それは無理な願いです!
「ねえ」
帰宅して早々、彼女がスマホを片手に近づいてきた。
「なに?」
「これ見て」
見せられた写真には、彼女が大きな黒いTシャツ型のパネルの隣で、頬に手を添えて笑っている姿が写っていた。横には、どう見ても普通の人間には着られないサイズのTシャツ。彼女はその横に立ちながら、なぜか満足そうに頷いた。
「これくらい大きくなりたい」
「いや、三メートルは無理だろ」
「なんで?」
「なんでって……人間だから」
「じゃあ○○が三メートルになってよ」
「もっと無理だよ」
「えー」
彼女は不満そうに頬を膨らませる。
「三メートルになったら、私がこうやって横に並んで写真撮るの」
「縮尺がおかしくなるだろ」
「じゃあ今日から三メートル目指して」
「今日から?」
「うん。まず牛乳いっぱい飲んで」
「それだけで三メートルになれるなら苦労しないよ」
「じゃあジャンプしながら飲も!」
「何の意味があるんだよ」
「分かんないけど、背伸びそうじゃん」
それでも彼女は楽しそうに笑いながら、俺の頭のてっぺんに手を乗せる。
「うーん……まだ全然足りない」
「そりゃそうだろ」
「三メートルになったら、私のこと肩車してね」
「いや、三メートルの俺に肩車されるほうが怖いだろ」
「じゃあ抱っこ」
「もっと怖いわ」
「じゃあ……隣に立って」
「それは勝手にして」
そう言うと、彼女は俺の隣に並んだ。
「やっぱり三メートルがいいな」
「……諦めてくれ」
「えー」
しばらくして。
「……でも、今くらいでもいいか」
