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Photo byhiiro_archive153

【短編小説】あの頃と変わらない2人

    夕飯のあと、リビングには静かな時間が流れていた。


    夫はソファに寝転びながらテレビを見ている。妻はその横で、スマホを眺めながら痩せるスリッパをカートに入れていた。


    夫は長年の夫婦生活で培った『言わなくていいことを言ってしまう』という特技を、今夜も迷わず発動した。


    「君は変わったね」


    妻は目を細める。


    「あら、急にどうしたの?」


    「いや……あの頃より、かなり太った」


    空気が止まった。テレビの芸人だけが陽気に笑っている。妻はゆっくりスマホを置いた。


    「そうね。10kg太ったわ」


    妻は、あっさり認め、静かな声で続ける。


    「でもアナタも変わったわ」


    「え?」


    「あの頃より10kgも痩せてしまったわ」


    妻と出会った頃は筋トレにハマっていた。胸筋も腹筋も、それなりに主張していた。だが今はどうだ。胸筋は旅に出て、腹筋は行方不明。仕事のストレスからか頬も少しこけてしまっている。


    夫は遠い目をした。


    「僕たちは……あの頃と変わってしまった」


    妻も静かにうなずく。


    「そうね。『私』と『アナタ』は変わってしまったわ」


    窓の外で風が吹いた。まるで人生の哀愁を演出するように。しかし次の瞬間、妻は力強く言った。


    「でも、私は+10kg。アナタは-10kg」


    「うん?」


    「2人合わせてプラマイ0」


    「……は?」


    「つまり、『私達』はあの頃と何も変わってないわ」


    夫は数秒考えた。そして真顔で言った。


    「それ、体重を共有財産みたいに言うのやめてくれる?」


    「夫婦は運命共同体よ」


    「脂肪まで共同にしないで」


    妻は立ち上がると、冷蔵庫へ向かった。


    「アイス食べる?」


    「食べる」


    「2人共太るわよ?」


    「僕が走ればいい。君の分まで」


    夜のリビングに笑い声が響く。そしてその日、夫婦は仲良くアイスを食べた。


     
     

    ppp

     
     
    人見知りのほぼニートです。 よろしくお願いします。

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