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倒産の夜、私は子供たちに「お泊まり会だよ」と言った

    HONJO11

    【過去の話②】
    父の会社の倒産を知ったのは、弁護士からのFAX一枚だった。

    「破産通知書」
    これをドアに貼ってください

    ぺらっと。
    たった一枚の紙で。

    父とは昔、色々あった。
    逃げるような人だとは、わかっていた。

    でもまさか、こんな形で終わるとは思っていなかった。

    その夜、顔見知りの男性が事務所に来た。

    「今夜、逃げろ」

    意味がわからなかった。

    「倒産の通知が出てからしばらくは、娘のお前が一番危ない。さらって脅す材料にされる」

    ゾッとした。

    子供が2人いるのに。
    そんなことをされたら。

    その人は言った。
    「昔、親父さんに世話になった。だから今回だけ助ける」

    新横浜のホテルを取ってくれた。

    私は子供たちに言った。

    「今日はお泊まり会だよ」

    ランドセルと着替えを持たせて、迎えに来た車に乗った。

    子供たちははしゃいでいた。
    ホテルだーー! って。

    その笑顔を見ながら、私は泣かなかった。

    翌朝、普通に学校へ送り出した。

    先生にだけ、こっそりお願いした。
    「私以外の人には、絶対に引き渡さないでください」

    そして事務所へ向かった。

    反社の人も来ていた。

    怒鳴られた。

    でも泣かなかった。

    迷惑をかけたのは私たちの側だと、そう思っていたから。

    怒鳴られて当然だと思っていたから。

    わかってくれた時、少しだけ息ができた。

    張り紙が貼られた扉の前に、職人さんたちが数人立っていた。

    事情を話した。

    私が本当に何も知らないとわかると、逆に心配してくれた。

    父に裏切られているのに、また信じてしまった自分が情けなかった。

    それからは、ただ働いた。

    会社の始末は弁護士に教えてもらいながら、仕事をしながら少しずつ進めた。

    必死だったから、細かいことは覚えていない。

    1ヶ月後。

    逃げた父から連絡が来た。

    「悪かったな」

    人生で感じたことのない怒りが、湧いた。

    でも今、子供たちは大人になった。

    あの夜、ホテルではしゃいでいた子供たちが。

    「お泊まり会だよ」と笑った私を、今も正解だったと思っている。

    あの夜を乗り越えた自分を、誇りに思っている。


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    離婚・借金・倒産・父の逮捕。それでも今日も生きています。51歳、元シングルマザー。不幸話では終わらせない、と決めた私が、ひとりで頑張るあなたに書いています。 生きることは呼吸することぐらいで生きてる人

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