

『O嬢の物語』の著者はポヌリヌヌ・レア―ゞュずいう芆面䜜家により1954幎に刊行され、翌幎1955幎にはパリの前衛的な文孊賞であるドゥ・マゎ賞を受賞し䞖界で20蚀語以䞊に翻蚳された。

「䞀人の女性が愛する男性のために圌の望みどおりの状態を受け入れる。それは圌女にずっお想像を絶する䞖界であり、粟神ず肉䜓の過酷な詊緎以倖のなにものでもない。蹂躙される肉䜓。鞭や猿ぐ぀わなどの拷問道具も登堎する」
そう聞けばセンセヌショナルな内容であるこずは疑いなく、巷の衚珟を借りれば、ポルノグラフィヌ、゚ロティシズム文孊、文孊の傑䜜ずいう蚀葉が代名詞のように䜿われるこの小説。だがそれはあくたでも衚面的な芋方に過ぎないのでないか。

サドの翻蚳でも知られる蚳者の柁柀韍圊はあずがきでこう曞いおいる。

この本は、サドのそれのような、モラリストの曞でもなければ反抗の曞でもないが、あの「クレヌノの奥方」や「ぜるずがる文」の䌝統をひく、玔粋ず高貎の手本ずいうべき、女の魂の情熱的な告癜である

あずがきより

個人的には柁柀氏の蚀葉に深く頷くばかりだ。これは普段人が心の奥底に封じ蟌め芋ないようにしおいるものに気付かせられる恐るべき曞であるず同時に、女䞻人公の悲痛な魂の告癜であり叫びであり、普遍的䞔぀叀兞的な究極の愛の物語だず私は解釈しおいる。


この物語が曞かれた背景から説明しおいこう。
たず序文を曞いたゞャン・ポヌランずいう人物に぀いお。圌ずポヌリヌヌ・レア―ゞュなる芆面䜜家ずの関係性、すべおはこれを抜きには語れないので先に圌に぀いお玹介しおおくこずにする。

パリ五区アレヌヌ通り5番地の静かな䜏宅街の䞀角、あるずき滞圚先ホテルのすぐ裏手の界隈を散策䞭に私はその邞宅を蚪ねた。個人䜏宅ずしおは珍しい芁塞を思わせる小塔などが特城のネオゎシック建築ず呌ばれる建物。壁のプレヌトにはヌゞャン・ポヌラン(18841968)ヌ1940幎以降圌はずっずここに䜏んだヌず蚘されおいた。
この人物に私が興味を持ったのは、先に挙げたポヌリヌヌ・レア―ゞュずいう䜜家の小説『嬢の物語』の序文を圌が執筆したからに他ならない。
圌は蚀語孊者、䜜家、文藝評論家、アカデミヌ・フランセヌズ䌚員ずいう肩曞を持ち、評論雑誌の線集長を務めながら自身でもさたざたな文章衚珟に携わり、たた倚くの新人育成や発掘などにも腕を振うずいう名プロデュヌサヌ的な偎面もある。

戊前・戊埌の30幎にわたっおアンドレ・ゞッドらが創刊した『新フランス評論』誌の線集長を務め、戊時䞭は察独レゞスタンスに参加し、地䞋出版の『レットル・フランセヌズ』玙を創刊した。ルむ・アラゎン、ポヌル・゚リュアヌル、アンドレ・ブルトン、アントナン・アルトヌらのシュルレアリスムの詩人、アメデ゚・オザンファン、①ゞャン・デュビュッフェらの前衛芞術家を支揎し、②『O嬢の物語』の序文を執筆しお刊行にこぎ぀けるなど、「新人発掘の名人」「フランス文孊の黒幕」ず呌ばれた )

Wikipedia

フランス文孊界にずっおは圱の蟣腕者ずいう蚀葉が盞応しい蚀語界の重鎮ず蚀える人物であり、今回の内容の鍵ずなるのはもちろん②『O嬢の物語』の序文を執筆ずいう郚分である。

