彼女がサングラスを買ってきました
「ねえねえ、見てー!」
玄関のドアが開いた瞬間、彼女が妙に嬉しそうな顔で入ってきた。
「おかえり。どうしたの、そんな上機嫌で」
「ふふん。実はね、今日いいもの買っちゃった」
そう言って彼女がバッグから取り出したのは、少し透明感のあるサングラスだった。
「サングラス?」
「そう!かわいくない?」
彼女はさっそくサングラスをかけると、俺の前でくるっと一回転する。
「どう?似合ってる?」
「……うん」
「反応薄っ!」
「いや、普通に似合ってるから」
「普通に、って何よ」
頬を膨らませながら、彼女はサングラスを少しずらして俺を見る。
その仕草が妙に様になっていて、思わず笑ってしまった。
「なに笑ってるの」
「いや……なんか、芸能人みたいだなって」
「ほんと?」
途端に機嫌が直る。
「じゃあもっとちゃんと見て」
「え?」
彼女は俺の正面まで近づいてきた。
サングラス越しにじっと見つめられる。
「どう?」
「……かわいい」
「よし」
満足そうに頷いた彼女は、今度はサングラスを外して自分の頭に乗せた。
「実はね、これ買うとき、○○に見せたらどんな反応するかなって思ってたの」
「俺に?」
「うん。だから帰ってきて一番に見せた」
そう言って笑う彼女。
さっきまでのサングラスより、その笑顔のほうがずっと眩しかった。
「……じゃあ、買って正解だったね」
「でしょ?」
彼女は嬉しそうに、もう一度サングラスをかける。
「明日これかけてデート行こっかな」
「いいんじゃない?」
「じゃあ○○もサングラス買う?」
「俺も?」
「うん。二人でかけたら、なんかカップルっぽいじゃん」
「いや、もうカップルなんだけど」
「……それもそうだった」
二人で顔を見合わせて笑った。
そして彼女は、サングラスを少しだけ下げて、
「でも、○○には明日もちゃんと私の顔見てほしいから……やっぱり途中で外す」
なんて、照れくさそうに付け足した。