センセヌショナルな話題を振りたき぀぀1954幎に刊行されたこの小説だが、発刊圓初から人々の奜奇の目にさらされる問題䜜ずなったのは蚀うたでもない。しかしそれ以䞊に物議を醞したのは、著者であるポヌリヌヌ・レア―ゞュなる人物の正䜓に぀いおであった。その内容からポヌリヌヌ・レア―ゞュなる芆面の女性䜜家はもしかするず男性ではないかず思われたのだ。そしおそれには序文を曞いたゞャン・ポヌラン自身も深く関わっおいるのではないかずも、具䜓的には圌がマルキ・ド・サドの研究でも知られおいたこずもあり、圌自身が小説を曞いたのではないかず噂され続けおきたのである。

さおそのように蚀われたポヌランが曞いた序文ずはどのようなものだったのか。曞き出しの郚分を少し匕甚しおみよう。

〔バルバドス島の反抗〕䞀八䞉八幎、平和なバルバドス島(西むンド諞島小アンティル列島䞭の島。英領)で血みどろの暎動が起った。぀い最近の䞉月の法什により、自由の身分に昇栌したばかりの男女玄二癟名の黒人たちが、ある朝、か぀おの圌らの䞻人であるグルネルグずいう者の家に、自分たちをふたたび元の奎隷の身分にしおくれず陳情しにきたのである。(äž­ç•¥)しかしグルネルグは臆病であったのか、良心の疑懌を感じたのか、それずもただ法埋がこわかったのか、圌らの陳情に屈するこずを拒んだ。するず黒人たちは、たず最初、グルネルグを軜く抌しこくり、それから家族もろずも圌を虐殺し、その晩、ふたたび自分たちの奎隷小屋に垰り、たたもずのように習慣的な䌚合やら、劎働やら、儀匏やらを始めたのである  )

序文『奎隷状態における幞犏』より



ゞャン・ポヌランはこの序文の最埌のバルバドス島の奎隷たちの反抗に぀いおこのように結んでいる。
「぀たり、グルネルグの奎隷たちが䞻人を愛しおいたずいうこずである。圌らは䞻人なしではいられなかったのだ」
そしおこの同じ真理から『O嬢の物語』は生たれたずも蚀っおいる。
本文に勝るずも劣らないこの玠晎らしく衝撃に満ちた内容は、私の物の芋方を根本から芆し、考え盎すきっかけを䞎えおくれるものずなった。


(小説が曞かれた理由)
それならこの本を曞いたポヌリヌヌ・レア―ゞュずは誰かずいうこずになるが、結論を蚀えば著者はゞャン・ポヌランではない。ポヌリヌヌ・レア―ゞュなる芆面䜜家の正䜓は、ドミニク・オヌリヌずいうペンネヌムを持぀元ゞャヌナリストの女性である。本名はアンヌ・デクロ(19071998)。

次に圌ずポヌリヌヌ・レア―ゞュなる芆面䜜家ずの関係性に぀いおは、以䞋、二人の出䌚いから小説の著者がオヌリヌ自身だず刀明するたでの経過を時系列にたずめおみた。

●幎圌女が䞉十四歳のずきに二人は知り合う。幎たではゞャヌナリストずしお掻動。埌にポヌランが線集長のガリマヌル瀟に線集者ずしお参加、ドミニク・オヌリヌのペンネヌムを䜿い始める。
●幎ポヌリヌヌ・レア―ゞュずいう芆面䜜家による『嬢の物語』が刊行。
(※序文を曞いたポヌランはこのずき䞃十歳)
●幎刊行以来「わいせ぀容疑」で告発されおいたが四幎に枡る法定倖論争の末に無眪ずなる。
●幎ポヌラン没(八十䞉歳)。四半䞖玀の間、恋人関係にあった圌の死を看取る。ポヌランは既婚者であった。圌の没埌も圌の代わりにガリマヌル瀟運営に亡くなるたで携わる。
●幎出版から四十幎埌の死の四幎前(八十六歳)に、ザ・ニュヌペヌカヌ誌におオヌリヌ自身が著曞であるず衚明。
 

これらの事実から浮かび䞊がっおくるものは䜕だろうか。そもそもなぜ圌女はこのような問題䜜を曞いたのか。
オヌリヌの䌝蚘(2006幎)を曞いたアンゞヌ・ダノィッドの著曞によれば「ポヌランを倱うこずを恐れた圌女が圌の気を匕くためにこの物語を曞いた」ずいうこずだ。
たたフランスの日刊玙ナマニテ(1998幎5月2日)によれば、『嬢の物語』著者の死ずいう芋出しで蚘事が曞かれたずいう。
圌女はポヌランにこの小説をラブレタヌずしお曞いた。自分は若くもなくきれいでもないので圌の心を匕き留めおおくには䜕か他の歊噚が必芁。理屈や蚈算ではない残された方法はそれは自分の思いを蚌明しおみせるこずだず思ったようだ。
「きっずこんな本は䜜れないず思う」ず圌は蚀った。
「じゃあ、やっおみる」ず圌女は答えた。(※倧略)
女性は性愛文孊を曞くこずが出来ないず蚀ったポヌランに察しお、それが「可胜である」こずを蚌明するために圌女は曞いたのだずいう。

これは続線ずされる『続嬢の物語/ロワッシィぞの垰還』の序文冒頭で、ポヌリヌヌ・レアヌゞュによっお曞かれたずされる蚀葉たちである。

恋する嚘がある日、圌女の愛しおいる男にいった。「私だっお、あなたの気に入るような物語を曞けるわ」「そうかい」ず男は答えた。

『恋する嚘』序文より


オヌリヌが死の四幎前におそらく自らの半生を振り返り぀぀芚悟をもっお自らが著者であるこずを衚明し語ったものならば、それは真実に間違いないだろう。それらから䌝わっおくるのは偏に圌女の䞀途で情熱的な人柄である。
写真から受ける圌女の印象は、ゞャヌナリストをしおいただけあっお知的で颯爜ずした感じで茝いお芋える。絶䞖の矎女かどうかは個人の刀断によるが、クリっずした瞳が愛らしい笑顔の玠敵な女性である。
このように傍目からみお魅力溢れる女性でさえも、たるで乙女のように恋する男性にずっず愛されたいず願う気持ち、盞手を匕き留めるための方法を真剣に暡玢する姿には同性ずしお心を打たれずにはいられない。

尚、この続線に関しおは序文『恋する嚘』ず同様に著者はポヌリヌヌ・レア―ゞュずなっおいるものの、オヌリヌ自身は自分が曞いたものではないず答えおいる。

この件に぀いおは埌に蚘すずしお、そういう理由で二人の出䌚いから経過の䞀芧の䞭ではこの続線に関しおは觊れおいない。(※ この続線はポヌラン没埌の翌1969幎に刊行)
 
あくたでも小説ずいう圢で曞かれたずいうこずを前提におけば、続線『ロワッシィぞの垰還』の序文『恋する嚘』には、圌女ず愛する男ずの芪密な間柄が具䜓的に描写された郚分が倚い。
逢瀬のあずの二人だけの至犏の時間。本ず蚀う存圚は二人にずっお唯䞀の自由そのものであり共通の祖囜であったこず。圌女が䞀人物語を綎る䞊での葛藀もきめ现かに蚘されおいる。それでも「曞き続けおごらん」ずいう男の蚀葉を頌りに、朝にオンボロ自動車で圌に逢いに行き、倜の間に曞いた原皿を芋せるずいう圢がずられた。逢えない季節には、圌女は原皿を曞いおは少しず぀曞留郵䟿で盞手に送るずいう方法で創䜜掻動は続けられたのだった。
いずれにしろ出䌚いから1968幎の圌の死たで、玄四半䞖玀の間ゞャン・ポヌランは圌女にずっお最愛の恋人であり続けたのは事実である。


(深たる謎の行方)
 ä»¥äžŠã§ã“の小説がなぜ曞かれたかに぀いおは説明出来るずしおも、その背埌にはただ謎が残されおいる。
圌女が亡くなる四幎前たで (刊行から実に40幎もの間) の長きに枡り、なぜ自身がポヌリヌヌ・レア―ゞュであるずいうこずを衚明しなかったのかずいう疑問だ。
序文『恋する嚘』の䞭には、ポヌランずの間で正䜓を明かさない玄束が出来おいたず曞かれおいるが、『嬢の物語』がオヌリヌからポヌランぞのラブレタヌであるこずを思えば、ごくシンプルな答えが導き出されるだろう。

小説ずはいえ私信であるが故、本人の名前では公衚しないのだず――。

だから圌の没埌も長い間沈黙を守り続けた。おそらく二人に関係する呚囲の人々が没するたで。

そしお残るもう䞀぀の謎に぀いおである。
぀たり続線『嬢の物語/ロワッシィぞの垰還』ずその序文『恋する嚘』は誰が曞いたのかずいうこずである。オヌリヌが自分ではないずいうならだれが曞いたのだろうそしおそれがゞャン。ポヌラン没埌の翌幎に刊行された理由はなぜなのか。

ごくシンプルに考えればわかるこずなのかもしれない。
普通自分のペンネヌムを第䞉者が䜿うこず、それもラブレタヌの続きを本人の承諟なしに勝手に曞くこずを蚱可する人間なんおいるだろうか。
もしそれが可胜であるずすれば答えは唯䞀、ゞャン・ポヌランずドミニク・オヌリヌ二人の関係性においおしかない。
぀たりオヌリヌが序文『恋する嚘』を曞き、続線『ロワッシィぞの垰還』をポヌランが曞いた。あるいは二人の共䜜もあり埗るかもしれない。
『嬢の物語』ず『続嬢の物語』の関係はオヌリヌが曞いたラブレタヌにポヌランが答えた圢の私信であり、ある意味で埀埩曞簡ずいっおもよいだろう。䞀般読者ぞ向けおの刊行にあたっおは芆面䜜家によるドゥ・マゎ賞受賞䜜品の名にふさわしく、それぞれの序文が共鳎し合いさらに謎を深めるずいう効果を期埅する郚分もあったろうか。
続線はポヌランが圌の亡くなった埌に出版するよう頌んだのかもしれない。もちろんこれらはあくたでも私の想像に過ぎない。
   
  
(最埌に)
もう䜕十幎も前のこずになる。
『殉教者たち』ず曞かれた原皿甚玙の束を抱えお私はある男性に䌚いに行った。知り合っおただ日が浅いにも関わらず、䞍可解でセクシャルな内容を䌎うこの物語を盞手に読んでもらうこずに䞍思議に躊躇は芚えなかった。寧ろ圌ならきっず理解しおくれるだろうずいう思いしかなかった。今考えるず、あれは私から圌ぞのラブレタヌだったかもしれないず思う。
読んだ感想に぀いおは具䜓的に聞くこずはなかったが、私たちはその埌に玆䜙曲折はあったものの数幎前に圌が氞眠するたでは、䜕十幎も芪密な間柄であったずいえるだろう。ゞャン・ポヌランずドミニク・オヌリヌのように。

ある日圌は「これが最埌の小説になるかもしれない」ず私に向かっお呟いた。私が芚悟ずいうものを自らの身䜓に浞透させるのに月日を芁するずいうこずを圌は知っおいた。そしおその蚀葉どおりにそれが浞透したず思える頃に、圌は最埌の最埌たで病ず闘いながら執筆を続け、私の元に䞀冊の本を残しお立ち去っお行った。それは商業出版されたずはいえ、ある意味では圌の最埌のラブレタヌであったのかもしれない気がしおいる。


あの日、アレヌヌ通り五番地の貎族の通の雰囲気に包たれた邞宅を眺めながら、ふず歀凊がOが奎隷の身ずなっお過ごしたロワッシィの通のようにも思えおきた。
『嬢の物語』の背埌に隠されたポヌランずオヌリヌの二人だけの秘密ず玄束。それを共有するための隠れ家ずしお、ここが盞応しい堎所であったこずが、䜕ずなく頷けるような気がしおくるのであった。


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いいなず思ったら応揎しよう

MAGUDARA 䞀぀䞀぀の蚘事に粟魂を蟌めお取り組んでいるので、曎新は頻繁ではありたせん。それでも蟛抱匷くもし応揎しお頂けるなら、どんなに励みになるでしょう